恋水



湯浴みを終えたマドカが寝室に入ってみると、士度はそこにはいなかった。


―また書斎でお仕事でもしているのかしら・・・・―


マドカは小さく溜息を吐きながら、パールシルクのバスローブを脱いで、ソファに掛けた。
その時・・・・マドカは部屋に何やら違和感を感じた。


―・・・誰か・・・何か・・・いる・・・?―


大きな気配ではない・・・・
庭の犬か猫でも迷い込んできたのだろうか?

マドカが“何か”の気配がするウォークインクローゼットに注意を向けたとき――


「――ン!!・・・・・ッ士度、さん!!」


背後から音も無く近づいてきた士度にいきなり抱きしめられ、マドカの心臓はバウンドした。
彼の大きな身体に包まれるようにして腕を回され、首筋に唇を這わされてしまうと、もう、抵抗なんて出来ない。


「――ア・・・も、もう・・・脅かさないで、ください・・・・」

「スマンな・・・お前があまりにも艶っぽい格好をしているもんだから・・・・」

「――艶っぽい?――あ・・・これ、は・・・・・」


士度がマドカのスリップを軽く引っ張ったので、マドカは士度の台詞の意味を理解する。
今、身につけているのはチョコレートカラーのローズレースのスリップ。
今回の旅先で、友人に見立ててもらったものなのだが・・・・。


「あ、あの・・・これ・・・今回、イギリスのお友達に選んでもらって・・・・男の人はこういうものが好きだからって・・・・」

「女友達か・・・?」

「――!!当たり前じゃないですか!!・・・・馬鹿なこと聞かないでください・・・・。」


小さな嫉妬心が滲む士度の発言にマドカは僅かに声を大にしたが、彼のそんな言葉でさえ、何故だか心は喜んでいる。

すまなかった・・・髪を後ろで纏め上げているので露になっているマドカの
に口付けを落としながら、士度は短く謝罪した。

彼の手が、スリップの上を旅するように這わされた。


「あ・・・・の・・・・変、じゃないですか・・・・?これ・・・・」


いつもはマドカが着る服や下着にあまり頓着しない士度にしては珍しい動作だ・・・・そうマドカは感じて問うてみた。


「別に変じゃないぞ?ただ・・・・マドカでもこういうモノを着るんだな――って思ってな。
誘われているようで、悪い気はしない。
シースルー・・・・というのか?此処の形がはっきりと判る位に透けて・・・・・」


そう言いながら士度がスリップの上から、マドカの胸の頂を掠めた。
彼のその言葉と行動に、マドカの全身を熱が瞬時に駆け巡り、マドカは一瞬にしてパニックに陥った。


「〜〜!!う、嘘ッ!!す、透けているなんて――!わ、私知らなくて・・・・ッ!!」


悲鳴に近い、絶望的な声を上げながら、マドカは両腕で胸を隠そうとした。

そんなマドカの声を塞ぐように、彼女の両手を一瞬拘束しながら、士度が唐突にマドカの唇を奪う。
立ったまま、上から覆い被さるように口付けをされ、彼の舌先で口蓋を舐られ、
マドカはその熱さと、知らぬうちに自分があられもない格好をしていたという羞恥心に震えた。


「――静かに・・・・隠れている奴等に、変に思われるぞ・・・?」


震えるマドカの身体を片手で支え、空いた手の甲でマドカの胸の飾りを布越しに撫でながら、
士度が僅かに離した唇の間で囁いた。


「隠・・・れて・・・?だ、誰・・・・?」


観られているかもしれない――そんな恐怖がマドカの身体を駆け巡り、マドカは士度の二の腕に縋るように手をかけた。


子供ガキどもだ――」

「――え?〜〜!!」


――じゃあ早く部屋から出さないと!――


マドカがそう口にする前に、その痩躯は士度に軽々と持ち上げられ、あっという間にスプリングがきいたベッドに転がされてしまった。
ベッドのスプリングが派手に軋んだが、倒されたマドカには痛みは無かった。

ベッドの下で、小さく“ゲッ・・・!”という誰かの声がしたが、士度は聞こえないフリをした。

そしてバサリ・・・・という音を立てて、白いシーツが肌蹴られ、二人はその中にすっぽりと収まった。


(し、士度さん・・・・!ベッドの下にも誰かが・・・・こ、こんなことをしてる場合じゃ・・・ッ・・・!)

