〜Waiting angels〜

          
          モーニングルームに柔らかな朝の光が差し込んでいる。
             レースのカーテンが風に悪戯をされて、揺れている。
             丸いティーテーブルの上には、こんがりと狐色に染まったトーストと、白とオレンジ色のコントラストが美しい目玉焼き。
             両方とも早く食べてと言わんばかりに食欲をそそる匂いを躍らせている。
        
             珈琲の香りをかぎながらパラリ、と士度は新聞を捲った。
             活字の上で巻き起こっている世の中の出来事は大して面白くも、興味を引くものでもないが、
             奪還屋をやる上では巷の、こういった“表面上の”情報も欠かせない。
             それに、こうやってマドカと朝食を共にするとき−彼女を待つ間の丁度良い暇つぶしにもなる。
             
             −朝、女性はいろいろと時間がかかるんです。−

             なるほど、もっともだ。
             総合から読み始めて、もうすぐ社会面も読み終わる−

             リン、とモーツァルトの鈴の音が聞こえた。
             マドカが廊下を歩いてくる気配。
             あてにならない天気予報にざっと目を通して顔をあげると、
             カチャリ、と薄いガラスの扉を開ける音と共に見慣れた少女が入ってきた。

             「・・・おはようございます。」

             声が少し震えているように聞こえたのは気のせいか?
             彼女は顔を上げて笑顔で朝の挨拶をしている−だがその笑顔もいつもより何だかぎこちない。

             「? おはよう、マドカ。」

             士度の挨拶に再び微笑みながら軽く会釈をして、マドカも席についた。
             士度が新聞をサイドテーブルに置くと、朝の食事が始まる−
   
             マドカはいつも以上に静かだ。
             いつもなら窓辺にいる小鳥に挨拶をしたり、今日は良いニュースが載っていましたか?とか訊いてきたりするのだが・・・。
             動きが堅い−緊張しているのか?
             お前、オレンジジュースを持つ手がほんの僅かだが震えているぞ?

             「・・・・マドカ、お前今朝は体調悪いのか?」

             「−!いえ、全然悪くないです!」
 
             何気なく訊いてみたら、慌てた様な否定の言葉が返ってきた−しかも即答。

             −こりゃ、何か隠しているな・・・俺に心配かけまいとするのはいいが、マドカ、お前は嘘がヘタ過ぎる。

             チラリ、とマドカの足元にいるモーツァルトに目をやると、彼は待ってましたといわんばかりに口を開いた。

             <マドカ、ナイッテ!>

             <・・・ない?何が?>

             意味が分からない、と士度が首を捻ると、マドカが顔を真っ赤にして

             <モーツァルト!メッ!>

             とモーツァルトを叱りつけた。
             いつにない剣幕にモーツァルトは耳を伏せる。

             <デモ・・・マドカ、ナイッテイッタ。ドウシヨウッテ・・・>

             <いいからっ!お願い、黙っていて!>

             二人の会話を耳にしても、士度には何のことだかさっぱりわからない。
             ただ想像できることといえば・・・
 
             「・・・何か失くしでもしたのか?」

             「!・・・・違うんです・・・。あの・・・・士度さん・・・。」

             マドカはおずおずと口を開いた。

             「・・・・あの、今日の午後、お暇ですか・・・?大切なお話があるんですけれど・・・。」

             マドカの手の中にある珈琲カップがカタカタと揺れている。

             「?時間ならあるが・・・大事な話なら今ここで−」

             「今は!」

             パッと俯いていた面を上げるとマドカは思わず叫んでしまった。
             士度の驚愕した雰囲気に我に返り、頬を染めてまた俯く。

             「あ・・・今は、その、まだ、ダメなんです・・・。午後に・・・お願いします・・・」

             その必死な懇願に、士度は戸惑いながらも頷くしかなかった。

             

             
             
             朝食が済むと、マドカは「ちょっとお出掛けしてきます」とだけ言い残して、
             士度にまだ何か言いたそうなモーツァルトを急かし足早にモーニング・ルームを後にした。
             短くあぁ、と答えた士度の様子は怪訝そうであったが、マドカの気持ちはそれどころではなかった。
             せっかく一緒にとれた久し振りの朝の美味しい時間を台無しにしてしまった自分を呪ったりもした。
             
