愛も嫉妬も欲望も



全てその身に



受け入れることができますか?










◆act.4◆




――ドウスル?マドカ・・・・――




求める行為とは裏腹に、
透き通るような涼やかな声がマドカの耳朶を震わせる――



「ア・・・・・」



温度が視えなくなる彼の視線

背後から自分を求める彼の熱

あやすように、けれど彼女の心を探るように頬を滑る彼の大きな・・・手。



そして、恐怖で竦みあがりながらも――依然として渦巻くように淫を求める
自分の躰。



不安で揺れる睫を伏せながら、マドカは小さく深呼吸をすると――

彼女の頬に熱を伝えていた彼の手にゆっくりと・・・・自らの指を絡めていく。


士度が不思議そうな貌をする中、彼女はその嫋かな指で確かめるように――その小さな手に力を込めた。



「手を・・・・握っていてください・・・・」



震える小さな声が、精一杯の愛しさを込めて士度の手に響いてくる――



「離さない・・・で・・・・」



懼れを押し隠すかのように――それでも彼を求めるような眼差しが、士度の気配を追った。

そんな彼女の――怯えながらも愛を乞う表情に
士度は思わず眼を瞠る。



――そしたらきっと・・・・ダイジョウブだから・・・・――



そして最後に――彼女が言い訳のように紡いだ言葉に返されたのは
深く短い彼の溜息。

途端、マドカは叱られた子供のようにビクリとその身を揺らし――悲しみが無意識に心の扉に忍び寄る音を聴いた。


すると彼は彼女の小さな頭を抱き寄せ――その仄かに花芳る髪に顔を埋めながら呟いた。
近くなった彼の肌の熱が――マドカに泣き出したくなるような安らぎを与える。



「・・・・ったく、何が “大丈夫” なんだ・・・」


――傷つくかもしれねぇのによ・・・・・――



士度の言葉にマドカは再び瞼を伏せた――そして繋いだままの手をキュッと握ってくる。



「怖いんだろ・・・?嫌なら嫌ってハッキリ言って突き放せよ・・・・そうじゃねぇと・・・・」



――歯止めが利かねぇときもあるんだ・・・・――



マドカの髪を――今度は溜息ではなく、小さく息を飲む音が微かに擽った。

できることならば――今の彼がどんな表情をしているのか――マドカは無性に確かめたかった。


怒っているの?呆れてる・・・?それとも・・・・


しかし、不安と熱に惑わされるように、彼女の五感はいつも通りに働いてはくれない。

その代わり、低く、どこか自嘲を含んだ彼の声を追うように、マドカの吐息が士度の肌に触れた。



「怖くても・・・・・士度さんがしてくれることに・・・・本当に嫌なことなんてないもの・・・・・」



――だから・・・ダイジョウブ・・・・――



彼女の、そんな健気な言葉に刹那、士度の呼吸がピタリと止まり――
彼は徐にマドカから身を離すと、横たわる彼女の脚を割り開き――間に自らの体躯を挟みこみ、彼女の動きを封じた。
彼の突然の行動にビクリとマドカは身を竦め、無意識に躰を強張らせる――



「・・・・“大丈夫”だ、マドカ・・・・・痛ぇことはしねぇから・・・・」



――怖がらせて・・・・悪かった・・・・・――



耳元で囁かれた、久しく感じる穏やかな声に――マドカは一瞬眼を瞠り――そして柔らかくその眼を伏せた。

未知なる行為を取り消されたことへの安堵感よりも

彼の優しい声を聴けたことへの喜びの方が彼女の心を軽やかに駆ける。


「まだ、辛いか・・・・?」


そう訊ねながら彼女の腹部に置かれた彼の手をマドカは恥ずかしげに触れながら小さく頷いた。


するとクプリと――彼女の蜜口の潜り込んでくる彼の長い指。
膣内なか の残滓がトロリと流れ出る感触に、彼女の中心は切なげに震える。


「ア・・・・ん・・・・」


士度の人差し指と中指はすぐに彼女の奥にある敏感な部分を捉え――
艶かしく揺れる彼女の腹側の膣壁を、徐々にその速度を速めながら擦り上げていった。


「・・・・・・っあ・・・・・ア・・・・」


いつもより緩慢に――しかし確実に躰中に花を咲かせていく芯から痺れるような感覚と、
下肢から聴こえるパシャパシャと水を叩くような音に翻弄され、飲み込まれ――口端から漏れた雫を厭う間もないまま、
マドカは貌を朱に染めながら自らの肩口に顔を埋めた。


「ふ・・・・・ぁ・・・・――!?ァア・・・!!」


途端、内側を強く押すように擦られ、マドカは背を撓ませながら悶えた――
しかし彼女が快楽を逃すのを遮るように――士度の手は彼女の腹部を押さえつけ、離れない。
マドカは精一杯腕を伸ばし、彼の肩に手をかけ救いを求めた。
いつもより深く、ジワリと浸透しながら広がるような快楽が彼女の躰を侵蝕し始め、マドカの大腿にツ・・・・と汗が伝う――


