〜 今の僕らの悩み事 〜

       【3】

       銀次の脳裏に、石鹸の匂いが移るくらい(裸で)密着した士度とヘヴンの媚態が勝手に過ぎり、鼻からツ〜と赤いモノが流れてきた。
   
       「・・・子供がいても、士度がいいんだ・・・」

       「あまり感心できませんよぉ・・・・」

       「やっぱりガクガクっでっか!?」

       「・・・遊びなんですか?」

       「そんなにあの“馬”野郎がいいのかよッ!?」

       「イイ男探してるのは分かるけど、ここまで節操がなかったとは、ね。」

       「まぁ、ほどほどにしておかないと・・・・」

         
       〜〜!!違うのよ!!いや、半分は違わないけれど、確かに仕事絡みで士度クンに庇ってもらって、そのせいで士度クンが
       血塗れ泥塗れになっちゃったから、それを見かねてお詫びも兼ねて、近かった自宅のバス・ルームに放り込んで、
       昔の男の服を着せて帰らせた事実はあるけれど!!
       そりゃあ、私だって女ですから彼の鍛え上げられた腹筋や、程よい上腕二頭筋や、彫像のような大円筋にクラッっとキて、
       そそられなかったわけでもないけれど!!―― そーじゃなくて!!

       「―― 〜〜ッ違!!」

       「へぇ〜、あのハーブの石鹸の香りって、ヘヴンさんのものだったんですか!!」

       気がつきませんでしたぁv と、琴音ののん気な声が焦りに焦るヘヴンの声に重なった。
       イイ匂いだったから気になってたんですけれど、私その時パパの膝の上で寝ちゃったから訊きそびれちゃって・・・
       と琴音はペロリと舌を出した。
       
       「父さんに、石鹸貸してくれたってことですか?ありがとうございます。」

       落ち着きを取り戻し言葉も敬語に戻った士音も、あぁ、そうだったんだ、と納得し、疑念を持っているわけでは全くなさそうだ。

       
       ((((((・・・・・やっぱり純粋に子供なんだ。))))))


       父親の仕事の危険な匂いは嗅ぎ取るくせに、ヘヴンと士度との関係を微塵も疑わない双子に、
       ヘヴンが安堵の溜息を漏らし、一同ある意味感嘆したとき――

       「〜〜馬ッ鹿かよ、オメーら!!女が男を部屋に連れ込んでシャワーを浴びさせた後スルことって言ったら一つだろうが!!
        もちろんセック・・・・ガフッ!!」
 
       「子供の前で何口走っているのよ!!」

       卑弥呼に後頭を思いっきり殴られ、蛮がカウンターに沈んだ。

       「〜!!ちょうど端午の節句が近かったら、シャワー貸した後柏餅食べながらちょっとお茶しただけよ!」

       これは本当だ。
       シャワーを貸してそのまま追い出すのもなんだか薄情な感じがしたので、すぐに帰ろうとする士度を茶菓子があるからと引き止めて、
       仕事の話と世間話をした・・・・ヘヴンの事を男としては珍しく色眼鏡越しに見ない彼は、案外良い茶飲み友達であることも事実だ。
       そしてマドカちゃんと双子ちゃんにと言って、柏餅と桜餅を土産に持たせた・・・。

       「あ、パパが鳴門屋の柏餅貰ってきたときだったんですね。あれ美味しかったです!ありがとうございました!」

       琴音の言葉に続けて士音も軽く会釈をする。
       いいのよ〜気にしないで〜・・・、とヘヴンは内心冷や汗を掻きながら、ヒラヒラと手を振った。
       健全な子供たちでなによりだ。・・・・常連組の誤解を解くのが後で大変そうだが。
       カウンター越しに笑師の眼が “ホンマのところ、どうなんや?” とヘヴンに問いかけ、
       ヘヴンはそんな彼を睨みつけながら頭を振り、“やましいことは何も無いんだってば!!” とこれまた無言で返した。
       銀次は端のカウンター席でまだ立ち直れない様子だ。