             一人で向かった先は、ホンキー・トンク。
             開店して間もないというのに、電話でお願いして来てもらったヘヴンはすっかり寛いでおり、
             波児とレナ、夏実の他にカウンターにはすでに蛮と銀次も陣取っていた。

             「ハイ!マドカちゃん、お久し振り!相談事ってなにかしら〜♪」

             ヘヴンはめったに無いマドカからの頼みに、もはや興味深々状態だ。

             「お呼び立てして申し訳ありません、ヘヴンさん・・・。あの、お話は奥の方でしてもいいですか?」

             ?別にいいけれど・・・とヘヴンはこちらをチラチラと見ているカウンター連中にスッと目を細めながら、
             マドカを店の一番奥の席へと導いた。

             カウンターの中にいる波児・レナ・夏実、外にいる蛮・銀次もマドカの異変に気がついたようだ。
             店に入るといつもきっちりと丁寧な挨拶をするマドカが、挨拶もそこそこにヘヴンの方へ駆けていった。
             その顔は不安と焦りで今にも泣き出しそうだ。
             そして、肝心なことはこの喫茶店にマドカがくるときはいつも隣にいる士度がいないこと。
             −これは絶対士度絡みだ−その場にいた誰もがそう思った。

             奥の席からボソボソと内緒話のようなトーンの声が聞こえる−が、さすがに内容は聞き取れない。
             しかし、波児以外の耳は、ウサギ、象、ロバの耳。
             そのとき−

             (にんし・・・!!
             
(ヘヴンさん!シーッ!!)
             

             パリン!ガシャン!!
             
             夏実が珈琲カップを落とした。レナの手からケーキ皿が滑り落ちた。
             銀次は鼻血を吹き、蛮は噴出したブルマンの中で溺れている。
             波児の手の中にあるポットから珈琲カップを目指していた淹れたての自慢の新作はソーサーの上を泳いでいた。

             それぞれの思考回路が元に戻る間も無く、マドカの手を引いたヘヴンが扉の前にダダダダッと駆けてきて、
             マドカを外へ押しやると、クルリと振り向き、

             「マスター!私とマドカちゃんの分、
士度クンにツケといて!!」

             と叫ぶなり、バタン!と扉の向こうへ消えた。

             ・・・・・しばしの石化の後、それぞれはスローモーションで汚れた自分たちの周りを片付け始める。
             
             「ハハ、ハハハハハ・・・・」

             血まみれの手と顔をお絞りで拭きながら、銀次は力なく笑った。

             「蛮ちゃん・・・妊娠って・・・」

             「・・・・
子供(ガキ)ができることだーろよ。」
                 

             
             そんなこともわかんねぇのか、と台拭きでブルマンを吸い取りながら蛮は不機嫌そうだ。
             
             「・・・・でも士度さんて−」

             割れたカップを拾いながら夏実が口を開いた途端、カラン、と来客を告げるベルの音がした。

             「よぉ・・・何だ、お前ら、いつになく汚ねぇな。マスター、ブレンド。」

             話の元凶は銀次と蛮の悲惨な状況を軽く揶揄すると、いつも通りの注文をしていつもの指定席に座った。
             頬杖をついてふと顔を上げるといつもの連中の雰囲気とは違うことに気がつく。
             いつも喚いてつかかってくる蛇ヤローはタバコに火をつけ顔を顰めている。
             銀次は呆然として俯いているし、カウンターのいつも元気な娘たちも顔を真っ赤にしていて大人しい。
             マスターは・・・・マスターだけはいつもの飄々としたマスターだ。

             「ほい、ブレンドお待ちどうさん。」

             あ、あぁ、と返事をしながら士度はボソリと波児に訊いてみる。

             「なぁ、連中、何かあったのか?」

             (何かあったのは君のほうだと思うなぁ・・・)

