our Secret Garden-2  〜秋に憩う人〜

都内でも秋の風が舞い始め、
夏の湿度も和らいできたある日の夕暮れどき。
ピンポーン・・・
音羽邸のチャイムが鳴った。
どちら様でしょうか・・・?
応対に出た執事の前には、
褐色の長い髪を後ろで束ね、紺色のスーツをきっちり着込み、
白いワイシャツに臙脂色のネクタイを寸部の狂いもなく締めた、
色白で吊り目の青年が立っていた。

「あの、私、こういうものですが・・・・」

青年の白く細い指が名前だけ書かれた名刺を差し出した。

尾崎おざき・・・マモル・・・様?」

「尾崎、もりと申します。」

そう自分の名前を訂正した青年の顔色はどこか具合が悪そうに青白い。

「私、士度様に懇意にしていただいているあるじからの言伝ことづてを携え、参上いたしました。」

細く、男性にしては少し高い小さな声で青年は述べた。

「・・・あいにく、私どもの主は只今外出しておりまして・・・」

執事からの言葉を聞いた青年の眉が残念そうに下がった。

「それでは、奥方様か士音様か琴音様はいらっしゃいますでしょうか・・・?」

「マドカ様は士度様とご一緒でして。お子様方もまだ学校でらっしゃいます。皆様、もう暫くしたら戻られるとは思いますが・・・」

青年はますます残念そうな顔をした。

「それでしたら、あの・・・・待たせていただいても宜しいでしょうか?言伝を伝えぬまま、帰るわけには行かないのです・・・」

こうして青年は執事に訝しがられながらも屋敷の中へ入ることができ、ティールームへ通された。
彼のスーツから僅かだが不思議な香りがすることに執事は気がついた。

「只今、お飲み物をお持ちいたします。珈琲になさいますか、それとも紅茶の方がお好みですか?」

「・・・いえ、水を下さい。二杯ばかり。」

「・・・・レモンかハーブをお付けいたしましょうか?」

「・・・・いいえ、ただの水で結構です。」

スミマセン・・・ティールームのソファに腰掛けながら、青年は律儀に頭を下げた。
ごゆっくり、どうぞ・・・・執事は青年に違和感を感じたまま頭を下げて、とりあえずその場を辞した。





都会は・・・好きになれそうにもない。

ソファに身を沈めながら青年は冷や汗を拭った。

“新幹線”というものから眺める景色は楽しかったが、駅から一歩外へ出てみると・・・・そこには混沌とした世界が広がっていた。
背が高く、眩暈がするような建物。
酸っぱい臭いがする空気。
耳をつんざく騒音。
押し合いへし合い流れていく人の波。
灰色の空。
曇った緑。

自分の眼に映る何もかもが新しく、そして不快なものだった。
水が・・・欲しかった。
“自動販売機”というもので飲み物が買えることは知っていた。
コインを入れてボタンを押すと・・・赤い缶出てきた。
その中に入っていた液体は酸味があって甘くて・・・とてもじゃないが飲めたものではなかった。
ボタンの上に並んでいるものは中身が見えない缶ばかり。
水を買うのは諦めた。
噴水の水は飲んではいけないと先輩達から聞いていた。
士度様のところでご相伴にあずかろうと思い、とりあえず“タクシー”という乗り物を探した。
駅の前に腐るほど居た。
主から渡されたメモを渡すを、運転手は快く承諾し、冬木邸まで連れて来てくれた。
車の中で渦巻いている冷たい空調に気分が悪くなった。
降りる間際にお札を渡し、釣りはいらないというと彼は大層喜んだ。
やはり“金”は彼らにとってあればあるほどいいものらしい・・・・。

士度様がお住まいのところは・・・まるで都会に突如として現れた泉のようだった。
塀の向こう側から緑のいい匂いがした。
小鳥たちの楽しそうなさえずりが聞こえた。
きっと太陽の光さえも、あの庭の中では違って輝いていることだろう・・・・。
期待に胸を膨らまし、教わった通りに玄関先のボタンを押すと、
見知らぬ男が応対に出た・・・・。


