【6】


「痛ッ・・・・・」

冷やされたタオルをどけてみると、ジンジンと痛む箇所はまだ結構腫れていた。

「・・・・自業自得です。」

換えの氷を持ってきた執事の、いつになく冷たい声が、耳に痛かった。

「くそッ・・・・何だってあんなに頑丈なんだ・・・・!」

音羽氏は赤くなった拳を再びタオルで隠しながら毒づいた。

「・・・・・それだけが取柄なんでね。」

居間のテーブルを挟んで向かい側に座る青年が、ムッツリと答えた。
唇の端には、先ほどメイドが嫌がる彼に半ば無理やり貼り付けた白い絆創膏が貼ってあった。

「“それだけ”しか取柄が無いと、娘のボーイフレンドとして認めるわけには・・・・痛ッ・・・!!木佐君、さっきから何だね!?君は・・・!!」

「士度様は謙遜なさっているのです・・・!!旦那様こそ何ですか、先程から大人気ないことばかり・・・!!」

――いつもの旦那様らしくないですよ・・・!――執事がご主人の手に湿布薬を貼ったあと、少しきつめに包帯を巻いたのだ。
執事のもっともな言葉に、音羽氏はぐうの音もでない。彼は渋々と向かいにいる青年に目を向けた。

「・・・いや、確かに私も大人気がなかったよ・・・そのことは君にも詫びよう・・・しかし、<子供がえり>をしている娘に、あまり無茶なことは・・・」

「マドカは、“父様”の熱を計ろうとしてただけだ・・・無茶なのはいきなり怒鳴り込んで来て、娘を父親から引き離そうとするアンタの方だろう・・・」

士度の溜息交じりの疲れた声が、音羽氏の神経を再び逆撫でしかけた。しかし、士度が殴られた後、パニックを起こしかけたマドカの姿を思い出し、音羽氏は辛うじて怒りを留める。あの後マドカは湯浴みをする為、泣きながらメイドに連れていかれた。

「・・・・!!父親からって・・・・だいたい、マドカは何故君と私を取り違えたりしているのだ・・・!?気配も、声も、似ても似つかないはずだ・・・!」

「・・・そんなこと、こっちが聞きてぇくれぇだよ!!アンタがマドカあいつの傍にいてやらねぇからじゃねぇのか・・・!?」

「〜〜!!こちらの家庭の事情に口を挟まないでもらいたい!!マドカは仕事で私がいない時も、今までしっかりやってこれた子だ・・・!!」

「だからって、子供ガキの頃からアイツを使用人に預けて放りっぱなしって、一体どういう了見だ!?」

「放りっぱなしだと!?私は人並み以上に愛情を注いで彼女を育てたつもりだ!!だいたい何でそんなことが他人の君に分かるというのかね・・・!!」


徐々にエスカレートしはじめた士度と音羽氏の水掛け論に、執事とメイドは居間の隅で待機することで静観を決め込んだ。
いつもは冷静沈着な二人の、こんなにも興奮した姿を見るのは・・・初めてだったり、久し振りだったりする――
使用人達がそんなことを思っている間にも、二人の言い合いは尚も続いた。

「今のマドカを見てれば嫌でも分かるさ・・・!だったらどうして子供ガキの頃のアイツは、あんなにも懸命に親父の存在を求めているんだ・・・!?」

「子供が父親の存在を求めて、何が悪い・・・!!ましてや母親を亡くした直後なら尚更だろう・・・!!」

「〜〜!!そんなときもアンタはマドカを置いて仕事にかまけてたって言うのか!!」

「話を摩り替えないでくれたまえ!!今、私が問題にしているのは、“何故君が父親として認識されてしまっているか”だ!!」

「摩り替えてねぇよ・・・!!大体今大事なのは俺が親父云々よりも、“どうやったらマドカが元に戻るか”ってことじゃねーのか!!」

「・・・・!!確かに、それも大事だが!!愛娘に知らないおじさん呼ばわりされ拒絶され、どこの誰とも分からぬ人間を“父様”と呼んでいる娘を目の当たりにした父親の気持ちが君に分かるとでも言うのかね!!」

