ときどき目頭が熱くなる。
このぬくもりに。
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「ン・・・・・」
マドカの柔らかな唇の感触を戯れに食み
やがてするりと入り込んでくる彼の舌先。
そしてそれは優しく、柔らかくマドカの舌に絡み緩く口蓋を舐め――やがて焦らすように歯裏に軽く触れ、もう一度彼女の舌を押しながらそっと離れていく。
やけに短く感じた彼からの
彼女の両手がねだるように彼の唇に伸ばされ――士度は好きなようにさせておきながらその右手をとると、蝋燭の光に白さ際立つ親指の付け根辺りを甘噛みした。
刹那、擽ったそうに声を漏らしたマドカは、ふと思い出したようにその手をそっと士度の顔の上で動かした――何かを確かめるように、指先に神経を集中させ、何度も、何度も・・・。
――ほら、やっぱり似ていない。
「・・・・マドカ?」
安心したように微笑んだ彼女に、士度の訝しげな声が降ってくる。
「あの・・・ね?今日、カフェで・・・・私達のこと、
――私達、どこか似たところがあるんですか?
クスリと笑いながら問いかけてくる彼女の言葉に、士度はあからさまに顔を顰めた。
「兄妹――?冗談だろ・・・・」
どこも似てねぇよ・・・――不機嫌そうな声と共に、士度はマドカを抱き起こした。一箇所に二人分の重みを受け、ソファがキシリと鳴る。
それでもまだクスクスと笑いながら士度の顔に触れ続けるマドカの行動を遮るように、士度は徐に――今度は深く――彼女の唇を捕らえた。
「――!!」
唐突な――そして今度は少し強引なキスに翻弄されながら、マドカが縋るように士度の厚い胸板に手をやると――士度の悪戯な右手は、向かい合った彼女の左の大腿を上の方へ――ゆっくりと辿りはじめる。マドカの闇色の瞳が弾かれたように大きく見開かれた。
手が足の付け根に近づくにつれ、彼女から醸し出される女の香りが強くなったような気がする――
――・・・・そういえば、コイツの替えの下着を持ってくるのを忘れてたな・・・・
直接手に近くなる彼女の中心を感じながら、士度は不意にそんなことを思い出した――マドカの躰は当たり前のように、彼のTシャツ一枚しか身に着けていない。
しかしチラリと彼女の表情を伺うと――彼女もそのことを意識し始めたのか、頬をほんのり桃色に染め、足を出来る限り閉じようと叶わぬ努力をし始めていた。
士度は彼女の行動を笑うかのように、マドカの大腿を何度かさすり上げる。
士度の腕の中で彼女の躰が怯えたようにビクリと揺れ、二人の距離がまた少し縮まった時、士度は最後に絡まる唾液を吸い取るようにしながら彼女の唇から身を離した――二人の唇の間からピチャリと漏れる濡れた響きにの中で、マドカは酔わされたような恍惚の表情を士度に向けた――
「・・・・兄妹だったら、こんなこと・・・・できねぇよな?」
士度は唾液に濡れたマドカの丹花を啄ばみながら、知らしめるように彼女の中心に指を這わせる。
「――ッダメッ!!士度、さん・・・・・ここでは・・・・!」
すると今までされるがままだったマドカが、急に士度の右手を細い両手で掴みながら抵抗しはじめた。
片眉を上げながらも、士度はマドカのか弱い力に負けてやり、どうしたんだと膝の上で彼女を抱き直した。
――
お願いします・・・――潤んだ瞳で見上げてくる彼女に士度は苦笑するしかない。
そして彼は指先で蝋燭の灯火を消すと、フワリと彼女を抱き上げ、立ち上がり、片手間にテラスの扉を閉めた。
ガラス窓から差し込む淡い月の灯りが、士度の腕の中で安堵の微笑を浮かべるマドカの肌を白く照らす。