             そんな言葉を飲み込んで、波児は「さぁ・・・」と少し困った顔をした。

             「ねぇ、士度・・・」

             俯いたまま、銀次の静かな声が響いた。

             「あの、さ・・・マドカちゃんとは、結婚するの?」

             ゴホッ!
             噴出しこそはしなかったが、士度はおもいっきり珈琲にむせて咳き込んだ。
             
             「はぁ!?何で急にそーゆー話になるんだよ!?」

             余りに唐突な銀次の質問に士度は抗議する。

             「でも!!」

             今度はレナが大声を上げた。
             普段、あまり自分に話しかけてこないレナからの横槍に士度も唖然とする。
            
             「・・・でも!お二人は、恋人同士だから・・・その・・・いつ、赤ちゃんができても、おかしくないじゃないですか・・・」

             だんだんとしおれるように最後のほうは声を小さくしながら、それでもレナは言い切った。
             
             「・・・えっと、もしもし仮に・・・、仮、ですよぉ!あの、えーと出来ちゃった?場合、士度さんは・・・どーするんですか?」

             レナの台詞の後、すぐに夏実が切り出してきた。
          
             「どーするって・・・・」

             何なんだ、いったい。俺が入ってくるなり、結婚だ赤ん坊だ出来ちゃっただのなんだの・・・・。
             見ると、一同の視線が自分の方に固定されている。
             ふと、今朝のマドカの様子が脳裏を過ぎった−

             「−−マドカがここに、来ていたんだな?」

             「あぁ、嬢ちゃん、来ていたぜ。」

             んで、ヘヴンの奴とどっかにすっ飛んでいった。
             口から煙を吐き出しながら、蛮が明後日の方向を向いて言った。
             −沈黙が店内を満たす。
 
             「・・・・ったく、何やってんだよ、猿マワシ!」

             いつまでも返ってこない士度からの反応に業を煮やした蛮が怒鳴りながら振り向くと、
             意外にも士度は、静かな表情で珈琲を口にしていた。

             「・・・・そうか。」

             遠くを見るような眼差しで、そうポツリと呟く。
             そしてポケットから適当に小銭を取り出しカウンターに置くと、
             釣りはいらねぇ、と言い残して振り向きもしないでゆっくりと席を立った。

             「・・・え?」

             何の答えも残さないまま去ろうとする士度に、銀次はもう一度声をかけようとしたが、
             蛮は何も言わず、後ろからグイッと銀次の肩を引いた。
             その間に再びカラン、と音がしてパタン・・・と静かに扉が閉まる。
             不安そうな顔で、銀次はとりあえず波児を見た。
             波児はタバコを銜えたままニッと笑うと、

             「だいじょーぶだよ、きっと。」
           
             と、おどけるように言った。
             
             「さて、皆で珈琲でも飲みながら、続報を待つとしますかね。」

             今日は奢るよ〜。波児の声が明るく店内に響いた。




             ホンキー・トンクを出ると、士度は何処に行くでもなく、ブラリと街を散歩した。
            
             −バカだな、マドカ。−

             一人で悩んで、抱え込もうとするなんて。
             こういうことは、最初
(ハナ)から俺に言ってくれればいいのにな−
             朝の様子じゃ、大方仲介屋と一緒に医者にでも行って確認をとっているのだろう。

             −さて、どこにいるんだかな・・・−
                           
             士度の肩から、一羽の
黄鶺鴒(キセキレイ)が飛び立った−
                           



 
             

             
             
             
             三ヶ月−それはマドカにとってとてつもなく長く感じられた。
             とうとう三ヶ月、月のものが来なかったのだ。
             こんなことは初めてで・・・。
             
             −一番に考えられる原因は−
            
             自分も、士度さんも、さり気なく、キチンと、気をつけていたつもりなのに・・・。
             それでも1%の確率で妊娠してしまうということを、聞いたことがある。
             最近、体調も余り芳しくなかった。
             時々、眩暈もした。
             世間には妊娠検査薬という便利なものもあるらしいが、目が見えない自分には使えない。
             それに、こんなこと、今自分がパニックになっている状態で士度さんに話したら・・・・。
             あぁ、でもどちらにせよ、キチンと話して、説明して・・・・。
             ・・・・士度さんは−困った顔をするかしら・・・
             それとも、めったに怒らない士度さんが、怒ったりするのかな・・・それだけは、あって欲しくない・・・。
             喜んでくれるかな・・・そして、私を抱きしめてくれる?