       「あ、ヘヴンさん、後でその石鹸が売っている所教えてくださいな。
       ママもその時、今日のパパからするハーブの匂いはイイ香りねって言っていたし・・・。」

       「「「「「「「!!?」」」」」」」

       ―― マドカ(嬢)ちゃんにはすでに感づかれているし!・・・・

       旦那から、しかも服からじゃなくて“身体”から、別の石鹸の匂いがして(しかも高級ハーブ)まず疑うことといえば、一つじゃないか・・・
       
       ― 浮気 ―  彼女が昨日情緒不安定だったことの一端もコレにある可能性が大だな・・・
       
       彼女が帰国したらすぐさま、このあらぬ誤解を解かなかれば・・・・

       士度・・・それで余裕だなんて、羨ましすぎるよ・・・・

       大人組が呆れや困惑や羨望の溜息を吐きながら脱力する姿に、士音と琴音はの頭の中には“?”マークが浮かんでいた。

       「・・・・しかしよぉ、オメーらの親父も、お騒がせ男だよな。子供(ガキ)どもには余計な心配させるは、
        嬢ちゃんにはあらぬ誤解(あったかもしれねーけど)を与えるわで、迂闊で残念で、ホンッット、だよな!」

       だからいつまでたっても猿マワシなんだよ、と訳の分からない理屈を付け加えて、蛮はカカカと笑った。
       その言葉に、士音と琴音の顔色が再び変わる。ヤバイ、と他の大人たちは顔を顰めた。

       「・・・・・お騒がせとか母さんに誤解とか迂闊とか残念とか、とか〜〜黙って聞いていればアンタなんだよ!!
        父さんの悪口ばかり言いやがって!!」

       擬態かますぞ!!と蛮の罵詈雑言に士音はキレて食ってかかってきた。琴音も信じられない、と言った顔で蛮を見る。
       おう、やってみろや!!と蛮は士音を挑発し、よせばいいのに更にいらぬ言葉を吐く。

       「だいたい、下半身で仕事取り巻くっている上に、三食昼寝付きでゆっくり金貯められるってゆーのが昔ッから気に入らなかったんだよ!
        いつもいつも俺らの仕事横取りするわ、女には興味ありませんって顔してるくせして女は向こうから寄ってくるわ、
        さっさと美人で金持ちな嫁さん貰って所帯もって挙句の果てにはこんなデカイガキ作るって生活安定!?
        ・・・・オメーの親父こそ何なんだよ!!」

       ((((((何なんだよって・・・・あんた、それ、ひがみにしか聞こえませんから・・・・))))))

       大人組は蛮の大人気ない台詞に肩を落とし、銀次は「それ以上言うと僕らが惨めになるからやめよーよ・・・」と、
       ダーと涙を流しながら蛮の服の裾を引っ張った。
       一方士音は、蛮の無理矢理な理屈や意味の分からない(下半身で仕事とか)言葉など、理解できないこともあったが、
       とにかく士度が、自分の父親がコケにされていることだけは、分かった。

       「テメェ!!上等だ!!前々からアンタは父さんを悪く言いやがって変なあだ名までつけて〜〜気に入らなかったんだよ!!」

       「ヘッ!オマエもここらで大人からの洗礼ってやつを受けるべきだよな!!」

       激昂した蛮と小学四年生の少年はカウンター席から勢いよく立ち上がると、即座に戦闘モードに入った。

       「ば、蛮ちゃん、マジで!?」「ちょ、ちょっとここではマズイ・・・!!」「あんた、子供相手に何ムキになってるのよ!」「やめときや〜!」
       この子らに怪我させたら士度はんブチキレるで―!と皆が止める声はもはや蛮の耳にも士音の耳にも入っていない。

       「百獣擬態、餓狼・・・」

       「(かなり手加減した)スネークバイッ・・・!?」

       「士音ちゃん!ダメェ!!」

       ゴンッ! ゲシッ! ガッシャーーン・・・

       二人がお互いの必殺技を繰り出そうとした正にその時・・・。
       
       士音の頭上からゲンコツが振ってきて、士音は床に撃沈した。
       蛮の鳩尾には華麗な回し蹴りがクリティカルヒットして、蛇咬の拳の勢いはそらされ、カウンターの端とティーカップを数脚破壊する・・・。

