〜禁断の芳花〜



バタン!

いつになく激しく玄関のドアが閉まる音がして、

メイドは慌てて階段を下りていった。

するとこの館の主がエントランスに俯き、立ち尽くしている。

服装が・・・今朝出掛けていった時とは違う。

彼女の盲導犬が心配そうに女主人を見上げていた。


「おかえりなさいませ、お嬢様・・・。あの、その格好は・・・」


「士度さんは、もうお帰りですか?」


メイドの問いに答えず、俯いたままマドカは静かに訊ねた。


「いえ、今夜は遅くなるとのことでしたけれど・・・」


−そうだった。今夜は日付が変わってからの帰宅になるから、また明日の朝会おうと・・・−


「・・・そうでしたね。すみませんけれど、お風呂の用意をお願いできますか?」


「かしこまりました。すぐにご用意致します。」


メイドはまだ夕暮れ前の早い入浴を少し訝しく思いながら、

足早に二階の自室に向かう主人の顔を窺うと

彼女の秀麗な面立ちは、美しくも激しい怒りを孕んでいた。



「あ、・・・・お嬢様!!何を・・・!?」


そして湯を浴びる身支度を整えたマドカはバスルームに入るや否や、

グラスに残っていたありったけの薔薇のエッセンスをバスタブの中に打ちまけた。

いつにない主人の様子に心配を隠せないメイドたちを他所に、

たっぷり二時間、マドカはバスルームから出てこなかった。







今日は午後の早い時間から、馴染みの音楽院でレッスンを行う日だった。

特別講師として招かれているマドカの授業は大人気で予想よりも受講生が多かったため、

眼が見えないマドカに配慮してサポートの講師も毎回ついていた。

そして今日の授業も滞りなく終わり、

挨拶をしてくる生徒たちに爽やかに答えながら後片付けをしていると・・・。


キャン!とモーツァルトが鳴く声がして、バタン、とレッスン・ルームの扉が閉まる音がした。

場が静まり返る。


「モーツァルト?」


手を止め、手元にあったはずの愛犬のリードを探してみるが、何処にも無い。


「ワンちゃんには少し席を外してもらいました。音羽先生。」


マドカのサポート役として今日のレッスンに参加していた神崎の気配だけが感じられる。


「・・・どういうことですか、神崎先生。」


神崎はこの学院の専任講師で、ヴァイオリン担当、歳は二十七歳と聞いている。

学院内では、ヴィジュアルが良いと女生徒の間で人気が高いそうだが、

マドカ自身はニ・三回他の講師と一緒に彼とランチを共にし、

時々院内で短く仕事の話をする・・・ただそれだけの関係だった。

そんな人が他人の愛犬、ましてや盲導犬に勝手に触れ、外へ出すなんて・・・。


− 危険 −


マドカの本能がそう、頭の中で告げていた。


「・・・・ちょっと、音羽先生と二人きりでお話をしたかったんですよ。」


一歩、下がったマドカに、神崎は一歩近づく。

彼の少しきついコロンが鼻を突く。


「・・・・私からは、お話することはありません。」


マドカは記憶を頼りにゆっくりと、出口の方へ向かった。


「つれないなぁ。僕はただ音羽先生ともっと仲良くなりたいだけなのに・・・。」


ツカツカと神崎はあっさりマドカの前までくると、おもむろに彼女の細い手首を掴んだ。


「!!離して下さい!」


神崎の手を振り解こうとするマドカを難なく押さえつけ、

ヴァイオリンケースをその手から取り上げて適当に机の上に置く。

そして暴れるマドカを一方的に抱きしめた。

神崎がマドカの首筋に自分の顔を埋める。

ゾッとマドカの背中に悪寒が走った。


「好きです・・・音羽先生。」


神崎の少し高い声が、マドカの耳元に届いた。

そしてその舌は耳朶を嬲り、

神崎の手はマドカの腰にまわり、ほっそりとしたマドカの括れを撫で回す。

全身に鳥肌が立つような寒気と吐き気がマドカを襲った。


−士度さん以外の人に・・・こんなこと・・・!−


「ヤッ!止めてください・・・。大声を出しますよ!」


マドカは身を捩って抵抗するが、神崎はビクともしない。


「どうぞ?もっともここはレッスン・ルームで、防音は完璧ですけれどね・・・。」


それに授業は終ったばかりで、皆、次の準備に忙しくてここには誰も来ませんよ−


クスクスと笑いながら言い、マドカの髪の匂いを嗅ぎながら神崎の手がマドカのブラウスにかかった。


「!触らないで!!私には・・・好きな人がいるんです!あなたの気持ちには応えられません!」


何とか神崎に諦めてもらおうと、暴れながらマドカは必死に言葉を繰り出した。


「・・・・知っていますよ。」


片手で器用にブラウスのボタンを外しながら、サラリと神崎は言った。

マドカの眼が見開かれる。


「あの、ワイルドで背が高いお兄さんでしょ?先日あなたと一緒にいるところを街で見かけましたよ。
あなたはとても楽しそうでしたけれど・・・・。
でも、世界の音羽マドカの隣に相応しいのは・・・
あんな粗野で乱暴そうな人間ではなくて、
やっぱり音楽家みたいに繊細な人間じゃないですか?僕みたいな・・・。
それに、ああいう類のお兄さんは案外、潔癖症ですから−
彼女に一度他人の手が付くと、もう許せないんじゃないんでしょうかね・・・」