「――!!じゃあ、言うがな!!惚れた女に名前どころか存在すら忘れられ、父親呼ばわりされている男の気持ちがアンタに理解できるのか!!」



ソファから勢いよく立ち上がり、睨み合う二人の男の怒号が、大きな屋敷を揺るがした。

その声は遠く離れたバス・ルームにまで響き・・・・メイドに背中を流してもらっていたマドカの肩を震わせた。

「・・・・父様、まだ喧嘩をしているの・・・?」

泡に塗れたマドカがメイドの方を振り向き、目に涙を浮かべながら恐る恐る訊ねてくる。

「気のせいですよ、お嬢様。さあ、身体を温めてから上がりましょうね・・・?」

金糸の髪を束ねたメイドは男たちの怒声に内心舌打ちをしながらも、
お嬢様に対しては至極優しく声をかけると、震える女主人の身体の泡を洗い流した。

しかし、その怒鳴り声を最後に、音羽邸は水を打ったように静かになった――





「・・・・すまない、君の言うことは最もだ・・・・今宵の私はどうかしてるらしい・・・・」


一頻り腹の底から怒鳴りあった結果、我に還ったのか、音羽氏はそう言いながら放心したようにソファへ腰を落とし、天井を仰いだ。


「いや、俺の方も・・・・言い過ぎた。アンタの気持ちも考えずに・・・すまなかった。」


士度もそう呟くと、ソファに身を沈め、疲労を追い出すかのように溜息を吐いた。


「「・・・・・・・・」」


そして居間を流れる気まずい沈黙。


「お茶が入りました・・・・」


年若いメイドがおずおずと声を出しながら、その静寂の中にティーワゴンの音を響かせた。
居間の隅で事の成り行きを見守っていた執事がすかさずティー・ポットを手に取り、温かな飲み物でカップを満たした。
カチャカチャと鳴るお茶の準備の音も、あの吼え合いに比べると格別優美に聴こえる。


音羽氏は執事から受け取った紅茶の香りを、自身を落ち着かせるためにゆっくりと吸い込んだ。
士度は手元にあるその茶色の液体をただ、じっと見つめている。

「確かに・・・」

音羽氏がゆっくりと口を開いた。
本来の落ち着きを取り戻したのか、先程までそこに居た千千に乱れた様子の男性はすでになく、その目に意志の強さと優しさを宿した一人の紳士が士度の向かいに座っていた。

「確かに私は・・・マドカに出来る限りの愛情を与えているつもりでいて、その実は、彼女をあまり顧みていなかったのかもしれない・・・・。たまに会っても、マドカはいつも変わらず素直で明るくて良い子だったからな・・・・。それに安心しきってしまっていたのだろう・・・。そう言えば、あの頃のマドカは確かに私に対して一生懸命だったと――今日、君に言われて初めて気がつくとはね・・・・?」

――そのツケが今日のあの有様だ・・・私の存在は他人と容易く摩り替われる程度のものらしい・・・・――

音羽氏は自嘲気味に笑うと、紅茶の湯気に目を落とした。その瞳には深い悲しみが宿っていた。


「別に――アンタの存在を忘れている訳じゃないさ・・・」


青年の声に音羽氏は顔を上げた。彼は紅茶を見つめたままだ。


「今のマドカが追っているのは・・・・あの頃のアンタとの記憶と・・・父親アンタの存在だ・・・・今のマドカは誰よりも父親の中に安らぎを求めているんだ。マドカが何故、俺と親父さんの気配を取り違えたかは知らねぇが、マドカはアンタの事、大切に思ってるぜ・・・?」