       「・・・何が餓狼擬だ、馬鹿野郎。」

       「パパ!!」

       「士度!」

       士音に派手な音がする拳骨を見舞った士度は呆れたようにそう言うと、マスター、ブレンド、といつもの注文をした。
       ・・・・いらっしゃい、と波児は苦笑いをしながら、豆を取り出し始める。
       
       「なかなかいい回し蹴りだったぞ、琴音。」

       士度が琴音の頭を優しく撫でながら褒めてやると、ホント!?と琴音は破顔して、士度に抱きついて甘えた。

       「ッテェ〜・・・なんで琴音の回し蹴りはよくって、俺の擬態はダメなんだよ、父さん!!」

       痛む頭を擦りながら士音が抗議すると、士音の眼を見据えながら士度が答える。
       
       「擬態を出すときは、時・場所・状況をよく考えろと言っておいたはずだ、士音。
        ここで擬態なんぞ出したら、この喫茶店は目茶目茶だぞ?そうしたら、コイツのようにたちまち借金塗れだ。
        それに、まだ不完全な餓狼擬はしばらく出すな。どうせ繰り出すならこの間マスターした猫か鹿王にしろ。」

       士度の至極最もな(?)諌めに士音は、しまった、というような顔をすると、「・・・・わかりました、スミマセン。」と愁傷に項垂れた。
       分かればいいんだ、と士度は士音の頭をポンッと撫でてやる。そうされると士音は少し照れくさそうだ。
       あぁ、ちゃんとお父さんしてるんだぁ・・・・とその親子の会話に常連組の頬は自然と緩む。
       ほい、ブレンド、お待ちどうさん、と波児は自慢の珈琲を士度に差し出した。

       「〜〜!!オイッ!普通『士音ちゃん!ダメェ!!』とか叫んだら、兄貴の方に蹴りをいれるだろうが!?」

       何しやがる、この小娘!と床に倒れた際強打した腰を擦りながら蛮が吠えた。
       ・・・・私が士音ちゃんにそんなことするわけないじゃない、と琴音はプイッと顔ソッポを向くと、士度の影に隠れる。
       オマエ、こいつ等にどういう教育を・・・と、蛮が今度はその刃を士度に向けようとしたとき、
 
       「うわぁ、蛮さん、また凄いことになりそうですよぉ・・・」
 
       夏実が電卓片手に頭を掻いた。
 
       「ヘレンド、ブルーフルーテッド、エルメス、マイセン、ロスチャイルドバード・・・・」

       レナが欠片を拾い集めながら無残にも散った珈琲カップのブランド名を挙げていく。
       見ると、珈琲カップを並べてある棚の方にも散ったカウンターの破片による被害があったようで、いくつか欠けたカップが倒れていた。

       「・・・・で、カウンターの修理費用を足すと、ざっと見積もって・・・・157万?宜しくお願いしますv」

       「・・・全財産出して、15万の借金です、蛮ちゃん・・・」

       アゥゥ〜と垂れ銀次が涙の中に溺れていた。
       
       「〜!?オイ、ちょっと待て、これはコイツの娘が俺に蹴りをいれたから・・・」

       「ほぅ、小学四年生の回し蹴りをいい大人が避けられず、自分の技の加減もできなかった結果を、
        琴音のせいにする気なのか?オメーは?」

       感心できねぇな、と額に青筋を浮かべながら士度は蛮を一瞥する。
 
       「・・・・アンタの負けよ。」

       ご愁傷様、と卑弥呼が石化する蛮の肩を気の毒そうに叩いた。
       
       「・・・・それにしても、やけに早く会議が終ったんじゃない?」

       まだお昼をちょっと過ぎたところよ、とヘヴンが時計を見た。

       「・・・・蜘郎のJr.(ジュニア)が余計なこと言いやがって、うちの若い連中と揉めたんだ。
        森人が平身低頭で謝ってきたが、双方の熱を冷ます為に明日に延期になった。」

