第二章

−die Hoffnungslosigkeit-


          ズクッ…

          身体の芯で引き裂かれる痛みが走り、覚醒した。
          脳まで響く、鋭い痛み。
          鼻を突き抜ける埃臭い汗の臭い。
          蝋燭の薄明かりの中、見知らぬ天上が眼に入り、知らぬ男達の笑い声が聞こえてきて、マドカの意識は浮上した。

          (・・・クッ!・・・本当に生娘だったんだな。)

          下肢が・・・燃えるように熱くて―― 痛い。
          マドカは腰を抱え込まれながら、腹腔に肉を裂く様な激しい痛みと、圧迫感を感じていた。
          今まで感じたことのない、巨大な蛇か何かが下肢から入り込んでしまったような錯覚――。

          「!!・・・・あッ!」

          「目が覚めたかい?お嬢ちゃん・・・」

          下卑た笑いを浮かべながら、マドカに圧し掛かっている男が彼女の顎を掴んだ。
          丸太のように太い腕には剛毛が絡みつき、無骨な指はマドカの小さな顔を握り潰さんばかりの加減の無い力だった。
          状況が飲み込めず、身体を駆け抜ける痛みと、その男の鬼のような形相に涙を浮かべ震えるマドカを穴が開くほど見つめながら
          その男が告げた言葉に、マドカは奈落の底に落とされる。

          「どうだい?初めて男に突っ込まれる気分は――?」
      
          「―――ッ!!」

          自分の腹部を苦しい体制の中見下ろすと、両の脚は限界まで大きく開かれ、その間では男の股間が密着していた。
          マドカが絶望の悲鳴を上げる前に、その男が彼女の両手を湿った木の床に固定しながら、大きく腰を揺さぶった。

          「あ・・・ッッ!!いやあああッ!」

          未使用の器の中の肉を擦る激しい痛みがマドカの下肢を貫き、背を大きく反らせながら身悶える彼女の姿に、周囲の男たちが生唾を飲む。
          ガクガクと続く脚の震えは、いつまで経っても止まらない。
          かなり大きな男根で力任せに傷口を広げられる激痛によって、蒼白の額に薄っすらと脂汗が浮かんできた。
          痛みとショックで意識は既に働かない。マドカの、優美で上品な美貌は、完全に血の気を失っていた。
          彼女を組み敷いているリーダーらしき男が、首をしゃくることで合図を送ると、大刀を持った男がマドカの胸元にその刃を当て、ビリビリと絹のネグリジェを縦に裂いた。
          熟れきれていない、しかし美しい曲線がその弾力を物語っている形の良い胸が露になり、その谷間にはあの青い星が輝いていた。
          男の一人がおもわず感嘆の口笛を吹く。

          「・・・いいもの持ってるじゃねぇか!」

          周囲でドッと笑いがおきる。

          「そりゃ、こっちのことか?」

          刀を持った男が徐に、鳥肌を立ている彼女の乳房を鷲掴んだ。

          「―!痛ッ・・・!」

          「それとも・・・こっちか?」

          横から入ってきた男が、胸の痛みに身を捩る彼女をよそに、その首にぶら下がっているペンダントに手をかけ、銀の鎖を引き千切った。

          「――ッ!!やめて!それだけは―!返して!」

          ペンダントに手を触れられたことで、飛んでいた意識が引き戻された。
          今となっては唯一の心の拠り所すら奪われ、マドカはそれに追いすがるように懸命に首を伸ばし、あらん限りの声で叫んだ。
          初めてマドカの悲鳴以外の声を聞いた男たちはその可憐な響きに一瞬瞠目したが、さらなる楽しみを見つけたかのようにニヤけた笑いを浮かべた。

          「ははぁ、好いた男から貰ったものかい?お家柄から言ったらフィアンセとか?」

          銀の籠をマドカの目の前でゆらゆらと揺らしながら再び揶揄するように告げる男に、マドカは恐る恐る小さく頷いた。

          鼻で笑う嘲笑が四方から湧いてくる。

          「それじゃぁ、もう、いらねぇよなぁ」

          どこかから、別の男の声が聞こえた。

          「・・・貴族様は、処女しか娶らないそうだから、よ!」

          「!!―― ヒッ!あ゛・・・ぁっ!あッ―――あぁっ!!」

          彼女の上に乗っていた男が言いながらその身を起こし、自らの杭に彼女を串刺しにする。
          身体が――― 灼かれる。そう錯覚させられるような痛みがマドカを苦しめた。
          そして長く伸びた悲鳴と共にビクンッと大きく撓んだマドカの身体を、後ろにいた男が羽交い絞めにするように押さえつけ、
          反動で揺れた両胸を背後から掴み揉みしだいた。
          マドカの身体は初めてもたらされる激痛で大きく波打ち、胸を彩る形の良い突起は男の無骨な指によって無残にも押し潰される。