――これも、今のマドカが教えてくれたことだがな・・・――

青年は静かにそう言うと、寂しそうに目を眇めながら、カチャリ・・・と音を立ててティー・カップを取った。

音羽氏はそんな彼を見つめながら「そうだろうか――?」と小さく呟き、僅かに目を細める。
そして改めて気付くのだ――彼こそが・・・日頃娘に電話をする度に、彼女が飽くことなく話し続けていた居候殿――彼女の想い人なのだと。

普段のマドカむすめは――今、音羽邸を揺るがしている状況とは程遠い暢気な考えが、不意に音羽氏の脳裏を過ぎった。

普段の彼女は、この男の隣で、いったいどんな表情をしながら立っているのだろう?
恋にその身を委ねる少女の顔だろうか?それとも、愛を知った大人の表情だろうか・・・・?

そしてこの青年かれは――音羽氏は微かに頭を振った。

いや、この青年のマドカむすめへの想いは、最早火を見るよりも明らかだ。

この屋敷に帰ってきて、たった数十分の内に目の当たりにした彼の言動の全てが、それをはっきりと示してくれた。

そう考えてみると――
今の彼女の状況をもってして一番の苦渋を味わっているのは、父親の自分ではなく、目の前にいる彼なのではないだろうか・・・?

音羽氏は激昂していた自分を密かに恥じながら、思いを廻らした。

目の前にいる青年がマドカむすめのことを語る声が、表情が、彼女を見つめる眼差しが、この短い時間の間に語った真実は恐らく一つ――

彼は、彼女マドカを――



キ・・・・――と控えめな音がして、パジャマ姿のマドカがメイドに手を引かれながら、おずおずと居間へ入ってきた。

そしてパッ・・・とメイドから手を離すと、音羽氏の横を素通りし、トコトコと真っ直ぐ士度の元へと駆けて来て、ポフン・・・と彼の胸元へと飛び込んだ。
彼女の洗い立ての髪から香る花の匂いが士度の鼻を擽った。
音羽氏は寂々たる思いを顔に刻んだ。

「父様・・・!メイドのお姉さんが今日はもう“おやすみなさい”をしましょうねって・・・!」

――ほっぺはもう、痛くない・・・・?――

士度の絆創膏にそっと触れながら、マドカは心配そうに彼を覗き込む。

「ああ・・・もう、なんとも無い。・・・・おやすみ、マドカ。」

そう言いながら、士度がマドカの頬を撫でると、マドカはわざと怒ったような顔を作ってみせる。

「もう、父様・・・!さっき教えてあげたでしょ?“おやすみのキス”、今日は忘れないでって・・・!」

「あ、ああ・・・そうだったな・・・」

士度はチラリ、と恋人の父親の様子を伺った。

マドカの言葉を聞いて、音羽氏は懐かしそうに目を細めている。

“おやすみのキス”は――親の前でも問題は無いらしい・・・・

それでも士度は躊躇いがちにマドカの前髪をゆっくりと掻き分け、短く、しかし性急過ぎないように気をつけながら、彼女の額にキスを落とした。

ピクリ・・・と音羽氏の肩が揺れる気配がした。

「おやすみ・・・・マドカ。」

「はい、おやすみなさい、父様!」

マドカは士度からのキスに満足そうに微笑むと、キュッ・・ともう一度彼に抱きついてから、膝の上から降りた。

そして小さく手を振りながらメイドと一緒に居間から出て行った。
他の執事やメイドたちも、空になったポットや夜酒の準備の為、一旦その場を辞した。

・・・パタン、と静かに扉が閉まる音がする。
見ると音羽氏の顔は心なしか蒼褪めているようだった。
そして彼は残りの紅茶を飲み干すと、戸惑いがちに、掠れた声を出した。

「その・・・“おやすみのキスは額に”というのは・・・・マドカが君に教えたのかね?」

唐突な質問に士度は眉を顰めた。

「・・・・ああ、“父様”はいつも額にすると、マドカは言っていたが・・・?」

士度の言葉に、マドカの父親は落胆したように肩を落とした。

「私はいつもにしていたのだよ・・・・!額にするというのは・・・きっと君と、マドカの・・・・」

「――ッ!!」


音羽氏の言葉に士度は驚愕の表情を隠し切れなかった。

「どういう・・・・ことだ・・・!?」

状況を整理しようと、士度は混乱している頭に手をやった。

彼女の――“今の”マドカの中を占めている記憶は・・・“五歳当時”のものだけではないということか・・・!?