       ― どうして、魔里人の各グループの代表は、若人か女ばかりなのだ・・・―

       もっと経験がある者もいなければ、話にならない場合もある、と霧人が冒頭に言ってしまったのだ。
       
       ― お前たちが殺しておいて、何を言うか!―

       父親の顔を知ることがなかった、秋木一派の若人の一人がそう叫んで初めて霧人は己の失言に気がついたようだ。
       疑念と殺意がその場に漂った。劉邦の怒りの波動が強くなるのを士度は感じた。
       結局、士度の提案を湖柳が即座にのんだことで、場は一応収まり、明日仕切りなおすということで今日の集いは終った。
       その後の魔里人のみでの会議で、いきり立つ若人の気を沈め、今後を説くのに骨が折れたが・・・。
       
       まだまだ、これからだな・・・と士度は珈琲カップ片手に苦笑した。
       なんだ、アイツまだ頭の中身は坊ちゃんなんだ、と卑弥呼が呟けば、
       ヘヴンも、いろいろと士度クンも大変そうね、と心配そうな眼差しを向ける。
       すると、士度がヘヴンに向かってスッと紙袋を差し出した。

       「・・・・?何、これ?」

       「何って・・・この間借りた服だよ。クリーニングに出しておいた。」

       「!!」

       「・・・・え?お泊りやったんかいな?」

       元に戻った話に、すかさず笑師が食らいついてくる。
       カウンターで早速皿洗いのバイトを始めていた蛮と銀次が、やっぱり・・・・というような顔をした。
       
       「何言ってんだ、オメーは。泥塗れだったからシャワーと服を借りたんだよ。
        あぁ、あとマドカがあの時の石鹸の仕入先聞きたがっていたから、アイツが帰国したら教えてやってくれ。」

       匂いからして結構高い石鹸だって、マドカ言ってたぜ、と世間話でもするように士度はさらっと言ってのけた。
       大人組はその発言に虚を衝かれる。

       「え・・・?アンタ、仲介屋の部屋でシャワー浴びたこと、奥さんに言ったの?」
 
       卑弥呼が確認するように訊いてきた。

       「?あぁ、そこのバスルームで使った石鹸の匂いが気になったみたいだったから、説明してさ。何だ?」

       ― 奥さんが気になったポイントはソレではないと思います・・・―

       ・・・・天然もいいところだ、と一同は今日何度目かのため息を吐く。
       まぁ、士度がこういう性格だから、マドカも安心半分、不安半分ってところなんだろうな、大人組は思った。
       士度が浮気をしない、プライベートに関しては家族に物事を隠さない、という性格からくる安心と、
       マドカ以外の女性を性の対象として見ない淡白な性格が逆効果を生み、女の方から彼に寄ってきてしまうという不安―
       (魔里人の幹部の中にも多く女性が含まれているらしいし。)

