夏の日

「……暑ぃ……」


マドカの部屋にある少し大きめの目覚まし時計に無意識に視線を流せばまだ午前五時半……少し過ぎ。
今朝は自室に居なかった士度を起こす為にコツコツとマドカの部屋の出窓を叩く雀達の囀りに加え、
朝だというのに纏わりつくような夏の空気が士度を眠りの世界から引き出した――

――今日は仲介屋の予定が混んでいるとかで、確か朝食の時間帯にどこぞのカフェで仕事の打ち合わせだったはず……――

いまだ気怠げな躯を渋々と起こそうとしてふと気づけば、
投げ出された自分の腕には昨夜と同じようにマドカの頭が愛らしくのっかっている。
筋肉ばかりの硬い枕の何がいいのだろうと士度は常々思うのだが、しかし彼女は眠りに落ちたその刻と同じように、
気持ち良さげな寝顔でいまだ夢の世界。

極力マドカを起こさぬように――そう気を使いながらほんの少し痺れている腕を彼がそっと引き抜くと――

「う……ん……」

それでも躯を起こした士度につられるようにしてマドカが薄いブランケットの下で身動ぎをし、
まだトロンとしている目元を重たそうに瞬かせた。

「……まだ早い、もう少し寝ていろ……」

彼女の頬をあやすように包んだ大きな掌の温度が心地良いのか、それとも低く深く響いた彼の人の声が夢に誘うのか、
マドカは唇に柔らかな弧をのせると、再びその身を完全にシーツと睡魔に預けた――

「…………」

そんな、どこかあどけなささえ感じられるマドカの仕草に苦笑しながら、士度はその手をそっと彼女の頬から離す――
掌に残る彼女の肌の瑞々しい感触が士度の心を優しく撫でた。



――昨夜は就寝の時間辺りから風が強くなり始め、丁度彼女の部屋の前での別れ際、暴風とともに舞い降りた一際明るい雷光が
長い音羽邸の廊下を覆わんばかりに二人を包んだ――以前の経験から士度はマドカがこの自然の明に怯えるのではないかと危惧したが、
当の本人は急に言葉を区切った士度を不思議そうに見上げている――

あぁ、そうか……見えない、か……――と、なると……

「――!!?キャア……!!」

数秒後に訪れた空間を裂くような雷鳴にマドカは驚いた子猫のように飛び上がると、耳を塞ぎながら士度の胸元に飛び込んできた――
可愛いものだ。

その後は……
半分涙目の彼女の悲鳴さながらの懇願と、か細い腕からは想像もつかないほどの(彼女にしてみれば)懇親の力で自室にひっぱり込まれ、
不意打ちの雷の音がよっぽど嫌いなのか「光ったら教えてくださいね……?」
――そう言いながらマドカは片時も士度の傍を離れなかった。

遠くで聞いている分には、そんな怖いもんでもねぇよ……――
苦笑しながらそう言う士度に抗議するように頭を振るマドカを落ち着かせる為に、
その夜は雷や、自然や、夜の動物の話をしながら過ごして――
結局は士度には柔らかすぎてやたらいい匂いがし過ぎる彼女のベッドで共に眠ることなり……――



「…………」

それでもどうしても彼女にとって雷鳴だけは怖いモノのままだったらしいが――
――昨夜のそんなマドカの姿を思い出し睫を刹那可笑しそうに揺らしながら、彼は顔を洗うため、彼女の部屋の洗面台の蛇口を捻った。

「………?」

キュッ……――しかしいくら捻っても、蛇口からは最初の一滴以上の水は出てこない――この洗面所の水道がイカれたのかと、
彼は彼女の部屋を出て自室に戻り、同じく洗面台の蛇口を捻ってみたが――やはり結果は同じこと。