「――記憶が・・・混在しているのか・・・?」

急激に乾き始めた喉から士度は搾り出すようにして声を発した。

「いや・・・それもあるとは思うが――マドカがどうして私の気配に反応を示さなかったのかが、分かった様な気がしたよ・・・」

混乱する士度を余所に、音羽氏は大きな溜息を吐いた。

「きっとマドカは――記憶は幼い頃を辿りながらも、彼女自身は――きっと “君の気配” を求めているんだ・・・放り出された少女が頼れる・・・縋れる存在として・・・マドカの全身全霊に誰よりも深く刻み込まれていた “君の存在” をね・・・・彼女が君のことを“父様”と呼ぶのは、きっとただ、“今の記憶の中にある”言葉と存在で無意識の内に代用したに過ぎないのだよ・・・・。私も含め、皆の存在を忘れながらも・・・・“君の気配” だけがマドカ自身を守るものとして彼女の中に残っていたのだ・・・・」

――彼女の心が君を求めているから・・・自然と大切な“おやすみのキス”は額にと・・・・身体が記憶していたんだろうな・・・――

――まいったね・・・音羽氏は緩く首を振りながら、ソファから立ち上がった。

一方、士度は魂を奪われたように微動だに出来なかった。


――マドカは・・・俺を、覚えている・・・?――


彼女自身の、一番深いところで・・・・彼女じぶんを守る存在として・・・・・。


士度の心に一抹の安堵感が生まれたが、新たなる耿耿たる想いも同時に首を擡げてきた。

そうなると――今のマドカにとっての俺の存在とは・・・・一体・・・・・。

“父様”であって“父様”でなく、“士度”であって“士度”でなく・・・・このままだと、マドカは自身もその事に心を痛めることになるのではないか・・・?

そして俺は――



カラン・・・と氷がグラスに鳴る音がした。

居間に備え付けてあるミニ・バーで作ったのだろう、いつの間にか音羽氏がオールド・ファッションのグラスを両手に持ちながら士度の目の前までやってきて、琥珀色に満たされた片方を彼に差し出した。

「飲みたまえ・・・今、ここで頭を悩ませても、マドカは元に戻るまい・・・」

――明日、もう一度病院に行って、改めて対策を講じよう・・・・――


初老の男性は静かにそう言うと、ドカリと士度の向い側へ腰を下ろし、ウィスキーのロックを煽った。

「そう、だな・・・・」

いつまでも渦巻き続ける心内を鎮める為、士度も琥珀のアルコールに口をつけた。
そのほろ苦さが、男たちの心情を代弁しているかのようだった。


「そのうち木佐君が酒の肴を持ってくる・・・・今夜は少しつきあってもらうぞ?君はいけるクチだろう?・・・・マドカの話でもしよう・・・・」


途中、努めて明るい声を出していた彼であったが、娘の名を紡いだその音は微かに震えていた。


「俺は・・・強いですよ?」


音羽氏の思いを酌むように、士度は今になってやっと再び、敬語を使った。


「・・・・お手並み拝見といこうか?」


音羽氏はあっという間にグラスを空にして、士度に片目を瞑ってみせた。







丑三つ時は疾うに過ぎている。
執事もとっくの昔にその場を辞し、二人だけの杯の交わし合いがつい先程まで延々と続いていた。

音羽氏は今、上等なベストが皺になることも頓着せず、士度の目の前のソファに寝そべり、赤ら顔で高いびきを掻いている。
居間のテーブルの上には空になったボトルが、いくつも転がっていた。