          「――ヤッ・・・嫌ぁ・・・やめ・・・返・・・し、て・・・」

          上と下からもたらされる劫火の痛みと、突きつけられた言葉への絶望から、彼女の澄んだ大きな瞳からは止め処なく涙が流れ出ていたが、
          それでもその小さく非力な手で弱々しく拳を作り振り上げた彼女の抵抗は、目の前にいる男にあっさりと止められる。

          「抵抗するなよ、お嬢ちゃん・・・・親父さんや島の住人がどうなってもいいのかい?」

          「!!――お父様・・・や、皆に、何を・・・・!」

          自室の階下から聞こえてきた使用人達の悲鳴が脳裏を過ぎる。
          嫌な汗が、マドカの背を伝った。

          「別に?何もしちゃいないさ・・・。これからは全部お嬢ちゃん次第だがな・・・。」
        
          そう、目の前の熊のような男はマドカの桃色に色づく胸の突起を舌で弄りながら冷えた声で言った。
          スッと身の内が冷えるような感覚が、男から逃れようと身を捩じらせていたマドカの動きを止めさせる。

          「お、お願いっ・・・父様や、島の人たちは・・・」

          「あーあ、判ってるって!」

          ぐりぐりとマドカの下肢の中心の肉芽を嬲りながら男は面倒臭そうに言った。
          自分すらあまり触れたことのない場所への強い刺激に、ビクンッとマドカの身体が引き攣れ、その頭が空気を求めるかのように振られる。

          「おめぇが大人しくしてりゃあ、一ヶ月後には五体満足で里に帰してやらぁ!」

          グチュ・・・と嫌な音を立てながら、男はマドカの躯の中にそのまま指を数本潜り込ませ、中身を掻き出さんばかりに抽入させた。
          再び悲鳴を上げながら仰け反るマドカに、いい反応だ、と返しながら正面にいた男は舌なめずりをする。
          横から何時の間にか顔を出してきていた男が、ピチャリ、ペチャリと彼女の乳首を弧を描くように舐め、
          そうら、だんだん固くなってきやがった・・・と時折その柔肌に歯を立てた。
          敏感なその部分は反応こそするが、マドカに感じられるのはヒルが身体を這うような気持ち悪さだけだった。
          後ろにいた男にはグッとその顎を引かれ唾液で濡れた唇で無理矢理口付けられた。

          「・・・!ふっ、っ・・・んっ・・・」

          身体の中ばかりか、一方的に口腔をも掻き回され、もっと舌を突き出しな、と押さえられた顎を砕かんばかりに掴まれる。
          男たちの無数の手が、口が、歯が、マドカの躯を這い回り、その白い身体は獣たちの唾液で塗れた。
          マドカはいっそのこと早く気を失ってしまいたいと思ったが、未経験の躯はマドカの意志に反してその汚らわしい一触一触に過敏に反応し、
          男たちを喜ばせるだけだった。身体中を針で刺されているような感覚がマドカを襲い、下肢が痺れるように痛く、もう自力で身を支えるのすら辛い。

          「・・・願、も、う・・・痛・・・痛いの・・・」

          途切れ途切れに懇願するマドカの声に男の一人が、嬢ちゃん痛いってよ、と言えば、正面の男が
          あんま、中の方は濡れてねぇみてぇだからよ― なに、入れている内に慣れてくるさ・・・と今度は本格的にその血塗れの肉根を動かし始めた。

          「ああ―――っ!!あ゛ッ!あっ、うァッ・・・!!」

          ズッ・・・ジュプ、ズプ・・・ズチュ・・・

          蝋燭の明かりが揺れる船内を、マドカの下肢から聞こえる卑猥な音と、男たちの卑しい声、荒い息、そして少女の悲鳴だけが木霊する。
          遠くから聞こえる、海の音・・・。

          「はっ、ハッ・・・かはっ・・・!」

          小柄な少女がガクガクと顔を揺らし、涙溢れる眼を大きく見開き、口を閉じることすら忘れてその細い首筋に唾液を伝わせ喘ぎ続ける様に、
          彼女を手篭めにする順番を待ち侘びている他の船員たちから苦情が洩れる。