Tシャツが映し出す彼女の躰の線がいつもよりも扇情的なことに、士度は今になってようやく気がついた。
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「・・・・ありがとう、士度さん」
――今日はとても・・・・楽しかったです・・・・
士度がマドカをベッドに横たえたとき、彼女は士度の二の腕にそっと触れながら幸せそうに言葉を紡いだ。
そして月の光に透くような美しい微笑を士度に向ける。
「・・・・・・・」
士度は無言のまま、その大きな手を彼女の頬にあて、そっと撫でる。
ツキリとした寂しさの欠片が彼から――伝わってくるのをマドカは感じ、彼の名を呼びながらその手に触れた。
「髪編んで、飯作って、一緒に散歩して、風呂に入れて・・・・その程度だぜ?俺がお前にしてやれたことってさ・・・・」
マドカの頬や髪を戯れに撫でながら呟かれた自嘲気味な言葉に、マドカは目を丸くする。
士度はマドカの前髪に優しく触れ、彼女を見下ろした。
「俺、頭悪りぃからよ・・・・何すりゃお前が喜ぶのかてんで解らねぇままでさ・・・・だから “二人きりだ”ってはしゃいでいたお前に今日だって・・・・気の利いた事ひとつもできねぇで・・・・」
――自分でもほとほと呆れるぜ・・・・
後ろめたさを深く滲ませる彼の台詞に、マドカは目を瞬かせた――鏡台の前で、食卓で・・・公園やバラ園やカフェでも・・・あんなにも自分の心を昂揚させてくれた当の本人の自覚の無さにマドカは瞠目し、そして彼の次の言葉が、彼女の胸を締め付ける。
「こんなこと、言いたかねぇけど・・・・やっぱりときどき思っちまうんだ・・・・・」
昼間訪れたバラ園の光景が――可憐に咲く姫薔薇が、士度の脳裏にフラッシュ・バックした。
上品さや優雅さや・・・学も地位も持ち合わせていない自分みたいな雑草は・・・・姫薔薇を美しく取り囲む可憐な薔薇の一厘にはどうしたってなれやしない―――
「俺みてぇな奴が・・・・お前の傍にいてもいいのかって・・・・・・・――?マドカ?」
不意に彼女が両の腕を士度に向かって上げながら小さく揺らし、“起こしてください” の合図を無表情にしてきた。
士度は彼女の唐突な行動の意図が読み取れないまま、反射的に彼女の躰をゆっくりと起こして自分の膝の上に抱いた――すると
「えい・・・!」
ペチリ
マドカの両手が士度の両頬を挟み込むようにして叩いた。
乾いた愛らしい音だけが寝室に大きく響き、痛みも何も感じなかったが彼女のその不意打ちのような珍しい行動に、士度は訳が解らぬまま目を白黒させた。
そして彼女は彼の上で膝立ちになると――今日の思い出を伝えるかのように自分の胸元に彼の頭を抱き寄せ、その少し硬い彼の髪に顔を埋めながら呟いた。
士度は心がついていかぬまま、されるがままで――
「馬鹿な士度さん・・・・・」
マドカの慈愛が篭った声が、士度の耳に柔らかく響いた。
――誰よりも何よりも・・・・大好きなあなたと一緒にいるときが一番幸せって・・・・
「私・・・何度も言って・・・・」
――今日だって溢れるくらいの幸せをあなたはくれて・・・・・私の心は嬉しさで一杯だったのに・・・・・
彼女の真っ直ぐな声と、耳元で聴こえる穏やかに打つ心の臓のぬくもりが、士度にどこまでも優しい真実を語る。
「それに気がつかないなんて・・・・馬鹿な士度、さん・・・・」
悲しむ子供をあやすように深い愛しさを込めて、マドカは士度の顔にそっと触れた。
するとその手は広い手に捕られ、マドカはあっという間に再びベッドに転がされる。