士度は一度大きく伸びをしながら立ち上がり、二・三度首を鳴らすと、ソファの上に置いてあった膝掛けを音羽氏にかけてやった。

音羽氏は――愛娘の幼い頃の話をした――そして美しく成長した娘の姿を帰郷するたびに見る喜びを、誇らしげに語った。

――何故一緒に暮らさなかったのか――前々から疑問に思っていたことを士度が問うてみると、音羽氏は寂しそうに目を伏せた。

「妻が逝ってしまってからは――本当はこの屋敷を売って・・・・マドカと何処か別の場所で暮らそうかと思っていた・・・・」

酔いが回ってきていたのか、彼は訥々と語った。

「しかしマドカは・・・・この屋敷を失うことを何よりも恐れていたようでね・・・母様の気配と思い出が沢山あるからと言ってきかなかった。彼女が留学していた数年間は、蛻の殻になってしまった此処だが、留学を終えるとマドカはすぐにこの屋敷に戻ってきて、今に至る・・・。私は・・・・マドカのことを愛しているよ。良い子だろう?自慢の娘だ。しかし・・・もう・・・この屋敷に住むことには耐えられそうもないのだ・・・此処は・・・」


――妻との思い出が、多すぎる・・・――



彼もまた・・・永遠の誓いを立てた者なのだと――同じ男としての共感を――士度は少なからず音羽氏に抱くことができたような気がした。

いつもより多めのアルコールに身を浸したせいか・・・・
最初抱いていた彼に対するわだかまりが、綺麗さっぱり消えていることに、士度は内心少し驚いていた。


(第一印象はお互い最悪だったのにな・・・・・)


士度は朝まで目覚めそうにもない音羽氏を目の端に収めながら苦笑すると、居間の灯りを消してその場を後にした。




穏やかな寝息を立てて眠る彼女の貌は、以前のものと変わらない。


自室へ戻る前に、ふと立ち寄った彼女の寝室。

士度はベッドサイドのスツールに座り、マドカの寝顔を見つめていた。

士度が部屋へ入っても、こうやってすぐ傍に座っていても、彼女が目覚める気配はしなかった。

安らかな、深い眠りに一人、身を委ねている。

彼女の規則正しい吐息が、士度に安堵の表情をもたらした。


「なあ、マドカ・・・・。俺はちゃんとお前を・・・・守れているか・・・・?」


彼女の頬にかかった黒髪を、士度はなぞることでそっと、除けてやった。

そして彼の長い指は彼女の頬を滑り、紅色の唇へと辿り着く。

いつも彼の名を惜しみなく紡ぎ、愛を囁き、想いをじかに伝えてくる、彼女の丹花。


不意に士度は――その唇を思うがままに貪りたいという衝動に駆られる。

こうやってゆっくりと・・・彼女の柔らかな唇をなぞっても、彼女の瞼は開かない。

士度は僅かに身を乗り出し、自らの顔を彼女の貌へと近づけたが――

刹那、彼女の唇に触れたままだった彼の指が躊躇いがちにピクリ・・・と動くと、彼はそのまま身を引き、深い溜息とともに再び椅子に腰を下ろした。


ただ、代わりに――彼女の白く、柔らかな手を取り、その甲にくちづけを・・・・。


「マドカ・・・・」


喉の奥で、士度は呟いた。

彼女の手を、祈るように包みながら。


「頼む・・・・戻ってきてくれ・・・・」


掠れた、愁嘆の声が仄の暗い部屋を細く震わせた。

思考が淀むのも、目の前が霞むのも、きっと飲み過ぎたせいだと、士度は思った。


彼の頬を伝う雫が、彼女の手を濡らす。


どこまでも透明で、無垢に映る彼女の寝姿は、ひどく残酷に彼の心を打ち続けた。











                 


年の功か・・・いざとなれば頭の回転が速い父様でした;
(弊サイトの内なる設定では父様は作曲家兼音楽監督ということで・・・)