【7】
「しかし、士度はんはもてますなぁ〜」
羨ましいわーと夕焼け空の帰り道、笑師がポツリと呟いた。
「…あの子も大変よね。」
卑弥呼が気の毒そうに呟く。
「え、でも薫流ちゃんは治療に来ただけだし、依頼主さんは海を汚したくないから士度指名ってわけでしょー?」
「オメーの鈍さも猿マワシ並みだな。」
銜えたタバコに火をつけながら、蛮が銀次に蹴りを入れる。
痛いよー蛮ちゃん!という銀次の抗議の声を聞きながらヘヴンも、誰に言うでもなく一人言ちる。
「う〜ん、当の本人はそんなに自覚がないから困るのよねー。あ、でも無い方がいいのかな?」
どうだろう?と蛮にふると、知らねーよ、とそっけない答えが返ってくる。
「オメーは間違ってもあの猿マワシにコロっといくなよ!」
保護者として言っておく!とニヤケながら蛮は卑弥呼をからかった。
「他人のものには興味ないわよ!」
それに誰が保護者よ!と冷たい視線を蛮に送りながら卑弥呼は夕焼けを見た。
「・・・でも」
「え?」
先に歩いていた銀次が振り向く。
「あいつ、ちょっと兄貴に似てるのよね…」
雰囲気とか…。ポツリ、と卑弥呼は俯き加減に言った。
(ゲッ!!)
蛮は思わずタバコを噛み切った。
「「へぇ〜そうなんだ」」
銀次とヘヴンの声が興味深そうにハモる。
似てねーだろ!と蛮は卑弥呼に突っ込むが、卑弥呼はそーかな?と夕焼けを目で追いかけてる。
「・・・ホンマ、難儀なお人やで…。」
でも朔羅はんやマクベスにええ土産話ができたわ、と笑師は笑いを噛み殺しながら思った。