          「おいおい、あんま無茶しねぇでくれよ!俺の番までもたねぇじゃねえか!」

          そんな声にも、なぁに、そう簡単に壊れやしねぇよ!と、マドカに群がる男たちの手は止まらない。

          「ふっ・・・ん・・・ひぅっ!は・・・うっ・・・ア・・・ァ・・・」

          幾人もの男から、代わる代わる口内を犯され続けるため、最早悲鳴さえも儘ならない。
          ―― 不意に、マドカにその太い根を挿入していた男が動きを止め、マドカの耳元で囁いた・・・。

          「・・・・嬢ちゃん、孕んでみるか?」

          涙に濡れたマドカの小鹿のように愛らしい目が大きく見開かれ、苦痛で悶えていたその白い四肢の動きが止まった。
          そして、その瞳は絶望と恐怖を彼女の脳裏に写し出し、抉られるような痛みを心臓にもたらした。

          「―――!!ヤメッ・・・」

          ――ドクッ・・・

          獣から逃れようとするマドカの太股を押さえつけ、その細腰を無理矢理引き寄せながら、野獣が吠えるように男は大きく身震いした。

          「――ッ!うぁっ・・・・!あ・・・・や・・・・っ嫌ァァァァ!!」

          マドカの声は届かず、腹の中を熱い粘液が叩いた。
          彼女の長い黒髪が宙に弧を描き、その白い胸が大きく揺れ、その柔らかな躯が隅々まで観察できるくらい伸び上がった肢体は
          ビクッビクと小刻みに痙攣し、大腿の中央からは白と赤が交じり合った液体がツ、と流れ出る。

          「はぁ・・・は・・・っ・・・イヤ・・・嫌ぁ・・・・」

          ズッ・・・と彼女から杭が引き抜かれると、ドロリ、とその朱に染まった粘液が木の床を汚した。
          彼女の躯はダラリ、と弛緩し、その花芯と太股はヒクヒクと震えて男たちを誘っているようにも見えた。
          焦点の定まらぬ目がゆらゆらと揺れて戦慄く唇の上を雫が伝った。

          「可哀相になぁ、孕まされるなんて冗談じゃないよなぁ・・・だから俺はこっちの口を使わせてもらうぜ!」

          そう哀れむような声がしたかと思うと、彼女の小さな口に見知らぬ男の象徴がいきなり突き込まれる。

          「・・・グッ!んッ・・・フッ・・・・」

          グプ・・グブッ・・・チャプ・・・

          頭を鷲掴みにされ、まるで壊れた人形のように揺さぶられる・・・
          初めて口にさせられたその生臭い肉の味にマドカは胃から競り上がってくるものを感じたが、その嘔吐物も押し戻されるほど、
          そのグロテスクなモノはマドカの喉奥深くまで突き入れられ、吐き気から自然と窄まる口に男は喜びの声を上げた。
          失神寸前のマドカの腰を、誰かが後ろから支えるようにして掴み上げ、彼女を四つん這いにさせる。
          そして、邪魔するぜ・・・と呟いたかと思うと、トロリと他人の蜜を流す花弁の中心に再び根が突き入れられた。

          「つ・・・・ふっ・・・ん・・・―――ッん!!」

          マドカは獣の形で交じり合わされ、再び無理矢理覚醒させられる。
          自身を支える力など、とうに無いのに四肢を踏ん張る形となってしまい、その細い手足はガクガクと今にも崩れ落ちんばかりに震えた。

          「くッ・・・ぎゅうぎゅうと締めつけてきやがるぜ。こりゃあ確かにイイ壷だ・・・」

          マドカの狭い膣内を犯す男が漏らした言葉に、見学している男たちからも早く代われよ、野次が飛んだ。

          「んッ・・・ンんっ!ケホッ・・・ア・・・・」

          ガクリ、と力尽きたマドカの両手が床を這い、そのまま腰だけを突き上げる形になった。
          桜色の唇の端からは唾液と男の体液が零れ落ち、その可愛らしい口を卑猥に照らした。
          それでも後ろの男は動きを止めず、グチュグチュと余計に抽送のピッチを上げ、深く、大きく微肉を抉った。

          「んあっ!はッ・・・んアアッ!っあ・・!あ―――っ!も、イ・・・・ヤ・・・ァ・・・ゆるし・・・て・・・」

          ズプズプと身の内を掻き回す異物に、最早脚も腰もついていけず、マドカはただされるが儘だった。
          もう、舌を噛み切って、死んでしまったほうがマシなのかもしれない・・・・・。

