狼は迷っていた。



普段は驚くほど貞淑で無垢な子羊が

今宵は


「食 べ て・・・・」


と自らその身を差し出し

その大きな瞳を愛らしく光る涙で潤ませながら、こちらを見つめている――


その柔肌を堪能しながら、
それでもまだ、狼は迷っていた。


手加減しないと言いつつも、

やっぱり自分はこの子羊に酷なことはしたくない――

たった一夜の気の迷いでも

彼女をいつも通り心地よい――夢の世界へと誘ってあげたい……。


しかし狼は気付いていた。

情欲に支配されている濡れ羊を目の前にして、自分の中の奥底にある――

何かのスイッチがカチリと入る音がしたことを。




イツモトハ


チガウ コエデ ナカセテ


イツモヨリ


モット ハゲシク ムサボッテ ミタイトハ・・・・




思わないか――?




理性と本能の狭間で揺れ動く狼の想いなど


躰の内側からとめどなく溢れでてくる熱に翻弄され続けている子羊には


知る由もなかった。





◆act.3◆



「ア・・・あっ・・・・士度・・・・さ・・・ん・・・・!」


一糸纏わぬ姿の彼女は窓から差し込む月明かりの中で淫らに――可憐に鳴きながら
身を繋げている人へと両手を差し伸べてくる。


「――ッ・・・マドカ・・・・」


士度がその細い両腕を自分の背に回してやると、自然、彼女の腰がフワリと浮かぶ。
士度はそのまま片手でマドカの背を支えたまま、自身をより深く彼女の中に潜り込ませた――


「――!?ヤ・・・アァ!!んっ・・・ッ・・・・!」


漆黒の瞳を大きく瞠り、身を穿つ楔の猛々しさに振り回され――その眼に涙を溜めながらも
やがてすぐに彼女の躰は従順に――彼の動きを追い求め、艶かしく揺れ動く。


「マドカ・・・・」


名を呼び、その白く冴えた躰に唇を寄せると
その声にさえ感じ入るかのように、躰の痙攣と共に彼女の爪先がピンと張った。


こんなにも素直に貪欲に――
淫楽に染まるマドカの姿を、士度は初めて目にした。


いつもなら――躰を繋げ、求められる度に・・・・
恥らうように声を抑え、顔を伏せ、それでも健気に快楽の波を共にしようと懸命に追い縋ってくる彼女なのに。

今夜は身を駆る荒淫に逆らわず、愛らしい声で惜しみも無く啼き、身を揺らし――


「――ッ・・・・ア・・・・・・・」


淫逸の怡悦を隠さぬまま、心地良さそうに、素直に果てる――


やがて身の内に広がる彼の精の温かい感触に身を震わせながらも、
マドカは幸せそうな貌でうっとりと士度を見つめてきた。


「お前・・・・・」


媚薬の熱を愉しみ始めた、いつもとは違う彼女の心と躰の反応に士度は自分の今までの憂慮を掻き消されたような錯覚に陥り、最早苦笑するしかない――

取り合えず立て続けに彼女を戒めたその身を抜こうと士度が躯を引くと――


「あ・・・・嫌・・・・!!」


マドカは士度を引きとめようとその身を起こそうとしたが、
今までの行為ですっかり体力を奪われているその痩躯は彼女の思うように動いてはくれなかった。


「・・・・・?」


訝しがりながらも自身を引き抜く刹那――マドカの眉が小さな痛みに耐えるように切なげに顰められる。

ほら、やっぱり――

切れてはいないものの、ろくな間もおかないままの続けての行為――

彼女の
膣内なか が擦れて、痛みを伴ってしまうのも、不思議なことではない――


士度が心配そうにマドカを抱き起こしながら――大丈夫か・・・?――と問いかけると、
彼女は未だに火照る躰を彼に摺り寄せながら、彼の耳朶に熱い吐息と共に囁いてきた――