「………?」

先程用を足したとき、手洗いの水は流れたのに、これはいったいどういうことだ……?――士度が一人首を傾げていると、
今度は表玄関の方が早朝から珍しくバタバタと騒がしい――昨日の雨の残り香が薫る出窓を開けて覗いてみれば、
執事の私用車が車庫へ戻るところだったり、金髪のメイドがバイクの前籠を、残りのメイドも皆珍しく私服のまま自転車の前籠やら後ろ籠をビニール袋やダンボールで一杯にして、ヨタヨタと漕ぎ入れてきたところだった――



「断水……?」

「はい、昨日の雷がこの付近の水道施設のコントロールタワーに落ちたらしく…完全に機能を停止してしまっていて、おまけに嵐のせいで折れた樹の枝が電力会社の電線に飛び込んでしまい、停電も併発してしまっております…。此方でも、トイレの水は貯水タンクから直接賄えるようになっておりますので問題はございませんが、他の生活水はミネラルウォーターで代替するしかございません。先程電話で確認をとりましたところ、夕方頃には水道、電気共に復旧の見通しとのことですが……」

ミネラルウオーターで一杯に満たした陶器の水差しと盥を黒のタンクトップにジーンズ姿の士度に手渡した執事は、不本意そうながらもこちらも珍しく上着は白いワイシャツ一枚の姿だった。
「ご不便をおかけいたします」――そんな執事が深々と頭を下げた――と、そのとき……

「木佐さん!!早いところ冷蔵庫と冷凍庫の中身を地下に移さないと……!!」
「ちわ〜〜中村氷店です!!ご注文の氷10キロお持ちいたしました……!!」
「木佐さ〜ん、今日の朝食はどうしましょうか……!?ミルクもヨーグルトもダメなんで簡易ガスコンロでスクランブルエッグと……」

コックと氷屋とメイドの三重奏が二階まで響き、薄っすらと汗を滲ませている執事の眉間に悩ましげな深い皺を齎した。

「………………朝から騒々しくて申し訳ございません……」

「いや……顔を洗ったら手伝いに下りる………」

爽やかとは言い難いいつにない早朝の湿気の中で、大の男が二人、溜息混じりに言葉を交し合う――
士度が盥と水差しを両手に軽く肩を竦めると、執事は律儀にももう一度一礼をしてその場を辞した――
階下からひっきりなしに聞こえてくる問い掛けに、大声で返したい気持ちを飲み込みながら。

「…………」

今日は何かと忙しい一日になりそうだ――士度が執事の気苦労を少し気の毒に思いながら自室に戻った丁度そのとき、
今度は朝っぱらから近所迷惑なけたたましいクラクションが外から聞こえ――
続いたのは、聞き慣れた高いトーンで自分を呼ぶ仲介屋の声。

「〜〜!!おい……!!てめぇ時間を考えてから……?」

軽い苛立ちと共にカーテンを開けると、サングラス姿の仲介屋が駆るポルシェの後部座席にはスーツケースやボストンバッグの山と、
助手席にはVOLTSで一緒だった仲間が行儀悪く足を上げて乗っている。
ヘヴンは士度の苦言をかわすように彼が顔を出した音羽邸の二階の窓に向かってもう一度声を張り上げた。

「士度クン、ごめんね〜!!ウチのマンションも朝から水道も電気も死んじゃってるから、私達今日明日は区外のホテルに避難することにしたの!打ち合わせは明後日の午後ってことでよろしく…!!」

「……そんなこと、わざわざ寄らなくても電話で事足りるだろうが……」

士度の心底呆れた声に、柾が携帯電話を軽く振りながら苦笑した――

「新宿界隈で電気止まってるせいかなんだか知らんが、携帯も通じないんだわな、これが。まだこの時間帯だから静かだが、もう少ししたら街はパニックになるだろーなぁ……」

「じゃあ士度クン、また連絡するわねv」

そう言うや否や、相変わらずのマイペースカップルはポルシェのエンジン音高らかに音羽邸前から去っていく――その轟音に被るようにして聞こえてきたのは、給水車のアナウンス。ご近所が動く音が俄かに聞こえ始め、音羽邸からも真新しいポリタンクを両手に持ったメイドが二人ばかり飛び出していった――「…………」――真夏の朝からいつもより動いているそんな働き蜂達を助けるため、士度は手早く朝の用事を済ませ、階下へと下りて行った――