          「・・・嫌、じゃないだろう、嬢ちゃん?」

          床に擦り付けられたマドカの頤を持ち上げながら、この賊を束ねる男が言う。

          「オメェがこうやって、たった一月大人しく股開いているだけで、親父さんと、百数十人の善良な島民の命が助かるんだぜ?安いもんだろ?」

          だだしお嬢ちゃんが抵抗したり、自ら命を絶とうとしたりしたらそいつら皆―― 戻って皆殺しにしてやる・・・。

        男の恫喝がマドカの心をも引き裂いた。せっかくだから、しばらく一緒に楽しもうぜ・・・男は何でもないようにそう続けると、
          涙と体液と死すら許されない絶望に塗れたマドカの小さく愛らしい顔を引き寄せ、再びその肉槍を銜えさせた。
          口に広がる悪臭と苦い味・・・突きつけられた言葉から抵抗もできず、ただ痛みと悪寒に喘ぐしかないマドカは、下卑た笑い声と男たちの快楽の呻き声に包まれながら
          いつしかその細くしなやかな裸身を宙に浮かされ、完全に失神するまで弄ばれた――。

          意識を失う瞬間、彼女の脳裏にまだ見ぬ婚約者の後姿が過ぎった。
          彼がゆっくりと振り返り、その手をマドカに差し出した――― 彼の顔は霧がかかったようで窺えない。
          それでもマドカは懸命に手を伸ばし、彼の人に少しでも近づこうと駆けた・・・・その手と手が触れ合おうとしたまさにその時―――

          彼の姿が、鏡が割れたかのように粉々に砕け散り、マドカはその破片を一身に浴びながら声にならない悲鳴をあげた。


          公爵様――― 身体が床に吸い寄せられるとき彼女が呟いた言葉など、男たちの耳には入らなかった。







          ・・・・・パタン。

          気を失い、ピクリとも動かなくなったマドカを床に打ち捨てたまま去って行った男たちと入れ違いに、みすぼらしいなりの中年の女が部屋に入ってきた。
          そして、顔を躯を髪を汗と汁と白濁の液体に塗れさせたまま意識がないマドカに、バシャリ、と桶に入った冷たい真水を浴びせかけた。
          ビクリ、とマドカの身体が大きく震え、その長い睫が雫を乗せたままゆっくりと上がる。
          女はマドカのなだらかな背中を支えるようにして抱き起こすと、まだ覚醒しきっていないマドカの口に赤い薬を数錠押し込んだ。
          口に広がった苦い味に、マドカの意識は無理矢理連れ戻され、口に入れられた得体の知れないものを吐き出そうと首を振る。
          そんなマドカの口を片手で塞ぎ、彼女の後頭部を押さえながら女が叫ぶように言った。

          「飲んじまうんだよ!アンタもあんな獣たちの子供
(ガキ)なんざ孕みたくないだろう!?」

          「!!」

          その考えたくもないような現実を思い起こさせられる言葉にマドカは瞠目し、思わずその薬を嚥下した。
          そして激しく咳き込むマドカの背中を擦りながら、女は言葉を続ける。

          「・・・・今日は事後だったから少し多めに飲ませたよ。明日からは朝食と一緒に持ってきてやるから、必ず飲むんだよ・・・・そうすれば、赤ん坊はできないから。」

          「ァ・・・・・!・・・・!」

          女の言葉に、男たちの臭いと感触がマドカの身体中に蘇り、そのガラスの心を侵食し、苛んだ。
          下肢の、膨れ上がった肉の合わせ目から熱いものがトロリと溢れ出て、マドカに今おかれている現を否が応でも突きつける。
          自らの躯を両の腕で力なく抱きしめ、耐え難い現実に震え続けるマドカの身体を濡れた手拭で清めながら、女が言った。
          
          「・・・・私はここで飯炊きと雑用をしているもんだけど、事が終ったら毎回ココへ来て後始末をするように言われている。
           アンタみたいに綺麗な子はしばらく目をつけられるだろうけれど、アンタさえその気にならなきゃ、いずれ飽きられるよ。
           だからそれまでの辛抱だ。回数さえ減れば、アンタもちょっとは楽に・・・・決して逃げようとしたりしちゃいけないよ、
           あいつ等は人を背中から平気で撃つような連中だからね。この部屋からは出られないけれど、アンタに必要なものは私がちゃんと揃えてやるから、何でも言いな。」

          「・・・・おばさま、私・・・・」

          この船に拉致されてから初めてかけられた人間らしい言葉に、マドカの瞳から大粒の涙が零れ落ちた。
          ただただ泣きじゃくり、言葉にならないマドカの身体を女は丹念に洗い流した。

          「わたしゃアンナ、っていうんだ。ここは貴族のお嬢さんなんかがくるところじゃないけれど・・・
          生きてさえいればいつかきっと、霧が晴れると、私なんかでも信じている。だからアンタも・・・・魂だけは持っていかれないようにしな。」