「・・・・言ったろ、俺は頭がよくねぇって・・・・」
そう自嘲気味に言う士度の眼には、霧の中から手を引いて導いてくれる愛しい存在が月夜の闇の中でも柔らかな輝きを放ちながら映っていた――
どこか弾んだ彼の声音に、マドカも思わず目を細める。
「お願い・・・・士度さん・・・・・」
士度の首筋に腕を絡め、耳元で――失うのを恐れるかのように囁かれたマドカの微かに震える声にすら、士度は安らぎを感じていた。
そして彼女の揺れる瞳が求める言霊を音にする。
「ああ・・・・傍にいる・・・・」
マドカの安堵の吐息が、艶かしく彼の耳朶を擽った。
彼女の柔らかい首筋に紅い華を咲かせると、マドカの躰が無意識に――誘うように揺れ、二人は今宵何度目かのキスを――想いの丈を伝えるように、深く、長く交わした。
「んっ・・・・ぁ・・・・」
Tシャツの上から胸全体を焦らすように優しく撫で上げられ、マドカは甘い吐息と共に身を捩った。
士度は彼女の腰に手を当て、そこから彼女の躰のラインをなぞるようにしながら、華奢な彼女の身を覆うシャツをゆっくりと引き上げ、浅く上下する程好い大きさの胸を露にしていく。
「あ・・・・シャツは・・・・」
シャツが胸元を過ぎたあたりで、マドカの手が緩く士度の手首を掴んだ。
――全部脱がさない・・・で?着ていたいの・・・・
お願い・・・・――片手でシャツを押さえながら首を傾げる彼女の額に士度は触れるようなキスをし、返事の代わりにした。マドカの目が擽ったそうに細められる。
そして彼が鎖骨や肩口に朱印を施しながら、既に硬くなっていた彼女の胸の飾りに唇を寄せ強く吸ったり軽く歯を立てたり噛んだりすると、耳に心地よい嬌声が闇に冴えた。士度はその音色をさらに引き出すかのように片方の果実を舐め上げ、もう片方を指先で執拗に攻めた――いつもよりほんの少し――甘えるように求めてくる彼に一層の愛しさを感じながら、マドカは伝わる愛撫に溺れていった。感極まり愛らしい悲鳴を上げながら嫌々と首を打ち振る彼女の姿は、士度の欲を次の行動へと誘う――彼女の中心に指を滑らすと、そこは既に愛液でしっとりと濡れそぼっていた。触れられた途端反射的に逃げようとする腰を押さえつけ、士度は彼女の柔らかい花壁をなぞり、誘うように衒う蜜口へ指を潜り込ませた。
「ッ!・・・ぁんん・・・っ・・・」
内壁を探り、さらに奥へと指を蠢かし、滾々湧き出る蜜液が卑猥な音を立てるまで攻め立てると、マドカの甘い悲鳴が徐々に艶を帯び、彼女は耐えるように指が白くなるまで枕を握り締めた。しかし彼が充血して膨らんだ外側の紅い真珠を一際強く愛撫すると――
「――――ッ!!」
彼女の爪先がピンッと伸び、躰は小刻みに痙攣しながらクタリとシーツの海へと沈んでいく。
士度は身を乗り出し、彼女の戦慄く唇に労わりのキスを与える――マドカは自ら求めるように舌を絡ませてきた。
士度はトロン・・・と惚けた彼女の姿と、芳しい汗の匂いに誘われるように自身をマドカに押し当て――その気配に僅かに身を硬くする彼女に柔らかな愛撫を施しながら、ゆっくりと彼女の中へと身を沈めていった。
「ア・・・・んっ・・・・ッ・・・・・」
身の内を満たす重く、熱い衝撃に――マドカの濡れた唇から甘い喘ぎ声が漏れる。
「クッ・・・・」
十分に潤っている彼女の
――その快楽が士度の肌にも薄らと流れる汗をもたらした。
楔を浅く抜くと漏れる彼女の柔らかな甘い声や、再び奥へと進入すると木霊する悲鳴に近い声が、繋がった下肢から聴こえる淫らな音と交じり合い、闇に浮かぶ彼女の揺れる媚態が彼の鼓動と動作を否応無く早めていく。たくし上げられたTシャツの下で揺れる胸を時折掌で包み、転がし、先端で熟した桜色の実を食めば、彼女の四肢は哀れなほど震え、愛らしい嬌声で士度の耳を楽しませた。