(放っておけ・・・シーツの下ではお前のこの姿を観ることができるのは俺だけだ。)

――それに十日もお預けくらってたんだ・・・・これ以上何を我慢する必要がある?――

マドカの首筋に赤い華を咲かせながら、士度の唇が彼女の鎖骨を掠め、熱い掌がシースルーの下着を撫でた。


(――ンッ・・・で、でも・・・・声とか・・・音とか・・・・ンッ・・・・!)


布越しに乳房を揉まれ、マドカは小さく喘いだ。


(じゃあ、声を出さなければいい・・・・)

(そ、そんな・・・・アッ・・・!)


なおも言い募ろうとするマドカの口を、士度が塞ぎにかかった。
歯の付け根裏側や、頬の内側の柔らかな肉を舐め上げた士度の舌は、そのままゆっくりと再び口蓋を辿り、
ピチャリ・・・と卑猥な水音を小さくたててマドカの舌に絡んだ。舌の根が痺れるほどの長く甘いキスが続く。


(っ・・・・!ん・・・・)


キスの合間にも、士度はマドカの身体に手を滑らせた。
布越しに触られているだけなのに・・・・誰かがベッドの下とクローゼットにいて、二人が絡まりあっている気配を感じているという事実が
マドカの身体を余計に敏感にし、その痩躯は緩慢に動く士度の手の行方に翻弄され続けた。


(んん・・・・ッ・・・・)


時折マドカの頤の角度を変えながら、士度からの口付けは止む事をしらない。

(ふ・・・・・)


それでも、久し振りに感じる士度の唇を、マドカも懸命に追いかけた。
どちらのものか既にわからない唾液がマドカの口角から溢れ、衒った唇が士度の欲を更に誘う。


(・・・っ・・・・ン・・・・!?)


不意に――ドクリ・・・・と絶頂の予感が、マドカの下肢を疼かせた。


(は・・・・ッ・・・あ・・・ヤ・・・!)


接吻に思考を溶かされていたマドカは、その疼きに戸惑い、さらに突然胸元を布越しに強く捏ねられ、身体を大きく跳ね上げた。
思わず我に返ったマドカは、彼の悪戯な手を止めようと、咄嗟に腕を伸ばした。
しかし、そのマドカの細い手首は士度の長い指に絡め取られる。
マドカの片手は易々とシーツに押し付けられ、もう一方の手で士度の肩を押して抵抗を試みても、その逞しい体躯はビクともしなかった。
今宵は未だ触れられていない下肢に快楽が集中するのをマドカは感じ、一人頬を染め、さらに小さく抵抗した。
このまま其処に触れられてしまえば、自分はきっと慾の波にのまれて・・・・。
しかも、子供がいる空間で――!


(も・・・やめ・・・ッ!お、おしまいで・・・す・・・!)


接吻の合間に、マドカは小さな震える声で士度に告げた。


(どうしてだ?)

士度の手が小刻みに揺れるマドカのほっそりとした太股を撫でた。


(――ンッ・・・!だって・・・・)


マドカは足を閉じようとしてさらなる抵抗を試みたが、彼の力に叶うまでもなく、士度の手はマドカの繁みに触れた。
マドカの貌がサッと朱に染まり、許しを乞うようにして士度を見上げた。


(だって?お前、さっき言っただろ・・・・?)


士度はマドカの耳朶をペチャリ・・・・と音を立てて嬲りながら囁いた。
彼の指が、既に濡れそぼっている彼女の花弁にそっと触れた。
ヒュッとマドカの喉が鳴り、ビクリッ・・・と身体が大きく揺れる。
クッ・・・・と喉の奥を小さく鳴らしながら、士度はマドカの唇を捉える前に言の葉を紡いだ。


―― オレノコトガ、ホシイッテ・・・・―ー


そう言うや否や、彼は彼女の中心にその長い指を潜り込ませた。


(――!!ん・・・!んんッ――!)


