◆ 音羽邸裏庭小話〜其の四〜 ◆


<ヨォ、ヒサシブリ>


<カサナルナンテ、ホント、ヒサシブリネ>


<ホラ、ミエテキタゼ、カザミドリノイエ・・・>


一羽の雄雄しい鷹と小ぶりな隼が、音羽邸の庭へ舞い降りた。

久方ぶりの来訪者をまず迎えたのは、ここをとりあえずの住処としている

襟首の白が眩しい大鷲であった。


<ヤァ、ゴリョウニン。>


<コンニチワ、シドハ、イナイノカシラ?>


<イマ、デテクルダロウヨ。ココノオジョウサント、スコシハナシヲ、シテイルミタイダ。>


<アイカワラズ、ナカガヨイノカイ?
リュウホウガ、ウラヤマシガッテイタヨ・・・イチバンノ、カタブツノクセニ、
トットトショウライノハンリョヲ、ミツケヤガッタッテ。>


<ソッチハ、マダナノカイ?リュウホウハ、メスニハ、フジユウシナソウナノダガ。>


<ヘタヲスレバ、エイエンノ、カタコイニ、ナルカモナ、ダトサ。>


<マァ、ソンナニ、ナンギナ、コイヲシテイルノ?>


<ニンゲンノ、キュウアイハ、エラクフクザツナモノラシイ。>


<シドハ、ウマクヤッタホウナノカモナ。>


<アラ、ソウカシラ?アンガイ、ニブイトコロモアルワヨ、シド。カオルハ・・・>


「おぅ、来ていたのか。ご苦労さん。」


テラスに士度が出てきた。三羽の凛々しい鳥達は会話を中断して、テラスの手すりを止まり木に変える。

遠方からきた二羽は士度に挨拶をし、そろそろ来る時期だと思っていたさ、

と呟いた士度は小袋から干し肉を取り出して彼らに与えた。

大鷲もご相伴に預かる。

それぞれは一息ついた後、己の任務を果たすべく再び口を開いた。


<シド、カオルカラ。ツギノマンゲツノトキ、ヒサシブリニ4ニンデ、アツマロウ、ト。アノ、カワラデ。>


<シド、リュウホウカラダ。ゴチャゴチャカンガエネーデ、タダ、クレバイインダヨ、ダトサ。ウマイサケヲヨウイスルッテヨ。>


予期していた内容であったが、士度の瞳が僅かに揺れた。そして劉邦の言葉に苦笑する−わかってるんじゃねーか・・・−

士度は確認するように左胸に右手をあて、一息吐いた。


「あぁ、必ず行く、と二人に伝えてくれ・・・」


「「ワカッタ」」


ではその時にまた会おう、と別れの言葉を残して二羽は飛び立った。

士度も手を挙げ、それに答える。

士度の肩の上で、仲間を見送っていた大鷲が、ふと気が付いたように言った。


<シマッタ、オモシロソウナ、ハナシヲキクノヲ、ワスレテイタ。>


「何のことだ?」


<カオルノ、ツカイガ、オマエハアンガイ、ニブイッテサ。>


「あぁ?何だよ、そりゃ!?」


<サァ、ナンノコトヤラ・・・ワタシガキイタノハ、ソコマデダ。ドーセ、チカイウチニアウンダカラ>


まぁいいじゃないか、と言うと、大鷲は夕を涼みに屋根の指定席に戻っていった。

士度は釈然としないまま、あの隼が消えていった茜色に染まりつつある空をしばらく眺めていたが、

マドカが士度を呼ぶ声がしたので、軽く返事をして踵を返した。

使いたちが残していった羽がフワリ、とテラスから舞い上がり、持ち主を追うかのように風の中に消えていった。



Fin.






微妙に当サイトの某話とリンクしておりますが・・・。
こちらは亜紋の弔いを、魔里人時代の思い出の地であるとある河原でしよう、という話しです。
再び出会ってからは、四木族の若い三人は使者を使って時々近情報告とかも・・・してもらいたいですね♪