青年はティールームの窓の向こうにある庭へ目を移した。
動物達が其処此処で気持ち良さげに寝そべったり、追いかけっこをしたりしている。
木々の紅葉間近の葉がそよそよと秋風に揺れていた。
不意に・・・クーラーの空気が青年に纏わりついてきた。
青年はまた気分が悪くなった。
――都会の建物の中では、妙な空気が流れていて、慣れていないと気分が悪くなる――
教わった通りだ。
額に浮かぶ脂汗をスーツの袖で拭いながら青年は立ち上がると、新鮮な空気を求めて
フラフラと庭へと続く扉の方へ向かっていった。
そして一歩、庭へ足を踏み入れる。
優しい風が青年の頬を撫でると、緊張の絃が切れたのか、彼は激しい眩暈に襲われた。
動物達の視線が瞬時に青年に集まる。
彼は意識を飛ばした。




「失礼致します・・・」

執事がミネラルウォーターとコップをトレイに乗せて再びティールームへ戻ってみると、
そこに客人の姿は無く。

(・・・っまさか、庭に・・・!?)

たいていの客人はあのライオンの姿を見たら庭に出ようなどとは思わないはずなのだが・・・
しかし庭へと続く扉は開いている。
執事はトレイを片手に持ったまま慌てて庭へと飛び出した。
すると柔らかいモノが足先に当たった・・・・。

執事の足元では一匹の見慣れぬ狐が伸びていた。
舌をダランと出して、ハアハアと苦しそうに息をしながら腹ばいになっている。
冬木邸の動物達が心配そうにその狐を眺めたり突いたりしていた。
こんな都会に狐が一匹・・・いったいどこから入ったのか、それよりあの尾崎とかいう客人はどこへいったのか?
執事の木佐は慌てて庭を見渡したが、人の気配は其処には無く・・・。

ワンッ・・・・!

一匹のレトリバーが執事に向かって吠えた。
見るとその視線は彼が持ってきたミネラルウォーターのペットボトルの方へと向けられている。
執事は気付いたようにコップへ水注ぐと、その斃れ伏している狐の鼻先へ置いた。
すると狐の鼻がヒクリッ・・・と動き、その動物は弾かれたようにガバリッと起き上がると、
コップに入っている水を長い舌をもって恐ろしい勢いで飲み始めた。
そしてその舌が水まで届かなくなったとき、あろうことかその狐は前脚でコップを持ち上げ、
後ろ足で立つとグイッとその水を飲み干したのだ。
しかし、最後の一滴が喉を潤した瞬間・・・狐は我に還ったようだった。
呆気にとられながらその光景を見て石化している執事を、狐はギクシャクとバツが悪そうに見つめた。
狐は本当に申し訳なさそうな顔をしていた。
“驚かせてごめんなさい”
そう言っているようにも見えた。
執事は頭が働かなかった。
お客様が消えて、どこからともなく現れた狐が・・・・まるで人間のように水を飲んで・・・。
狐は執事の足元にコトン・・・と空になったコップを置くと、ペコリ・・・とお辞儀をした。
執事はますます目を丸くしながらも、空になったコップを目の前にして、反射的に残りの水を注いでしまった。
すると狐はパッ・・と顔を上げ、執事を見た。
狐と目が合い、執事はギクリとする。
狐は目を細め・・・・“笑った”。
笑った・・・・?
狐が・・・?
執事は悪い夢を見ているようだった。
嫌な汗が背中を伝った。
目の前にいる狐は、コップを再び両前脚で持つと、嬉しそうに水を飲んでいる。
眼下で繰り広げられている光景にすっかり混乱してしまって動くことができない執事の耳に、

「「ただいま〜!!」」

という元気な声が届いた。
執事はその声に我に還り、あえて狐を見ようとはしないで脱兎の如くその場を後にした。
客人からした不思議な香りが、その狐からもしたなんてことは、考えたくもなかった。



「お、お帰りなさいませ・・・お坊ちゃま、お嬢様・・・」


息を乱しながら双子を迎える執事の珍しい姿に、士音と琴音の顔に疑問符が浮かんだ。
先に二人を迎えていたメイドも、上司の滅多に見ない落ち着かない表情に不思議そうな顔をする。