「やめて!!士度さんはそんな人じゃありません!」


士度を侮辱されたことへの怒りを吐き出すと共に、何とかこの汚らわしい手から逃れようと身を翻した途端、

ビリリッと神崎に掴まれたままのブラウスが破れ、マドカは床に叩きつけられた。


「じゃぁ、試してみましょうよ・・・。」


「今日、僕に抱かれた痕を残して帰って、彼氏がどんな顔をするか見てみたいと思いません?」


−あぁ、あなたには“見えない”か−


楽しそうに笑いながら、神崎は倒れたマドカに覆いかぶさってきた。

顔を蒼白にしながらもなおも後ずさるマドカをカーペットの上に引き倒し、

露になったわき腹を手のひらで捏ねるように撫で上げる。

そしてスカートの裾から手を入れ、薄い布に指をかけた。


「・・・ッ!イヤァァァーー!!」


「音羽先生〜、この教室の窓の外に烏の大群が−!!何やってるんですか!神崎先生!!」


学院の生徒が男女数人、外の異常を伝えようと入ってきたのと、

マドカがついに悲鳴を上げたのは同時だった。







その後の学院内は荒れに荒れた。

盲目の講師が引き裂かれたブラウスを身に纏い、神崎に組み敷かれている状態は何が起こったか明白で−。

神崎は現場を目撃した男子生徒たちによって、その場ですぐに捕らえられた。

そして学生らによって女教員と女性教授らが呼ばれて、息を切らしてやってきた。

肩にはいつの間にか誰かのコートがかけられていて、

遠くで自分を慰める他の教師や生徒たちの声が聞こえる−。

やれ人権委員会だ、セクハラ委員会だ、なんで若い講師を二人きりにしたんだ、警察を・・・教授会を・・・倫理委員会を・・・

そんな怒号と悲鳴の中、半ば放心状態のマドカに女性教授が保健室へ行こう、と促した。

マドカはゆらりと顔を上げ、

とりあえず外の空気が吸いたいので窓を開けてください、と頼んだ。

籠もった空気の中に、涼しい風と烏の声が入ってきた。

−駆けつけた人々の群れから抜け出すように一人窓辺へ行き、

顔を出すと一羽の烏が代表するようにマドカの前に舞い降りた。


<イジワル、サレタ?ダイジョウブ?>


<大丈夫よ・・・助かったわ、ありがとう。>


烏にそっと触れながらマドカは礼を述べた。


<シドニ、ホウコクシナキャ。マドカ、イジメラレタ・・・>


シドニイワナキャ・・・シド、オコルネ・・・


周りにいる烏たちも口々に士度の名前を出した。


−こんなこと・・・お仕事をしている士度さんの耳に入ったら、きっと迷惑がかかるわ−

できれば、なかったことにしたい−でも、きっと知られてしまう・・・心配なんてかけたくないのにー


<大丈夫だから・・・士度さん、今忙しいから・・・後で私からちゃんと報告するから、ね?>


<ソウ?キット?>


<えぇ、約束するわ。きっと。>


<ゼッタイダヨ・・・シド、ウソキライ。>


<・・・うん。だからあなたたちはもうお帰り。また家へ遊びに来てね。>


マドカの言葉と共に、烏たちは一斉に飛び立ち、黒い列をなして青い空へ消えていった。

背後から学生たちの感嘆の声が聞こえた。






マドカは神崎に触れられた肌と髪をこれでもかというほど丹念に何度も何度も洗い流した。

あの後聞いた話によると、神崎は以前からマドカに目をつけていたらしい。

−ずっと、好きだったのに・・・全く相手にされず、彼氏もいたなんて−

マドカが士度といるところを見かけ、とうとうキレてこの犯行に及んだそうだ。

彼のヴァイオリンケースからは隠し撮りされたマドカの写真が数十枚発見された−


−なんて、短絡的な動機だろう−


神崎にはそれなりの罰が下されるだろう。

音楽家としての道は閉ざされ、あの学院からの追放は決定的。

私も本当はあんな現場がある場所になんて居たくないんだけれど、

学院長に教育現場の改善を必ず図るからと、泣いて懇願されてしまった。

とりあえず、しばしの休暇を・・・。

それよりなにより、マドカは士度以外の者に触れられた場所が汚らわしくてしかたがなかった。

洗っても洗っても、あの気持ち悪い感触が取れない−あのコロンの匂いも取れていない気がする。

薔薇の香りに身を浸し、マドカは愛しい人の顔を思い浮かべた。

一刻も早く−会いたかった。


湯船から上がると、待っていたメイドに夕飯はいらない、と断りをいれた。

逡巡するメイドに、疲れたから今日はもう休みます、と言い残し、マドカは自室へ向かった。

マドカは部屋の扉の前でピタリ、と足を止めた。

そして士度の部屋の方へ顔を向けたまま、しばしその場に立ち尽くしていた。






時刻は草木も眠る丑三つ時−士度は疲れた身体を引きずるようにして音羽邸に戻ってきた。

当然ながら屋敷は寝静まっている。

一羽の梟だけが、ホゥ、と士度にお帰りを言った。

合鍵を使って玄関の扉を開けると−薔薇の匂いが士度の鼻に飛び込んできた。

エントランスに入っても、長い廊下も、階段も、館中が薔薇の香りで満たされている。


−いったい何をやらかしたんだ、マドカのやつ−


マドカは確かに花の香りが好きだが、いつも微かに香る程度にしか身に着けない。

各部屋の香りにしてもそうだ。

安らぎをもたらす程度に上品に・・・。

それが一体全体、この有様はなんなんだ?