「……暑い……わ……」

昨晩は除湿のタイマーをセットしてくれるのを忘れたのかしら……――
小さな目覚まし音とそれ以上に彼女の躰を煩わせた重たい湿気と熱気に叩き起こされたマドカは、
いつもは大抵完璧に仕事をこなすメイドの姿を思い浮かべながら、ベッドサイドチェストから手探りでクーラーのリモコンを手に取ると、
いつも通りにボタンを押してみた――しかし鳴るのはリモコンのボタン音だけで、肝心の本体は沈黙したまま。

「……?」

寝惚け眼を擦りながら何度か同じ動作を繰り返していると――

「遅くなりましたお嬢様……!!今朝は私服で失礼致します!」

真新しい盥とミネラルウォーターで満たされた水差しを乗せたワゴンを押しながら入ってきたおかっぱ頭のメイドの少し慌てた声に
マドカは眠気を飛ばされ――茹だる暑さにグッタリしていたモーツァルトは、水の匂いに導かれるようにしてワゴンに突進していった――





「溶けちまいそうだな……」


裏庭の木陰に立てられた大きなサマーパラソルの下には、水色の寝心地が良さそうなブランケットが敷かれた籐のリクライニングチェアが用意され、その上で一人グッタリと横たわるマドカに団扇で風を送りながら、士度はボソリと呟いた。

「お嬢様は昔から暑さにはあまりお強くなかったときいております」

主人の体調を気にしながら士度に手作りのレモネードを差し出してきた眼鏡のメイドも今日は薄い水色のチェックのワンピースという軽装で、他の使用人同様にいつもと少し雰囲気が違っていた――いつもなら空調がよく聞いた音羽邸内、パリリと糊の効いた清潔なメイド服に慎ましやかに身を包んでいる働く女性陣も、内外で汗だくになって作業をせざるを得ない今日に限って特別に私服着用を許されたようだ――ワンピース姿や七部丈のパンツに半袖シャツ、ジーンズにTシャツ……一人だけ下着が見えるか見えないかギリギリのホットパンツにタンクトップといった出で立ちで執事を大いに嘆かせていたが、主人と居候殿が大して気にしないのをいいことに、本人はこの猛暑の中でも涼しい顔をしながら、与えられた仕事(今はお庭の動物達に水を配ること)はキチンとこなしている。
一方マドカは白いノースリーブの涼しげなワンピースに身を包みながらも、夏の暑さを助長させるセミの声と、日陰にいても音が聞こえてきそうなほどに燦燦と降り注ぐ太陽に悩まされながら、その姿はまるで水を失った人魚姫のようだった。
執事は仲介屋と同じようにせめて女主人と居候殿だけでも区外のホテルに移動していただこうかとも考えたのだが――ホテルの予約はともかく、断水と停電を知るや否やあれよあれよと言う間に区外脱出組で主要道路は大渋滞、音羽邸でのその計画もあっという間に露と消えた――当の女主人は、弱弱しい声ながらも気丈にも「夕方までなら……我慢していらっしゃる方も沢山いるのですから」――そんなことを言いながら、音羽邸で一番涼しいと思われる木陰の特等席に憩いの場を拵えてもらって落ち着いているわけだが……