「木佐さん、どうしたの?顔色悪いわよ・・・?」

琴音が心配そうに首を傾げた。

「いえ・・・それより、先程・・・尾崎守様というお客様が皆様を訪ねていらっしゃいまして・・・・」

「尾崎・・・守・・・?――守!!モリが来てんのか!?」

士音の顔がパッと華やいだ。
“え!!ドコにいるの・・・!?”
琴音も嬉しそうに木佐に纏わりついた。

「あの・・・・それが・・・・消えてしまわれて・・・・庭に・・・狐が・・・・」

「――!!それだ!!」

士音は叫ぶとそのままティールームの方へ駆けていった。

「柚木さん、おやつはお庭にお願いねv」

琴音はメイドに向かってそういいながら、嬉々として士音の後を追う。

一方執事は脱力したように階段に座り込んでしまった。
事情を飲み込めてないメイドが心配そうに彼の顔を覗き込んだ。

「あの・・・大丈夫ですか・・・?」

執事は彼にしては珍しく、仕事中であるにもかかわらずタイを緩めた。

「大丈夫・・・です。すみませんが、水を一杯・・・・」

くれませんか――?

執事が枯れた声でそう言ったとき、士度とマドカが帰って来た。





「守!お前、一人・・・いや、一匹でよくこれたなぁ・・・!」

士音の感嘆の声が庭に木霊した。

<いやいや・・・冬木邸ココへ着いた途端、大失態をやらかしまして・・・・>

“モリ”と呼ばれた狐は恥ずかしそうに前脚で顔を掻いた。

「木佐さんにばれそうになったの?あ、もうバレちゃった?いいわよ、なんとかなるわよv」

琴音は暢気なことをいいながら、守のフサフサした尻尾を撫でている。

「まったく・・・執事が今までに無く蒼い顔してたぜ?」

そう言いながら士度がティールームに続く扉から現れたので、庭は一気に喜色に染まった。
彼の隣にいるマドカもクスクスと笑っている。

<おお、士度様!お待ち申し上げておりました・・・!士度様の下僕は何とも躾が良く・・・言伝係の我如きにまで水を注いでくださいましたぞ・・・!>

狐は士度とマドカにペコペコと会釈を繰り返しながら、弾んだ声でそう述べた。

「お前、もうちょと修行が必要なようだな・・・まぁいい。幸庵老が何か?」

士度とマドカは庭の大樹の下へ腰を降ろした。

<はい、士度様!今年は里の“裏庭”の紅葉がそれはそれは見事で・・・・栗をはじめとする秋の木の実も大豊作。
つきましては、士度様及び奥方様やお子様方に紅葉狩なんぞいかがかと幸庵様はお考えで。
金木犀の香りも今年は格別で、マドカ様も存分にお楽しみになることができると仰せです。
明日は丁度満月、晴れた夜空に名月が浮かぶであろうと月詠み狐達は言っております。
よい木天蓼マタタビ酒もできましてな。
夜は士度様とマドカ様と月見酒に興じたいと・・・・できればマドカ様の弦楽器の音を肴に所望したいとのことです。>