いつになくむせかえるような薔薇の香りに戸惑いながら、士度は自室へ足を向けた。


とりあえずは−この身体を休めて、明日の朝、この薔薇屋敷について聞くとするか−


カチャリ、と扉を開け真っ暗な部屋の中へ入ると−この部屋も薔薇の香りで一杯だった。

その強い香りに少し頭痛を感じ、士度はため息をつきながら上着を脱いでソファへ放る。

そしてシャワーの前に一息つこうと、ベッドへ視線を流した瞬間−

眼に飛び込んできたのは、リネンに包まって眠る−マドカの姿。

白く、薄い掛け布から、彼女の体のラインがはっきりと浮き出ていた。

枕はその手に抱きしめられ、顔は枕に埋められている。


・・・ここ、俺の部屋だよな。


念の為、ザッと部屋の中を見回して見るが、紛うことなくシンプルな自分の部屋だ。

マドカの部屋にあるネコやウサギのぬいぐるみや、ピンクのレースのカーテンなどは・・・ない。

士度は彼女を起こさないようにそっとベッドの端に腰掛けた。

マドカの体中から、濃厚な薔薇の香りが立ち込めている。

枕に半分隠れている小さな顔を覗き込むと、

頬には薄っすらだが涙の跡が線を引いていた。


−・・・泣いて、いたのか?−


ふと、士度はその白い頬に触れてみたい衝動に駆られたが、

きっと泣き疲れて眠ってしまった彼女の身体を思って、手を引いた。


−マドカは・・・どうせ涙を流すのなら俺の前で流したい、と以前言ったことがある−


−士度さんの温かい手で拭ってもらえたら、士度さんの優しい声を聞いたら・・・
きっとこの雫はすぐに止まるから−


−何か泣きたいことがあったのか?それで俺の残り香を求めて、ここで・・・−


士度は優しい眼差しで彼女を見やった。

すると、ゆっくりとマドカの瞼が開いた−


「・・・・士度、さん?」


乾いた声が、士度の名を呼んだ。


「悪ぃな、起こしちまった−−!」


士度が言い終わる前にマドカがスッと両手を伸ばし、士度の首に絡めると

その美しい弧を描いている唇を、士度のそれに重ねてきた。

ピチャリ、と甘い音共に、マドカの舌が士度の口腔を侵す。

マドカの唐突な行動に驚きながらも、士度も乞われるままに舌を絡めた。

すると、マドカの手が士度のシャツに伸び、急くようにそのボタンを外し始める。


「!?」


さすがに士度も口を開き、そのシャツの上を這うマドカの細い手首を掴んだ。

二人の混ざり合った唾液が一瞬、糸を引き、僅かに差し込んでいる月明かりにキラリと光った。


「オイ、待てよ・・・。」


−お前らしくないぞ−


拒絶されたからなのか、マドカの悲しそうな表情を目の当たりにして最後の言葉はかろうじて飲み込む。