「っや・・・・もう・・・・・士度さん・・・・ダメ・・・・!!」


マドカはフルフルと首を打ち振りながら身を捩じらせ、内側からリアルに感じる彼の指が蠢く感触に神経が灼かれる音を聴いた――


――ダメ・・・・やめて・・・・これ以上・・・されたら・・・・・――


ヒクヒクと動く彼女の中心と、そこに埋め、蠢く彼の指の間からは甘い匂いを醸し出す蜜がしとどに溢れ出し――
マドカが啼く度にヒクリと動く細く白い喉元や、その痩躯が淫楽を拾うたびに震える柔らかな乳房、細い腰――
淫靡な光景の中でも、愛らしい美しさで無意識に誘うマドカの姿態を眺めながら、士度は自嘲気味に眼を細めた――


自分は


嫉妬してたのだ


この素直で奔放な姿に――


そしてそこから生まれた、小さな嗜虐の心――


士度はそれがクスリのせいだと知っていながら、得体のしれない苛立ちと微かな焦りを感じていた自分が、酷く滑稽に思えた。

彼女が媚薬の助けを借りようと借りまいと――褥の中の彼女に触れられるのは自分だけだというのに――

彼女は熱に犯されながらも、目の前にいる自分を信じることを忘れずにいたのに――


なんて浅はかで狭量な、己の心。



(俺もクスリに・・・中てられたか・・・・)



クッと小さく喉を鳴らしながら、士度は己を哂った。


そして彼女に許しを請う代わりに――その躰を解放へと導く快楽を彼女の内側から叩き込む――


士度の指を締めつける彼女の中心の力が強く、速くなり、マドカは苦しそうに身を捩り、腰を浮かせた――


「ヤァ!!士度さん・・・!ア・・・・嫌・・・嫌ァ・・・・・お願い・・・・・」


――出ちゃう・・・・出ちゃうから・・・・・――


ついには幼子のように泣きじゃくり、未だ感じたことのない快楽への恐怖から震える彼女の頬に士度はあやすように口づけを落とした――
彼女の媚態に、確実に煽られている自身を持て余しながら。



「――ッ・・・・マドカ、いい子だ・・・・そのまま・・・・・」



「!!―――ヤァッ・・・・!!」


グッと一際強く士度がマドカの奥壁を擦り上げると、その痩躯が大きく震え――彼女の花口から無色透明な雫が迸り、彼の手とシーツをサラリと濡らした――


「・・・・ァ・・・・ヤ・・・・・・・ぁ・・・・」


一気に上りつめ、堕とされた開放感と浮遊感の余韻に、マドカは浅く速い呼吸を繰り返しながら躰の痙攣が止まらない。
そんな中――自分の躰の初めての反応とまだ尾を引く悦楽の名残にすっかりパニックになってしまっているマドカを
士度の逞しい腕が抱き寄せる――

彼の躯も、少し熱い。

彼の腕の中で、そのぬくもりに浸るようにマドカはその胸元に頬を寄せた。
早鐘を打つように速く鳴る鼓動を熔かしていくような安堵感が、彼女を包み込む――
未だ時折震えるその痩躯を労わるように、士度は彼女の上気するなだらかな背をゆっくりと撫でながら、彼女の柔らかな頬を親指でそっと撫でた。



「士度、さん・・・・・」



彼の大きな手に頬を寄せながら、マドカはその名を紡ぐ――

すると慈しむように降りてくる、優しい
口吻くちづけ


最初は触れ合うだけで――徐々に深く深く絡み合い――互いに上がる呼吸が言葉の代わりに想いを伝えた。



――もっと・・・・近くに・・・・――



そう囁いたのはどちらであったか定かではないまま、彼女は再び彼を受け入れた――
その重く、確かな存在で心も躰も満たされる感覚が、甘い声と共に彼女の姿態を美しく飾る。



彼の膝の上で艶美に揺れながら、マドカが確かめるように士度の顔に触れてきた――


士度が問い掛けるように彼女の名を呼ぶと――


彼女は彼の唇に紅く衒う丹花を寄せ、心が叫ぶ声を静かに音にする。






「士度さん・・・・・」






――好きです・・・・――






――好き・・・・――






――誰よりも貴方のことが・・・・――






――好きなの・・・・・――






そんな彼女の切なげな声に惹かれたように刹那

士度の動きが止まった。



そして彼が与えたのは噛みつかんばかりの濃厚な
口吻くちづけ







(嘘かもしれねぇな・・・・・)









愛や恋が――実体に基づかないなんて。








躰で言葉で――そして心で繋がっている現実を

こうして今、自分は――この世の誰よりも深く感じているのだから。










滾るように乱暴な熱が、暖かなものに変わったことを――


マドカは薄れゆく意識の中で確かに感じた。




そして彼が自分の名を呼び――少し照れくさそうに愛の言葉を囁く声も――



何よりも心地よい音色となって確かに


彼女の心に舞い降りてきた。








緩やかに射し込み


彼女を柔らかに照らす月の光は


もうすっかり冬の色をしていた。





自分の武骨な手の中にすっぽりと納まっている
彼女の愛らしい小さな手をその月灯りの中で確かめるように握りながら、


士度は眠る彼女の額にそっと



キスを落とした。


















Fin.









←& a sequel to the story.


月窟初の短期集中連載でしたv
後日談をほんの少し↑のアイコンに・・・・。
マドカ嬢は受難この上なかったですが;書いている本人は楽しかったりしました(笑)
ここまで読んでくださった皆様とvMailで煽りに煽ってくださったマイ師匠に♪愛を込めて捧げます・・・!