「あら、楽しそうじゃありませんか・・・!」

マドカが満面の笑顔で士度に同意を求めた。
木天蓼酒に心が躍っているのは明白だ・・・そんな妻に士度は苦笑しながらも“そうだな・・・”と呟く。

「父さん、俺も行きたい!春よりは体術の腕上げたってこと、狐達あいつらに見せてやるんだ!」

「琴音も行きたいわ!木の実を沢山集めてきて、ママやメイドさんたちとお菓子を作るの!」

「・・・・あの様子だと木佐さんは明日一日休養をとった方が良さそうだしな。
よし、明日、朝一で里に行くぞ。お前ら、寝坊するなよ?」

士度の言葉に妻子から歓声が上がった。

<ようこざいました・・・!あ、“裏庭”とはいえ、通行料の油揚げをお忘れなく、士度様!>

新米狐の守が小躍りしながら付け加えた。

一方エントランスでは――
トレイに乗せておいたはずの名刺が見当たらず、代わりに大きな木の葉を目の前にした執事の木佐が一人頭を抱えていた。


そして翌朝―― 一家は小旅行へと出掛けていった。












「わぁ・・・!凄いわ!!ママ、ママ!!行きましょ・・・!!」

“裏庭”へ入るや否や、琴音はマドカの手を引っ張って紅葉の絨毯の上に駆け下りていった。
そして赤と黄色の落ち葉を掬い、マドカにかけてじゃれついた。

「ママ、ここのお空の色はね、紅葉色に染まって真っ赤なの・・・!まだお昼過ぎなのに・・・もう秋の夕焼けの色よ!
足元にはその紅と・・・お月様の黄色の落ち葉で一杯よ・・・!
ほら・・・もみじがヒラヒラとママのところまで落ちてきて、ママの烏色の髪に良く映えて奇麗だわ・・!
ねぇ、まだ新しい椛って・・・柔らかくてとても肌触りがいいのね・・・!」

「素敵ね、琴音・・・!いろんな世界が入ってくるから母様、目がまわりそうよ・・・・!」

琴音や・・・・そして士音や愛する夫も、目の前に広がる世界の光景や色を、
いつもこうやってマドカに教えてくれる。そしてまた一つの新しい世界をマドカにもたらしてくれるのだ。
家族の声が、マドカに未知なるものに触れさせ、感じさせ、そして・・・“彩”を――“見せて”くれる。
そしてマドカはそれを音にする――
その声に導かれるままに、マドカの漆黒の眼に映る景色の素晴らしさと愛しさと――それをもたらしてくれる声に感謝を込めて。
故に彼女が奏でる音色は歳を経るごとに、より一層の深みと、柔らかさと、そして心に響く安らぎを醸し出し、衰えることを知らなかった。



「今日こそは負けネェぞ!ガクケイリョウリク! 」

四匹の若い金・銀・灰・黒狐を前に、士音は気合を入れた。

<全く・・・>

<我々に勝とうなんて・・・>

<十年早いぞ?>

<士音!>

狐達は次々と人間へ変化し、心底楽しそうな笑みを浮かべながら士音を取り囲んだ。

「うるさい!これから背だってまだ伸びるし、俺はもっと強くなる!お前達なんかすぐに追い越してやるさ!」

<ほう・・・?>

<それじゃあ、今日は初めに・・・>

<向こうの丘まで競争だ・・・!>

<我々について来られるか?士音!>

「望むところだ!守、お前も行くぞ・・・!」

<えぇ!!私もですか・・・!?>

士度の目の前から息子と五匹の若狐達が風のように駆けていった。

<全く・・・皆、元気がよいのお・・・>

表の庭とこの“裏庭”を治める白狐の大狐、幸庵老が士度の傍らで目を細めた。
士度も苦笑すると、彼岸花に囲まれた椛降る野に腰を降ろし、紅い椛の並木道の中で舞うように戯れている妻と娘の姿を愛しそうに見つめた。
マドカに呼ばれて足元にいたシベリウスが彼女の元へ走って行った。
どこからか漂う金木犀の香りが、士度の心に休息を促した。

<大分・・・疲れているようじゃが、士度?>

土産の油揚げを食みながら幸庵は穏やかに問うた。

「そうか・・・?自分では・・・気がつかねぇものなのかもな・・・」

新宿の空気とは明らかに違う、澄んだ命の流れを吸い込むように、士度は大きく深呼吸をした。

<春先にも少し感じたものでな・・・・。
お前さんは魔里人の長としてよき働きをしていると、方々から聞いておる。
それに以前よりはマシになったとはいえ、鬼里人との問題も未だ易からぬということもな。
鬼魔羅も時々我儘を言うであろう?
加えてお前さんは夫であり、父であり・・・おぉ、“副業”もまだ続けておるのか?
そんなことでは身も心も休まるまいて。>