             「・・・・続発性無月経ですね。」

             一通りの検査の後、女医は耳慣れない言葉を口にした。
             言葉を返せないマドカに、女医は問診する。

             「ダイエットは−あなたはする必要はないみたいね。
              最近、ストレスが溜まったり、情緒不安定だったり、心配事があったり、働きすぎたりってこと、ないかしら?」

             「あ・・・」

             そういえば最近、特にこの三ヶ月は海外公演と国内公演が重なって−忙しかった。
             いつもより初対面の人と会う機会も多かったし、練習中、共演者との音楽観の違いからか音を重ねるのに苦労もした。
             杞憂に終ったが、途中、ヴィスコンティ先生の容態が良くない、という情報も入ったりもした。
             家を空けることが多くて、士度さんに会えない日々が続いた。
             寂しくて、一人涙で枕を濡らした日も少なくはなかった−。

             マドカの思い当たったような顔を見て、YESと判断した女医は言葉を続けた。
         
             「そうゆうことが重なると、ホルモンのバランスが崩れて・・・まぁ、簡単に言うと、生理不順、になるというわけ。
              あなたの場合は眼が見えない分、特にいろいろな方面に神経を使わなくてはならないから、
              自分が知らない間に他の人よりも身体の内側にかなりの負担をかけていたのね。
              女性ホルモンを投与して生理を起こさせると身体のシステムが再び活気付いて治る場合が多いから、まずはそうしてみましょ。」

            
            「あの・・・じゃあ、妊娠とかじゃ・・・」

            「違います。」

            残念ながら、とも、ご安心を、とも女医は言わなかった。
            この二十歳前の少女がどのような気持ちでここに来たのか、まだつかめてない様子だった。

            コロン、とマドカの眼から大粒の涙が零れた。
            
            「ちょッ!マドカちゃん、どーしたのよ!」

            付き添いで来ていたヘヴンが慌ててマドカの肩を抱く。
 
            「安心したの?」

            その言葉を聞いて、マドカは止まらない涙を手で拭いながら首を振った。

            「・・・・違、違うんです・・・士度さんと私の、赤ちゃん、いないんだ・・・って思ったら急に悲しくなって・・・」

            −涙が・・・止まらないんです。−

            
            ・・・・あぁ、この子は−愛し、愛されているのね−

            私の元に来るこの子くらいの歳の娘たちが、皆、この子のように幸せなのだといいけれど−。
            女医はそんな思いを、こっそりとため息に乗せた。

            
            
            ヘヴンに励まされながら、診察室を出て待合室の椅子に二人して腰掛けた。
            涙を拭きながら、だんだんと落ち着いてくると、別の心配事が首をもたげた。
      
            −朝、大切な話があるって、士度さんに・・・−

            今朝も感じた、月のものがない、まだ来ない、という不安と焦燥感で半ばパニックになっていたので
            てっきり、そう、だと思い込んでいたのだ。
            そしてお腹の子についてどうやって士度に説明しようか、ということばかり考えていて、
            もう一つの結果についての説明をまるで考えていなかった・・・。

            「ヘヴンさん、私、士度さんに−」

            ことの経緯をヘヴンに説明しようとしたとき、背後でチチチッという鳴き声がする。
            マドカは声がする方へ頭をめぐらした。
            つられるようにヘヴンもマドカが耳を澄ましている先に視線を流すと、二階にある待合室の窓の外に
            上手にホバリングしながらこちらを伺っている黄鶺鴒の姿が見えた。

            <マドカ、ミィツケタ−>

            楽しそうな、嬉しそうな黄鶺鴒の声がマドカの耳に届いた。
            パタタタ・・・と羽音を残してその鳥の気配は遠くへ飛んでいった。

            「・・・・士度さんに、見つかっちゃったみたいです。」

            恥ずかしそうに、マドカはヘヴンの方を向いた。
          
            「あらら〜、じゃあ、きっとホンキー・トンクでだわね・・・。早くいって説明してあげないと!特に士度クンには!」

            急いで会計を済まし、階段を降りる。
            そして真っ直ぐにホンキー・トンクへ向かおうとすると、逆の方角から−
            急に駆けるのを止めたマドカに、ヘヴンは声をかけた。