「イヤァ・・・・士度、さん・・・・離れ・・・・ないで・・・・・・」


―― 一つで・・・・いたいの・・・・――


お願い・・・・


マドカの誘うような言葉に、士度の目は刹那見開かれたが――やがてスッとその細い目は眇められ――

彼は彼女を肩口から引き離すと、縋るような表情で見えない瞳を瞬かせる彼女の濡れた唇に
武骨な指をそっと寄せた。


「じゃあな・・・・マドカ・・・・・」



――舐めてくれ・・・・――


そして彼はゆっくりと――左手の人差し指で彼女の唇を割った。

マドカは一瞬、不思議そうな表情を士度に向けたが――すぐにピチャリと音を立てながら、言われるがままに彼の指をパクリとその小さな口に銜える。

やがて彼女はペチャペチャと音を立てながら、味わうように彼の人差し指に舌を這わした――


そんなマドカの様子を見てクスリと――小さく口角を上げた士度の微笑が、いつもより暝いものだという事は――

目の前の愉悦を追い求める彼女には、気付かれることはなかった。











「あ・・・・ふ・・・・っ・・・・」


小さな口を精一杯開けて、彼女は彼の武骨な指を唾液で濡らし続けた。
少し骨ばっている逞しい指が――人差し指と中指で時折彼女の口腔を蹂躙し、小さな舌を弄び、喉から嗚咽を引き出す――
そんな、彼女の吐息さえも喰らいつくさんばかりの行為の中でも、彼女は健気にも彼の指から唇を離そうとはしない。
衒う唇の端から雫が零れるのを厭わず、
彼女は奉仕をするかの如く一心不乱にその無駄無く筋張った指の節々までしゃぶり、舌を這わせ、付け根を食み――


「――!?ア・・・グ・・・・・ッ」


すると唐突に――マドカは指を銜えさせられたままその身をベッドへ沈められると、
彼の長い指が二本とも――彼女の喉にまで届かんばかりの勢いでその小さな口腔に押し入ってきた。


「ふ・・・・ア・・・・ヤァ・・・・――!!」


苦しさに目を瞑り、首を打ち振るマドカにさらに追い討ちをかけたのは――躰中に緩慢に施されはじめた、彼からの濃厚な愛撫。

口を指で塞がれたまま空いた右手で胸を鷲掴まれ、マドカは声にならない悲鳴を上げながらシーツの中で躰を波打たせた。

すると



「マドカ、止めるな・・・・続けろ・・・・・」



感情を感じさせない彼からの声が、マドカの身も心をビクリと竦みあがらせ――

彼女は再び恐る恐る――彼の手への奉仕を始める――


「く・・・・ふ・・・・ァ・・・・ア・・・・・」


胸の頂を、腰を、大腿を、鼠径部を・・・・彼の右手と唇はゆっくりと、しかし官能という確かな足跡を残しながら辿っていく――

口腔を蹂躙される苦しさと、躰の隅々にまで与えられる悦楽の二律背反にマドカの思考は熔かされ、翻弄され――
その二つの感覚に戸惑いながらも悦び粟立ち、反応している躰に胸を締め付けられながらも、
マドカは緩々と身を捩る以外は然したる抵抗もせぬまま、士度にされるがままだ。

そして彼の指が再び――彼女の花芯に触れたとき――マドカの躰がビクリと大きく揺れ、喉の奥からくぐもった悲鳴が上がった。


「ヤ・・・・ふっ・・・――ッ!!」


しかしそれすら咎めるように――士度の指が彼女の舌を軽く引っ張ったので――
彼女は喉を仰け反らせ苦しそうに喘ぎながらも、彼の左手を引き寄せて涙ながらに舌と唇を動かした――
その間も、彼女の下肢へと愛撫は止まる事無く続けられ――彼女の上と下の口からは留まることなく、卑猥な水音が漏れ聴こえる。

士度は苦悶と快楽の狭間で苛まれているマドカの様子を静かな眼差しで観察しながら、乾いた喉をコクリと鳴らした。

煽られた熱のせいか、汗と淫蕩な体液が交わる臭気のせいか――澱んだ思考が士度の脳裏をジワリと犯す。



――ここまで辱められて――ろくな抵抗もしないのは、クスリのせいか・・・・?――


――お前は俺の前でなくても・・・・くだらない錠剤の力を借りれば、誰にでもこうやって・・・・無防備に躰を晒すのか・・・・・?――


――そうだ、そもそもお前が躰を繋げるときに常々大切にしている愛だの恋だのは・・・実体に基づくものじゃない・・・・・――


――単に脳神経の内面的作用にしか過ぎないモノだ・・・・・――


――“欲”の本能に支配されている今のお前はきっと・・・それすらもかなぐり捨てて・・・――



コノ ネツカラ ノガレル タメニ


オレト ツナガッテ イタイノダロウ・・・・?