――だから今宵は、ゆっくりしていきなされ・・・・我らがお主に良い“気”を与えてやろう・・・・――

「だから・・・・呼んでくれたのか。ありがとな・・・・」

――此処にいると確かに・・・身も心も洗われそうだ・・・――

士度は幸庵老の柔らかな喉を掻いてやりながら、ポツリ・・・と礼を言った。

<我らとお前さんの仲じゃ・・・礼には及ぶまいて。>

白狐の毛並み豊かな九つの尾が、フワリ・・・・と気持ちよさげに揺れた。


マドカがシベリウスを伴って戻ってきた。
そしてゆっくりと士度の隣へ腰を降ろす。
シベリウスもゴロン、と傍らに寝そべった。

「琴音はどうした?」

士度は彼女の肩に手をやるとゆっくりと自分の方へと引き寄せた。

女狐おんなのこ達と秋の実りを獲りに・・・今晩のお宿の眷属の方が栗御飯を作ってくださるんですって・・・」

士度の肩口に甘えるように頬を寄せると、マドカは士度を見上げた。
いつもとは少し違う、彼の気配。

「マドカ・・・・」

「はい。」

「少しだけ・・・傍に居てくれねぇか・・・?」

小さな微笑がマドカの口元を飾った。

「私はいつも、ずっと・・・・士度さんの傍にいますよ・・・?」

そして彼女は彼の頭をそっと引き寄せると、自分の膝へと導いた。
士度も素直にその膝枕に落ち着く。

「あぁ・・・そうだったな・・・」

心の底からの安堵の声が、マドカの耳に届いた。
そして士度かれは静かに目を瞑る。
マドカは士度の髪を優しく撫でると、空いた片手で士度の手を取り、
その柔らかな白く細い指を、彼の長く、逞しい指に絡めた。


「愛してるわ・・・・あなた・・・・」


マドカは士度の唇に指を滑らせながら、恍惚とした表情で言の葉を紡いだ。
士度がそっと、彼女の手を握り返してきた。
花香に綻んだような笑顔が、マドカの貌を彩った。

椛が二人を抱くように周りを朱に染めた。
幸庵老とシベリウスは大欠伸をして、投げ出されている士度の膝を枕にして微睡み始めた。
彼岸花が秋風に揺れ、時折黄金色をした落ち葉が野を走る静寂の中、
マドカは指先に触れる士度の規則正しい寝息に浩然たる幸福を感じていた。
遠く、士音の掛け声や琴音の軽やかな声が聞こえる――


――このまま、ときが止まればいいのに・・・・――


望まざることが一瞬マドカの脳裏を過ぎったが、士度が彼女の膝の上で少し身じろぎをしたことでその思考は熔けて消える。

士音は狐たちとはしゃぎすぎて・・・きっと疲れて戻ってくるわ。
琴音は栗と通草アケビヒシ茱萸グミカヤ ・・・・沢山のお土産を手に喜び勇んで帰って来る。
狐達は趣向を凝らし、月下の舞を興じるのね。
私は今宵、あなたの為に・・・・月夜の小夜曲セレナーデを奏でましょう。
するとあなたは・・・今は穏やかに眠るその顔に、私に向けて安らぎの笑顔を湛えてくれることでしょう。

そして私の心はきっと、この椛色に染まるのね・・・・。



紅葉は深々と静かに二人に降り注いだ。
煌々と広がる金木犀の香りが、その場に居る者達を慈しむかのように包んだ。

マドカは薫る心地良い秋風と、寄り添うような士度の気配に身を浸しながら、
秋の高い空を感じていた。





Fin.





月窟/1800のゲッター鈴美様からのキリリク、『“our Secret Garden”の中で士度とマドカが行った隠れ里に今度は双子と一緒に訪れる話』でした。
リクから大分経ってしまいましたが、何とか秋には間に合わすことができました・・・;;平にご容赦を・・・!
双子は“春の庭”には既に何度か行っていて、馴染みの狐達もいるという裏設定。
“守”はまだまだ若年狐なので、修行も兼ねて伝言役を任されたと・・・いうことです。
リク更新は亀が続きますが、これからもお楽しみいただければ幸いです・・・!
鈴美様、素敵リクをありがとうございました。またの挑戦をお待ち致しております・・・!