「っ・・・・あぁ・・・・ンッ・・・・や・・・・士度・・・・さん・・・!」
マドカが徐々に高まる淫猥な感覚に耐えるように、その細く、熱に浮かされた躰で精一杯腕を伸ばし彼を求めると、士度は彼女の手に自らの手を重ね指を絡めた――彼の気持ちが流れ込むようなそんな僅かな行為に煽られるように彼女の熱はさらに上がり――キュッと握り返してくるその頼りない力とは裏腹に、彼女の内側は熱く滾り、滑り、絡みつき――そして士度自身を締め付けてきた。
「ッ・・・マドカ・・・・」
耳元で名を囁かれながら、さらに奥まで潜り込まれ、掻き回され――彼の動きに翻弄される彼女の果芯からは蜜が溢れて零れ出し、二人の肌に筋を残す。
「ああっ・・・!やっ…ア アッッ・・・」
――士度さん・・・・士度さん・・・・
眦に涙を溜めながら、マドカは愛しい人の名を呼び続けた――限りなく近くにいることを確かめるように、何かを願い、乞うように――
士度は惹き寄せられるかのようにマドカの首筋に顔を埋め、桃色に色づく愛らしい耳朶を緩く嬲った。弱い箇所への突然の刺激と身の内を焦がす熔けるような感覚に、マドカは甘い喘ぎ声をあげながら、快楽に引き摺られ遠のこうとする意識を感じる。すると不意に――肌に、髪に伝わる、彼の唇が動く気配。
――マドカ・・・・
士度の熱を帯びた長い指が、汗で頬に張り付いた彼女の髪をそっと流す。
――好きだ・・・・・・どうしようもねぇ・・・・
マドカの大きな瞳が放心したように瞠られ――やがて愛と喜びに昂揚し溢れた涙が頬を伝い、月の淡い灯火の中で煌いた。
音になったのかすら定かではないほど切なげに響いた彼の想いは、マドカの心にどこまでも深く、確かに届き――やがて胸が早鐘を打つ中、彼の熱い吐息を首筋に感じた刹那、彼女は最奥を強く穿たれその背を大きく仰け反らせた――悲鳴を飲み込むかのようなキスと同時に注ぎ込まれた熱を孕んだ迸りは彼女の内壁を打ち、マドカの火照った躰はその飛沫を受ける度に小刻みに震えた。
そして彼女は彼の胸元に甘えるように頭を預けると――彼がその髪に口付ける感触と、自分の痩躯を抱く逞しい腕に愛と安らぎを感じながら身も心も委ね、ゆっくりと眼を瞑った。
絡み合った指を解かぬまま。
彼の優しい眼差しを子守唄のように感じながら。
士度はマドカのしっとりと優しく香る柔肌と、情火に絆された絡み合う二人の熱の余韻を、彼女の髪に顔を埋めながら暫くの間浸るように感じていた――
腕の中で眠る彼女は、とても穏やかで――幸せそうな表情をしている。
――馬鹿な士度さん・・・・
そんな彼女の声と、今日一日の彼女の笑顔を思い出し――士度は和いだ自分の心に苦笑しながら、彼女の温かな躰を抱く腕にもう一度、力を篭めた。
愛しい――
彼女の姿が、想いが――自分に流れ込んでくるたびに芽生えるそんな気持ちをどこか不可思議に――不慣れに好ましく感じながら、士度も眠りに誘われるがまま、瞼を閉じる。
そういえば忘れかけていた心が繋がる喜びを――最初に思い出させてくれたのも
手を取り合い眠る二人の姿を、淡い月の光だけが優しく見守っていた。
Fin.
“月露”は“月夜の雫、月夜の露”と言う意味。
表話“your loving...”の続編&完結版として書いてみました。
二人の互いを想う心を感じ取って頂ければ幸いです。
士度の弱いところや少し彼女に甘える姿がの表現にチャレンジしてみました。
ネタをくださったアナタ様に感謝v