マドカの悲鳴は、二人の深い接吻に飲み込まれる。
そして士度は勝手知ったる彼女のイイ所を瞬時に捉え、小刻みに刺激を与えた。
士度にしがみついていたマドカの見えない瞳が大きく見開かれ、眦から大粒の涙が零れた。
彼女の痩躯が士度の腕の中で魚が跳ねるように揺れ、やがて小さな痙攣を繰り返しながら、その体重を全て士度へと預けてきた。

はぁはぁと息を整える努力をする彼女を士度はそっとベッドへ横たえると、その頬へチュッと音を立てて口付けを落とし、
自分はシーツから抜け出ると、ベッドを降りて部屋の扉を開けた・・・・。


「・・・・?」


彼の行動の真意が判らず、快楽の余韻に身を震わせたままのマドカが様子を窺っていると・・・・


「士音!琴音!!こっちへ来い!」

「――!!」


思ってもみなかった彼の台詞に、マドカは絶句する。
彼女の思考が事態を正常に把握する前に、士音と琴音が風のように飛んできた。


「な、何かな・・・・父さん・・・・」


いつになく大声で呼ばれたことで、士音と琴音の面持ちは緊張している。

士度は一度深い溜息をつくと、二人に目配せをしながらこう告げた。


「ベッドの下に、二匹。クローゼットの中に二匹だ・・・・早く摘み出せ。」


士度の言葉に、士音と琴音は真っ青になって、慌ててベッドとクローゼットに飛んでいく。
あれほど両親の部屋に入るなって言って置いたのに・・・・。


「テメーら!!こんなところで何やってるんだよ!!ここには入るなって言っただろ!!」

「す、すみません・・・・扉の数を数えるのを間違ってしまったらしくって・・・・」


士音に襟首をつかまれて引っ張り出された秀一が頭を掻いた。


「いや〜・・・おじさんとおばさんがベッドの上に座った時には、もー一晩中出られないのかと思ったぜ!」


失敗、失敗・・・・と孝太が暢気に呟いた。


「あれ、ママ・・・?目が潤んでるわよ?どうしたの?」


鈴香と麻弥をクローゼットから追い出した琴音が、シーツに包まって震えるマドカに遠慮なく訊いてきた。
マドカは一瞬硬直したが、少し考える素振りを見せた後、シーツで半分顔を隠しながらオズオズと答えた。


「あ、あのね・・・父様にくすぐられちゃって・・・・母様、笑うのを堪えていたから・・・・」


チラリ・・・・と士度の方を窺うと、彼はクスリ、と小さく笑ったようだった。


―〜〜!!もう!!あなたのせいなのに!!――


マドカはシーツを頭まで被ってそっぽを向いた。
も〜おば様ってば、可愛いんだから!v 鈴香がはしゃぐ声が後ろから聞こえてくる。


「ふーん・・・・パパ!ママだって昨日帰ったばかりなんだから、あんまり苛めちゃだめよ!」


琴音が士度の腕にぶら下がりながら父親に注意をした。


「俺がマドカを苛めるわけないだろう・・・・?」


何を言っているんだ、お前は・・・・士度は悪びれることもなくそう言ってのける。


「ホント、そーだよな・・・・。オイ、行くぞ!お前ら!北嶋・・・何だよ、お前まで・・・・」


思いがけず士音から注意されて、麻弥は項垂れてしまう。


「だって、このお家お部屋が一杯あって・・・・ここをこの間案内してもらったお客様の為のお部屋と間違えて・・・・」


麻弥が言い訳を最後まで言い終える前に、子供たちは全員、士度によって部屋から放り出された。
そして鍵を掛けた扉の向こうからは、「怒らせちまったじゃねぇか!!」と、士音が級友を嗜める声が聞こえてきた。



「さて・・・・」

士度が大きく伸びをした後、ベッドの方を振り向くと、その上には丸いシーツの塊が。


「・・・・マドカ。」


士度が妻の名を呼びながら、その肩に手をかけると、


「知りません!!」


という言葉がピシャリと返ってきて、そのシーツの塊はさらに丸くなってしまった。


「・・・・そうか。残念だな・・・・。」


士度はあっさりとそう言うと、部屋の明かりを落とし、ベッドランプだけを点けた。
そしてベッドにゴロリと横になると、寝の体勢に入る。
そんな彼の気配にシーツの塊がピクリ・・・と動き、再び大人しくなった。









