◆後日談◆





「よぉ、携帯で呼び出しなんざ、暫く会わないうちにお前も文明の利器を・・・・・」



――うるせぇよ・・・・――




新宿某所噴水前――


士度は煩わしそうに顔を顰めながら
クスリの小瓶を前を歩いてくる旧友に投げてよこした。



パシリと小気味良い音を立てながら、その程好い大きさの瓶を柾は難なく受け止める。



「“aphrodisiac”・・・催淫剤か・・・?何でお前がこんなモノ・・・・」



柾の顔から疑問符が抜けぬうちに、士度は憮然と言葉を紡いだ。



「仲介屋がウチのマドカの鞄に忍ばせて・・・・マドカがそれを栄養剤と間違えて誤飲したんだよ!こんなもん二度と渡すなって言っておいてくれ・・・・」



士度からの予想外の言葉に柾は一瞬目を丸くしたが、
すぐにその口元にはからかうような笑みが張り付き――彼は眼を細めながら士度に視線を送った。



「ほぉ・・・・誤飲ね・・・じゃあ、もうお楽しみだったわけだ・・・・で、どうだった?」


――コイツの効果の程は・・・――


柾の言葉に士度は片眉をあげると


「テメェの女で試してみろよ・・・・!」


と腹立たしげに吐き捨てながら、話は終わりと言わんばかりにクルリと踵を返した。



そんな旧友の相変わらずな反応に柾はクツクツと笑いながら――英文字が並んだラベルをザッと見回した。


「おい!これ、一回何錠・・・」


「・・・・・・三錠から四錠ほど飲ませてやれ。」



嘘は嫌いだがマドカがあれだけ苦しんで・・・
翌朝目覚めた後は紅くなるやら蒼くなるやら(何も悪くないのに)“嫌いにならないで”と泣きついてくるわで散々だったのだ。
せっかくの休暇も、足腰立たずその日は一日中ベッドの住人だったわけで――
マドカよりもよっぽど体力精力有り余ってそうな仲介屋のこと、そうでなくてもあの性格から・・・・いっぺんアイツと同じ思いをしてみなきゃ懲りないだろう・・・・

そんなことを思いながら、士度は柾になおざりに返事をすると――彼の視界から消えていった。



「三錠から四錠・・・ね・・・・」



ラベルの文字をもう一度辿りながら、相変わらず嘘が下手なヤツだと柾は楽しそうに口角を上げた。


あの様子だと・・・あの細いお嬢ちゃんは大層疲れる思いをしたことだろう――
それとも悦かったのかな・・・・?


柾はラベルに書いてある


“one tablet for one night”


の文字に緩む口元を隠さず


今宵のお楽しみの素を楽しそうに掌の中で転がした――




詳しい効能を訊けなかったことを

残念に思う自分に苦笑しながら。





一方、彼へのクリスマスプレゼントとして同じものを用意していたヘヴンは・・・・

士度からの思いがけない復讐の予感を本能が察知してかしないでか、

その日は夜までクシャミが止まらなかったそうな。













Fin.










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