物置の奥から発掘した手動のカキ氷機を黙々と磨きながら執事を大いに後悔させていたのはようするに、“居候殿を働かせすぎた”ことだった――給水車から得た水で一杯のポリタンクを一度に三つ四つ担いで音羽邸を数往復していたら、メイドの話によると、そのうちご近所のお年寄りにも助けを求められ、同じ作業を手伝ったらしい――その後は冷蔵・冷凍の食料品と届いた氷を涼しい地下へ運ぶ作業を――執事とコックと居候殿で三人とも汗濁になりながら延々と階段を上り下りしていた――その中でも一番動いていたのが士度様で……――
暑い最中にそんなにも働いていた“彼氏殿”のことが気になって仕方がなかったのか、お嬢様は時には日傘片手に、時にはハンドタオルで流れる汗を拭きながら――とかく邪魔にならないように気を使いながらも、本人は暑さに弱いことも忘れて居候殿の周りをチョロチョロチョロチョロしていたのだ――昼が近くなるにつれアスファルトに照り返された熱波や熱風がやたらに強くなり――お嬢様の具合が悪くなって当たり前。それでも時折彼に水を渡したり、メイドと一緒にタオルを冷たく冷やしたり――そんなささやかなお手伝いにさえ、頬を染めながら楽しそうにしていたお嬢様の姿は、使用人達から見ると本当に愛らしいものだった――当の“彼氏殿”はというと――嬉しいのか照れているのかなんなのか――とりあえず相変わらず表情に乏しかったのだが、女性陣の見立ては“まんざらでも”ないらしい。

「…………」

執事はザッと裏庭を見回してみた――動物達はそれぞれ皆木陰で屍のようにグッタリと寝そべっている――(そのなかに混じって金髪のメイドが同じように寝転んでいる姿も入ってきたが、執事は見なかった振りをした)――お嬢様の姿に心配そうな居候殿と、彼と一緒にお嬢様に風を送っている眼鏡のメイド、珈琲豆をこちらも黙々と挽いているつり眼のメイド、お嬢様に当てて差し上げるタオルを水に浸しているそばかすのメイド――不意にその年少のメイドが手を止め、気がついたように執事に問いかけてきた――

「木佐さ〜ん……和室の裏にある井戸って使えないんですか?」

「「「「「―――!!?」」」」」

一同の視線が執事に集中する――そういえば……音羽邸の和室の裏にある古井戸は、もう汲み上げポンプがすっかり錆付いてしまっていて固まっていて、とかく必要もなかったので何年も放置されて……しかしもしかしたら……

「……錆を落として力尽くででもコイルやポンプを動かすことができれば……」

執事のその声に、片方の団扇がピタリと止まった――
そして居候殿が立ち上がる姿を眼にするや否や、執事はカキ氷機を磨いていた布巾を金髪のメイドにパスするように放り投げ、
工具を取りに彼の後へとついていった――





「士度〜〜!!士度〜〜!!シーーードーーー!!シーーーー……あ、来た来たぁ!!……アレ??」

音羽邸の門の前で渾身の力で呼ぶ銀次と車に寄りかかりながら無言のまま面倒くさそうに煙草をふかしていた蛮の目の前に渋々出てきた士度の姿は、厚い掌から晒された腕から顔からタンクトップまで泥と赤錆と土で塗れていて――よくよく見ると彼の後方を物置の方向にかけていく執事も、白いシャツを同じように汚していた。

「……何の用だ?」

そしてそんな彼の機嫌の傾斜は、この熱波の忙しいなか声高らかに呼ばれたせいか、決して好いとはいえないようだ。

「あ、あのね?もしかしたらマドカちゃんちはクーラー効いているかなぁって……?ホンキートンクもサウナ状態だし、公園の噴水も止まっちゃってるし……」

「……この屋敷の電気も止まったまんまだ。この暑さでマドカの具合も良くない。俺らは井戸の……」

「流石に暑さばかりは猿回しもどーにもできねぇってか?泥んこ遊びよりも嬢ちゃんの団扇持ちでもしてやれよなぁ?」

「帰れ」

チビ銀次が涼を求めたことを訴える中、よせばいいのに飛び出した蛮のいつもの余計な茶々に士度は短く鋭く切り返すと、
スパナ片手に彼らに背を向け、庭の方へと消えていってしまった――