―20分後・・・・・



「あ・・・・」

「もっとだ・・・マドカ・・・」

「っ・・・ん・・・・大きくて・・・・ッ!」


結局、あの後、マドカの方が我慢できなくなってしまい、士度に擦り寄っていってしまったが為、今はこんな事に。

ベッドヘッドに背を預けている士度の上にマドカが跨り、ご奉仕して大きくした士度の刀身をこの身に納めようと悪戦苦闘。


「んくっ・・・ッ・・・っア・・・士度、さん・・・・無、理・・・・ッ」

「大丈夫だから・・・・力抜け・・・。」


先端だけを身に納めた後フルフルと首を振りながら士度に訴えてくるマドカの腰を士度は支えると、グィッ・・・と下に引き寄せてやる。


「やあっっ・・・!」

グチュ・・・・

耳を塞ぎたくなるような音がして、士度自身がより深くマドカの中に入ってくる。


「・・・・ッ・・・いい子だ、マドカ・・・」


滅多に聞くことのない士度の甘い声に反応し、苦しい息の中でも、マドカの貌に微笑が宿った。
そんなマドカの頬を、士度はそっと撫でてやる。
マドカは彼のその手をとり、微笑みながら握り締めると、再び身体を動かした。


「は・・・あっ・・・」


マドカの全身はしっとりとした汗に覆われいた。
いつもとは違う角度で挿ってくる感覚に神経を焼かれそうになる。
僅かな痛みと、果てしなく続く快楽の予感からの涙が、彼女の頬を伝った。


「まだだ。ほら・・・・」


士度はそんなマドカの雫を舐め取りながら優しく言うと、彼女の胸の果実を悪戯に刺激しながら、もう一度彼女の腰を揺さぶった。


「う・・・ん・・・ッ!」


身体の中心にピリピリと痺れるような疼きが這い回り、マドカの思考を再び溶かしていく・・・・。


「まだ、全部入ってないぞ?」


息を求めるように喘ぎ、最早自力で動くことさえ叶わず、ただただ震えるマドカの背中を士度はゆっくりと撫でると、
唾液で濡れたマドカの唇をあやすように啄ばみながら、士度は彼女の腰をさらに引き寄せ、自身を完全にマドカの中に納めた。


「・・・・んッ・・・・士度、さん・・・・」


息を整えながらも、マドカはうっとりとした表情で士度の首筋に抱きついた。
士度も彼女の中の熱に意識を持っていかれないように気をつけながら、マドカの痩躯をきつく抱きしめる。


「お前の
は・・・温かいな・・・・」


マドカが、キュッ・・・と士度の広い背中に回してあった手に力を込めた。


「・・・・お腹の中が・・・・士度さんで・・・一杯です・・・・」


―― もっと、満たして、下さい・・・・――


「お前がそう、望むなら――」


――いくらでも・・・・・





蕩けるような
接吻を交わして

溶け合うような熱を分け合って

あなたを全身で感じたい――


夜が明けるまで、ずっと、ずっと・・・・




――望み通り、大人達の調べは明け方まで奏でられた。


十日ぶりの再会を果たした
冬木夫妻
翌朝の朝食の席には現れず、
陽が天高く上った頃、
双子の喧騒が目覚まし代わりとなるまで、
穏やかな惰眠を仲良く貪っていた。





Fin.



             UMI様の月窟1500キリリク裏バージョンでした。
                “お子様に覗かれて・・・・”とのリクでしたが、すみません、覗きになっていません;
                お誘いマドカも@HARDも・・・・どうなんでしょう;あ゛ぁ・・・もう猛反省です;
                しかし、考えてみれば冬木夫妻の裏話はこれが初なんですね・・・・士度&マドカの夫妻裏モノ、いいかも・・・・
                と思ってしまった管理人がおります。これは、ぜひまたいつかチャレンジせねば・・・・。
                表Mondlichtの◆degree of freedom◆とリンクしているので、そちらとあわせてお楽しみくださいませ☆
                UMI様、萌えリクエストをどうもありがとうございました♪