       「しかし・・・今日は何でまたお前たちは二人だけでココに来たんだ?」

       珍しいこともあるもんだ、と士度は双子を見た。二人は士度の両脇で黙って俯いている。
       
       「・・・ここの味が懐かしくなったんだよな。」

       波児が豆を挽きながら士音と琴音の方を見た。

       「・・・そういうことです。」

       波児を見つめ、少し罰が悪そうな顔をしながら士音は小声で返事をした。

       「・・・・そうか。まぁ、いいさ。さて、帰るぞ、お前たち。」

       自分と、子供たちの分の料金をカウンターに置くと、士度は立ち上がって自分の両脇に立っていた双子を促した。
       
       「笑師、暇ならウチで昼飯でも喰っていくか?」

       その代わりこいつ等のお守と、一杯俺に付き合えよ、と言う士度からの久し振りのお誘いに、
       「ええんかいな!喜んでv」と笑師は嬉々として腰を浮かせた。
       
       「銀次、オメーは今忙しそうだからまた今度な。あ、言うのを忘れてたがオメーたちのてんとう虫、さっきレッカーで・・・」

       「!!士度!金貸して――ッ痛!何すんだよ、蛮ちゃん!」

       「だからオメーは毎度毎度商売敵に借金しようとしてるんじゃねぇ!!」

       「・・・・だから君は毎度毎度皿を割るんじゃないよ。」

       蛮と銀次と波児のボケ突込みが始まった。そんな光景に、相変わらずだな、と苦笑しながら士度は踵を返した。
 
       「皆さん、お騒がせしました。」

       と、琴音がペコリと会釈し、士音も目礼する。

       「楽しかったよ、またいつでもおいで。」波児が穏やかな声で二人に言った。
 
       「今度はランチでも一緒しましょv」「お母さんによろしく。」とヘヴンが手を振り、卑弥呼もウィンクする。
       「勝負は預けとくぜ、チビ猿マワシ!」と蛮が士音を指差せば、士音はフンッと鼻を鳴らした。
   
       「士音くん、琴音ちゃん!」出て行こうとする二人を銀次が慌てて呼びかける。

       「・・・・大丈夫だよ、銀次さん。」

       士音は振り向きざまにそう言うと、少し寂しげに笑って、一番先にHONKY TONKの外へ出た。
       そんな息子の表情を見た後、士度は「じゃあな、銀次、またな。」と銀次に声をかけた。
       銀次に向けられたその眼差しは穏やかで・・・・。
       ―― 士度は、もしかしたら、知っているのかもしれない・・・何故自分の子供たちがここを訪れたのかを。
       最後にスッと眇められた士度の語るような眼を見て、何故だか銀次はそう感じた。
       
       「パパ!ダッツに寄ってアップルミルクティーシナモンアイスをデザートに買っていきましょ!」
   
       そう琴音に手を引かれながら士度は扉の向こうに消えて行った。
       「いや、今はマンゴーココナッツヘーゼルチョコチップミントが旬らしいで〜琴音ちゃんv」と笑師の弾む声が外から聞こえてくる。
       「どーでもいいけど、並ぶのは嫌だからな。」士音がウンザリした声で答えていた。
       
 
       「お父さん、だからね。」
       

       遠ざかる賑やかな声を追いながら、波児が誰に言うでもなく呟いた。

       「ちゃんと見て、分かってるんだよ、子供たちのこと。」  

       良いパパみたいですね・・・と夏実が波児を見ると、何だか、羨ましいな・・・とレナが俯いて目元を拭った。
       
       「あの子たちには、幸せになってもらいたいな・・・。」

       銀次がシンクを流れていく水を見つめながら言った。そんな彼の言葉に、ヘヴンと卑弥呼の眼も揺れる。
       そう、自分たちが持ち得なかった幸せな家庭で、あの双子には真っ直ぐに育って欲しい・・・・。

       「お袋が嬢ちゃんで、親父が猿マワシだろ?心配することなんて、何もねーって・・・・。」

       アイツの“馬”擬態モード以外にはな!と蛮はチラリとヘヴンを見た。
       もー何もないんだってば・・・とヘヴンもちょっぴり食傷気味だ。



       さて、皆さん、炒飯でよければ作りますよ〜と徐に夏実の元気な声が響いた。
       HONKY TONKのいつもの昼下がり。
       小さな台風たちは、彼らの心に新しい風を残して、足早に去って行った。
       波児は士音と琴音が使ったマグカップを、大事そうに棚に飾った。
       空色と桜色の対になったすこし大きめのカップは、深い蒼の珈琲カップと薄い白磁の可憐なティーカップの間に挟まれて、
       笑っているかのように輝いていた。


 
       今の僕らの悩み事 ― ちょっとほろ苦くて、少し不透明な大人の世界。
                     それでも広い背中を追いかけながら、少しずつ覗いていこうと、僕らは思った。




Fin.


 



      シリアスと、それに笑いも少し・・・と思って書いてみましたがいかがだったでしょうか?
        初パラレルSS双子編。士音と琴音の成長っぷり、これからも少しずつ書き留めていきたいです。
        この双子はノッテくると楽しそうです(笑)勝手にシリーズ化していきたいと思っています。
        次回の双子話にはマドカママも登場させて・・・妄想暴走中;

      魔里人幹部話も・・・いつか書いてみたいかも。