「・・・・帰ったばかりで汗まみれだ。シャワー浴びてくる。」


そう言ってベッドから立ち上がろうとする士度の腕を掴み、マドカは身体を摺り寄せ、抱きついた。


「・・・・お願い、今日はそのまま、今すぐ−−」


−抱いて、下さい・・・−


耳元で、辛うじて聞こえるか聞こえないかの声で囁かれた。

その声は震え、懇願めいた響きを士度の脳裏に届けた。

マドカの柔らかい胸が士度の胸元で擦れ、無意識に誘っているようだった。


「・・・・いったいどうしたんだ−−!?」


そう言いながら、マドカの首筋に顔を埋め、彼女をきつく抱きしめた士度の動きが急に止まった。

士度の周りの空気が急速に冷えていくのを、マドカは感じた。


−あぁ、やっぱり・・・−


−気付かれた−


士度は半ば乱暴にマドカの腰を掬い上げると、柔らかなベッドへ彼女を押さえつける。

そして、再びマドカの首筋に顔を埋めると、彼女の耳元で低いテノールが響いた。


「−−−知らない男の臭いがする。」


眩暈がするような薔薇の香りにの中に残る忌々しい臭気を、士度は逃さなかったのだ。

その感情の無い響きに、ゾクリ、とマドカの身体に旋律が駆け抜ける。

その感覚は喜びと恐怖と焦りが綯い交ぜになったようで、直接マドカの腰に響いた。

ギリリ、とマドカの手首を掴む士度の手に力が入る。


「−マドカ・・・」


たった一言、名前を呼ばれただけなのに、

その一言には士度の嫉妬と怒りが籠もっているように聞こえて、

マドカの心は暗い喜びに震えた。


「今日・・・音楽院で・・・襲われ、かけたんです・・・」


「何・・・だ、と・・・!?」


明らかに怒りを孕んだ士度の声が、マドカの耳を犯した。


「でも!・・・でも、あの、身体、触られただけで・・・
烏さんたちが他の人たちに知らせてくれたから・・・その、最後までされないで・・・」


・・・この薔薇の香りも、その人の臭いを消したくて・・・


無言でマドカを見つめている士度へ、最後の方は半ば言い訳のように呟いた。


「・・・どこのどいつだ?」


−そんなバカなことをした奴は−冷えていた空気は、いつのまにか赫怒で熱く燃えていた。


「あ・・・同じ学院の講師で・・・ほとんど知らない人で・・・」


・・・彼にしかるべき処罰が下されるので、もう会うことはないと思います−震える声でマドカは応える。


「・・・・・」


再び沈黙が場を支配した。


(それに、ああいう類のお兄さんは案外、潔癖症ですから−
彼女に一度他人の手が付くと、もう許せないんじゃないんでしょうかね・・・)