「あ!!あぁ〜〜〜……士度………」

クーラーはなくても、マドカちゃんちのお庭だったら心地良さそうな大きな木陰があるかもしれないのに……――
一抹の期待を瞬殺された銀次は悲しそうに肩を落としながら、恨めしそうに蛮をみた――蛮もいつになく不機嫌だった喧嘩相手に、多少眼を丸くしたようだった。

「も〜〜!!蛮ちゃんがあんなこと言うから士度だって……!?」

銀次が蛮に苦言を叫んだとき、丁度士度と入れ替わるようにやってきたのは釣り眼のメイド――腕には二本の大型ペットボトルを少し重そうに抱えている。

「こちら、士度様からお二人への差し入れでございます」


失礼致します――メイドは終始表情を変えぬままペットボトルを二人へ手渡すと、門を閉じて庭の向こうへと戻っていった。

「……………」

「ほ、ほら!!士度はやっぱり優し……ちょ!?蛮ちゃん!!?そこセキュリティかかっているからそんなにガチャガチャしたらダメだよ!!」

「なんかムカつくんだよ!!あの野郎!!」

猿の癖しやがって……!!!――罵詈雑言を叫びながら音羽邸の門に飛びつく蛮を銀次は必死になって引き剥がしにかかった――庭の奥からは金属を叩く音がひっきりなしに響いていた――止まぬセミの音に混ざり、何かを性急に求めるように――





「………士度、さん?」

気がつけば、両隣で風を送ってくれているのは二人のメイド達で。
聞けば彼は和室の裏の井戸を直すことに躍起になっているという――マドカは白い日傘を手に取ると、メイド達に導かれながら彼の元へと急いだ――太陽はまだこんなにも照り付けて、夏の匂いを振りまいているのに――

薄っすらと流れてくる彼の汗の微かな匂いが彼女の鼻腔を擽り、掘り起こされた土の匂い、削ぎ落とされた鉄の錆びのツンとした匂いがやがてあたりに広がり――そして……


「―――!!?キャッ!!」


勢いよく迸る水飛沫がマドカの顔を襲い、暑さで半ば朦朧となりかけていた彼女の意識を瞬く間に覚醒させた――
とばっちりを食ったメイドたちも、しかしながら冷たいプレゼントに歓声を上げている――
ポンプの口を押さえることで流れ出た清水をマドカの顔にヒットさせた士度からは、珍しく彼女をからかうような声が発せられた――

人魚姫は再び弾ける笑顔を取り戻し――

彼女は日傘を放り出すと、いまだに彼女を攻撃することをやめない水飛沫にはしゃぎ声を上げながら、
一歩、また一歩と彼の元へと近づいていく。

ほら、あと数歩……――両手を伸ばし、真夏の天気雨の中で戯れる目隠し鬼のように彼の存在を求めると――


「おい……俺、今泥だらけだから……」


不意に彼から漏れたそんな言葉にかまう様子を微塵も見せず、マドカは彼の腕の中に飛び込んだ。


「気持ちいいです……!!」


彼を抱きしめながら、真っ白なブラウスと白磁の肌に彼から移る泥や汚れに頓着することなく――
マドカはその晴れやかな貌を士度に向けた――
夏の太陽と地下から汲み上げられキラキラと弾ける水の中、二人を包むように小さな虹が掛かっていたが、
彼女にはそれが見えなかった。


「………そうか」

「はい……!」


居候殿と同じように汗に塗れた執事や暑さに心底参っていたメイド達は奇跡のように輝く虹に歓声を上げ、天から眼が離せない――


士度は空を見上げなかった。

その代わり――彼を見上げながら、濡れる躰を、流れる雫を時折気持ち良さそうに払う彼女の微笑みに――


衰えることを知らぬ太陽の輝きの中で、

人知れずそっと、その貌を近づけた。



Fin.