マドカの愛液で士度の右手もヌラリと濡れた頃・・・・彼は徐に彼女の口から指を引き出した――
マドカは急に流れ込んできた新鮮な空気に戸惑うように――眼に涙を一杯浮かべながらケホケホと咳をし――
そんな苦しい息の中でも、相変わらず従順な眼差しを士度に向けてくる――


ツギハ ドウヤッテ・・・・・?


士度は小さな溜息混じりに彼女の貌を覗き込みながら、問い掛ける――



「マドカ・・・・どうして俺がお前に指を・・・・銜えさせたか、分かるか?」



予想だにしなかった士度のからの問いに、マドカは考える余裕もないまま不安そうに首を振った。


「どうして・・・です・・・・・・――キャア!!」


何の前触れも無いまま、マドカはいきなり四足の格好にさせられ、腰を高く上げられ――

濡れた指の腹で唐突に菊芯に触れられたので、彼女は思わず悲鳴を上げた。


「イヤァ・・・!!そんな・・・ところ・・・やめて・・・・士度さん・・・・!!――!アァッ……!」


悲鳴と共に紡ぎ出された制止は聞き流され――彼女の菊花は唾液と蜜液で瞬く間に潤いを与えられる。
ゾクリと未知なる感覚がマドカの身を包み、彼女の上気した肌が一気に粟立った――
そして唐突に――ツプリと音を立てながら入り込んでくる、彼の太く、骨ばった指。


「ん・・・・アッ……ヤ・・・!!」


身の内側からせり上がるような感覚が一気に彼女の脳まで侵蝕し、
ショックとジワリと広がる痛みが彼女の喉から小さな悲鳴を引き出し、頬には涙の痕を走らせる――
徐々に深く――熱く潜り込んでくる焦がすような感覚にマドカの内壁は自然、灼けるように滾り――
彼の指をきつく締めつけ、士度は悶える彼女の腰を押さえつけながら小さく眉を寄せた。


「んっ・・・ぅんっ……あっ・・・」


マドカはあらん限りの力でシーツを握り締め、身を震わせながら士度にやめてと懇願したが、何の返事も返さぬまま
彼の指はゆっくりと抽送をはじめる――


「……っっ!! あっ…んっ……ん……」


内壁を濡れた硬い指で擦られる度に――マドカの身を苛んでいた異物感は徐々に溶け、
熱く燃えるような快楽の波がマドカの細い腰から腹部にかけて波紋のように広がっていった――


「あっ……あ・・・んっ・・・・んっ・・・・・・」


彼女の嗚咽に恍惚とした彩が混ざりはじめ、彼女の白い躰が再び桃色に染まる――
士度は彼女の粘膜を傷つけないよう、慎重に内側を刺激しながら―― 彼女の煩悶する艶かしい姿態に眼を眇め――
さして表情を変えぬまま、彼女の内壁を軽く叩くように刺激した。

すると一際高い啼き声が寝室に木霊し――マドカは背を撓らせながらその痩躯を震わせると、シーツの海にその身を投げ出した――

浅く、乱れる呼吸と共に、知らない淫靡な感覚に翻弄された感情がマドカの瞳を熱く濡らす。
その熱い雫を――士度の唇が優しく受け止め――彼の気配にマドカが安堵の溜息を吐いたとき――ヒヤリとした言葉が、マドカの心を撫で上げた。


「後ろだけでも、
けるんだな・・・・?」


マドカの眼は驚愕で見開かれ――彼女の頬は見る間に紅潮していったが――次の瞬間、その貌から瞬く間に血の気を奪っていった――


「次はココで・・・・受け入れてみるか・・・・?」


先程快楽を知ったばかりの処に――熱く猛る楔が宛がわれる――


「あ・・・・・」


恐怖で竦み上がる心が彼女から声を奪い、淫楽に身を染めた躰には最早抵抗する力など残っていない。


そしてマドカは――彼の暝い気配に今更ながらに気づき――


見つめる視線の冷たさに眩暈を感じながら、冷えていく心と躰に
彼女の貌は哀れな程に色を失っていった――









 


もう少し士度に内面を吐かせて・・・次回、完結☆