そんなはずは無い、と心は強く否定しながらも、神崎の言葉がマドカの耳を再び掠めた。


「・・・もう、嫌、ですか・・・?こんな、女・・・・」


涙交じりのマドカの声が士度の耳に届いた。


「・・・・何馬鹿なこと言ってるんだ、マドカ。」


マドカを落ち着かせるように優しく彼女の髪を撫で、その耳朶を甘噛みしながら士度囁く。


「・・・・狂犬に咬まれたようなものだろ?マドカは、マドカだ・・・。」



−・・・そしてそんな狂犬には、それ相応の仕置きが必要だがな。−


腹の底で士度は思った。調べはすぐにつく。

マドカの知らぬところで、その身の程知らずを懲らしめてやればいい・・・。

俺の花を手折ろうとした罪は・・・重い。



不安で押しつぶされそうな表情をし、怯える小動物のように身を堅くしているマドカの耳元で士度は言葉を紡ぐ。


「−−−どんなお前でも・・・・」


−愛してるぜ−


マドカの眼から、堰を切ったように涙が溢れた。


「・・・・し、どさん・・・士度さん!お願いです・・・あなたの香りで私を・・・一杯にしてください!」


マドカは飛びつくようにして、士度の首筋に顔を埋め、彼の汗の匂いを吸い込んだ。


「・・・・そうだな。消毒が必要だ。」


−そんな野郎のことなんか、キレイサッパリ忘れさせてやるさ・・・−


自分の内にどす黒く渦巻く嫉妬心に苦笑しながら、士度はマドカの腰に手を這わせた。






ヒュッ、とマドカの喉が鳴った。

先ほどからの士度の味わうような愛撫に

マドカの眼は快楽で虚ろになり、唇は唾液で赤く濡れていた。

時折するどく駆け抜ける快感に身体はひっきりなしに小刻みに揺れ、

ベッドの上は薔薇の芳香と二人の汗の匂いでしっとりと濡れていた。

士度の熱い唇がマドカの胸の突起を含み、ゆっくりと嬲る。

左手でもう片方の突起を捏ねると、桃色のそこはすぐにぷっくりと立ち上がった。

士度は空いた手で、快感から時折震えているマドカのほっそりとした太股を持ち上げ、

薄いランジェリーの上から、その花口を二本の指でそっと押した。

ビクンッ、とマドカの腰が跳ね上がる。

薄い布には既に愛液によって染みがつけられ、士度の指をも濡らした。


「・・・・ここも、触られたのか?」


布の上から悪戯に花口を擦りながら何気なく士度は問うた。


「そこはァ!・・・ア・・・アァ!触られて、いま・・・ッ!・・・せ、ん・・・・」


身体中に施された愛撫によって敏感になり過ぎたソコへの接触に

悲鳴を上げながらマドカは応える。

実際、神崎の手はマドカの繁みに手を触れる前に、入ってきた学生たちによって中断された。

せめて操を守ることができて良かった−もしそうでなかったら、私はきっと壊れていたかも・・・。

でも、そんな私でも、士度さんはきっと−

きっと、呼び戻してくれる−

グッ、と一際強く手のひらで花口を刺激され、マドカから高い声が上がった。

そしてその瞬間、マドカの下着は取り去られ、クチュ、と卑猥な音がして

士度の怒張が入り口にあてがわれたのを感じる。

ピクリ、とマドカの肩が僅かに揺れると、マドカの首に士度の手が掛かった。

士度の長い指がマドカの首筋をゆっくりと撫で上げ、そのまま彼女の頤を持ち上げる。

お互いの唇が触れるか触れないかのところで、士度が律儀にも


「・・・いいか?」


と訊ねてきた。


「きて・・・・早く・・・」


マドカは士度を引き寄せ、熱い接吻を与えながら彼が一番近くに来ることを望んだ。