            「マドカちゃん−?」

            「士度さんが・・・」

            こちらへ来ます。もうすぐ。

            「え、どこどこ?」

            ヘヴンの視界に士度はいない。

            「あの人の−気配と匂いを、感じるんです・・・」

            その瞬間、数十メートル離れたビルの角から士度の姿が現れた。
            急いだ様子も、慌てた様子もなく、ゆっくりとこちらへ向かってくる。
            肩にはあの、黄鶺鴒。

            へぇ〜vとヘヴンは感心したように呟くと、マドカを士度がやってくる方向へ向けた。
            
            「私は銀ちゃんたちにとりあえず説明してくるから、マドカちゃんは士度クンと一緒に帰っていいわよv」

            今日はいろいろ思い悩んで、疲れたでしょう、とソッとマドカの背を押してやる。

            「ヘヴンさん・・・」

            マドカは、この姉のような存在の女性に心の底から感謝していた。彼女がいなかったら今日の私は・・・。

            「ヘヴンさん・・・今日は、本当にありがとうございました!」

            「その笑顔でまた一緒に珈琲を飲みましょ!」

            手を振ってその声に答える。
            ヘヴンの遠ざかる足音を聞きながらマドカもクルリと踵を返した。

            一歩、お互いに一歩ずつ進むにつれて、士度との距離が近くなるのをマドカは感じた。
            大丈夫、涙はもう流れていない。
            士度さんの気配も穏やか・・・。

            士度の存在が、とうとうすぐ隣にまで感じられた。

            「−マドカ・・・。」

            マドカの大好きな声が自分の名を紡いでいた。
            無言の問いが、マドカの答えを待っている。
            マドカは、大きく深呼吸をした−そして・・・

            「−−まだ、でした・・・。私の、勘違いだったんです。ご心配おかけして、ごめんなさい・・・。」

            そういった後、見えない眼にまた、熱いものがこみ上げてきた。
            
            「・・・・そうか。」

            スッと手を上げ、零れ落ちる前の雫を拭いながら士度は答える。

            「・・・・安心、しました?」

            頬に触れる彼の手を包みながら、
            少し前に問われたことを、今度はマドカが訊いてみた。

            「どうだろうな・・・。」

            頬に触れている手が、少し熱くなったように感じたのは、気のせいだろうか?

            「・・・・見てみたい気もしたぜ−」

            −俺とお前の子−

            士度が柔らかく微笑む気配が、彼の手を通じて伝わってくる。
            
            −バカね・・・−

            −何て、バカな私。一人で思い悩む必要なんて、全然なかったじゃない−

            マドカはそっとしゃがむと、モーツァルトのハーネスを外してやった。

            <先に歩いて行って、いいわよ。>

            モーツァルトは急に軽くなった身体に嬉しそうにしながら、二人に一緒に歩こうと促す。
 
            マドカは、空いた手をゆっくりと士度の前に差し出して、

            「士度さん・・・手を、繋いでもらえますか?」

            と、遠慮がちに訊ねた。

            −今日は、何だかずっと、あなたの温もりを感じていたいの−

            返事の代わりに士度は、いつも魔法の音を奏でる白い手の甲に、そっと唇を寄せた−



            −ねぇ、待っていて・・・まだ居ないあなたはいつかきっと、私と、この人に愛される為に生まれてくるのだから−


Fin.



          U M Iさま、777のキリバン申告、どうもありがとうございました〜v
                ささやかながらですが、リクエストに答えさせていただきました。

                (設定としては、マドカが魔里人並に動物と話せるようになってから・・・です)
                キチンとリクエスト通りになっているか不安・・・さらにはUMIさまのお気に召しましたかどうか、激しく不安ですが・・・;
                少しでも楽しんでいただけば幸いです♪
                Galleryの方でいずれ、この続編=ホンキー・トンクでの後日談も書いてみたいなぁ、と思っています。
                因みにタイトルは−待っている天使たち−“angel”が複数形になっているのは、
                士マドのお子は男女の双子希望!という管理人の野望(?)というか欲望からでございます・・・。
                今回はリクエストをどうもありがとうございました!