−待ち侘びた衝撃が、彼女を襲った。






「ンっ…!士、度さん!もっと・・・もっと、くだ・・・さい!」

喘ぎすぎて掠れた声でも尚、マドカは士度を欲しがった。

接合部分からはグチュグチュと猥雑な音が止むことなく聞こえ、

士度の熱い吐息がマドカの髪を揺らした。

身の内で再び大きくなった彼の分身を感じながら、

マドカは士度が自分の望むままに与えてくれている快楽を貪った。

身を捩じらせ、悲鳴を上げているマドカの身体が、不意に持ち上げられた。

ズッ、と身の内から士度が一瞬居なくなり、下肢がスッと冷える。


「!?」


そしてマドカが戸惑う間も無く、

身を起こした士度の、その中心で立ち上がる彼自身の上にそのまま落とされた。


「ひっ…あっ−ーア−−−−ッ!」


限界まで深く繋がった急激な衝撃に、マドカは二度目の絶頂を迎えた。

直後、士度の低く短い唸り声と共に熱い迸りがマドカの内壁を叩き、

余韻に浸るマドカに更なる追い討ちをかける。

艶かしく揺れるマドカの細い腰を、士度は支えるように抱きしめた。

時折絶頂の波に痙攣しながら、マドカが士度の厚い胸板に顔を埋める。

チュ、と小さな甘い音を立てて、士度の唇がマドカの髪にキスを落とした。

子猫が甘えるように、マドカは士度の胸に頬を摺り寄せる。

士度の、少し早い鼓動が耳に心地よかった。

と、その時・・・


キュルルルル〜


小さな、けれどはっきりとした音が静かな部屋に響き渡った。


「・・・・ん?」


士度が抱いているマドカを見下ろすと、彼女は頬を染めて小さくなっている。


キュル


再び可愛らしい音がマドカのお腹から聞こえてきた。

クッ、と士度は声を殺して笑うと、


「何だ、マドカ。飯食ってなかったのか?」


と、からかうようにマドカの顔を覗き込む。

マドカは頬を赤くして顔を背けながら


「・・・・だって、イライラしてましたし・・・一人でお食事したくなかったんですもの・・・」


と呟いた。


「俺がなんか作ってやるよ。」


愉快そうに言いながら、士度は繋がりを解く為に、マドカを持ち上げようとした。


「え・・・ヤッ!ま、待ってください!」


マドカが両手で士度の肩を掴み、それを制す。


訝しがる士度に、マドカは


「お願い、もう少し、このままで・・・・」


と言って、再び腰を落とす。

士度が笑う気配がした。

少しずつ冷えていく身体に温もりを求めるように彼の広い背中に手をまわすと、

士度はマドカを抱いて再びベッドへ身を沈めた。

いつの間にか、お互いに巣食っていた黒い霧が晴れていた。


薔薇の香りは、もうしない。

愛しい人の匂いに包まれながら、二人は明け白む夜に眠りを求めた。



Fin.


              月窟222申告の内村京介様からのリク、<裏でシリアスっぽいもの>からでしたv
                       内村様、申告&リクエストどうもありがとうございました。
                       &ちょっくらオリキャラ、神崎先生出てきてスミマセン・・・。
                       既存のキャラにマドカ襲わせると、明らかに血を見るので・・・。
                       素人相手なら士度も無茶はしない・・・かも。
                       少しでも楽しんで頂けたなら幸いです☆