          そう、この場に似つかわしくない穏やかな声で女は言うと、マドカの長い黒髪を梳いた後、呆然と床に座り込んでいるマドカの傍らで手早く部屋を掃除し、
          最後にベッドにマドカを寝かせると、せめてシーツは毎日取り換えてあげるから、と言い残して彼女を気にかけながら扉の向こう側へ消えて行った。
          
          躯が―――軋む。もう指一本動かすことすら億劫だ。



          <あなたは、長い緑の黒髪をお持ちだと国王陛下からお聞きしました―― あなたのその髪が風に吹かれて軽やかに遊ぶお姿を拝見できる日を・・・>

          <今日旅先で、素晴らしい演奏をするバイオリニストに出会いました。彼の口から偶然あなたのお名前を聞きました。いつか私もあなたの音色に――>

         <―― 今日見た夕焼けの赤は、まるで冬の暖炉の火のような色でした。あなたにお会いできる日は、そういえば暖炉が必要となり始める頃かと、ふと思いました。
           あの狭い一角に息づく火をあなたと一緒に眺めながら私は、あの大地の息吹を感じる赤をあなたにも見せてやりたい―― そんな風に思うのでしょうか・・・・>

         <あなたは花を好んで愛でるそうですね。私も大地を彩る花々やその香りは好きなのですが、何分、その名をあまり知りません。
           お会いできた暁にはあなたか少しずつご教授願いたいと―― >

       

<・・・・この間のお手紙で、あなたが星を捕まえてみたいとおっしゃっていたので。旅先で偶然みつけました。お気に召せばよいのですが。>


まだ見ぬあなたへ愛を込めて。
Wolfgang・S・v・Winterbaum 




          ツ・・・・とマドカの見開かれた目から雫が零れ落ち、それは呆然とどこか遠くをみているような表情を横切ると、そのまま白いシーツに灰色の染みを作った。
          自分は――― 純潔を失ってしまったのだ。

          ―――― 公爵様・・・・あなたへの夢も希望も、砕かれました。
          あなたのお気持ちにお答えする資格を、私は・・・・・失ってしまいました。
          それでも、私の、あなたにどうしようもなく恋焦がれる気持ちは変わらないのです・・・・・。
          あなたと私を繋ぐ鎖は切れ、あなたからの思い遣りの証も奪われてしまった穢れた私が・・・・
          この命朽ち果てるまで、これからもあなたをお慕いし続けることをお許しください―――。

          それだけが、きっと、私の正気を保ってくれる唯一の枷、だから・・・・・。
          
          黴臭い部屋から洩れる啜り泣きを聞くものは誰もいなかった。
          三日月夜に小さく揺れる海原だけが、彼女の慟哭を拾い集めて、深海まで沈めていった。



           


          「・・・・嬢ちゃん、いい加減お世辞でもいいからこういうときは、悦い、っていうもんだぜ!」

          最奥に楔を打たれたまま、長い髪を鷲掴みにされ顔を無理矢理上げさせられて、顎を掴まれながら目の前で怒鳴られても、マドカの表情は虚ろなままだった。
          ただ、痛い、だけ。
          叫び声は痛みから、喘ぎ声は苦痛から、涙は悲しみと憎しみと悔しさから――― 。
          その痛みすら、慣れてしまえば脳に送られるただの信号の塊だと、マドカは無意識の内に自らの身体にそう覚えこませていた。
          日に合計二時間程度、長くても三時間、五人から六人、多くても十人の男たちに・・・・この躯を穿たれれば、それで一日は御終い。
          翌日の昼過ぎまで、誰にも触られなくて済む・・・・・。

          後ろからムキになったように執拗に攻め立てられ、前では肉茎を奉仕させられながら、マドカの目は男の醜い身体の後ろにある壁の傷を数えた。
          密かに、薄っすらと並ぶ細い線―― この部屋に連れてこられた翌日から、見つからないようにマドカがフォークで傷付けた、日にちを数えるもの・・・・。
          その数はとうに四十を超えていた。海賊たちがマドカをノイオプダハに帰す素振りはまるで見せない。
          三十日を越えた頃、約束を守って、と懇願してみたが、酷く殴られて打ち捨てられて、それっきり。

          ―――マドカの身体は、処女を奪われた日以来、快楽というものを感じることが無かった。
          陵辱される度にただただ痛がり、泣き叫ぶだけ。
          そんな反応に飽きた男たちに、別の方法で享楽を引き出してみようと、あの手この手で犯され、輪姦された。
          濡れない秘部にはいつも怪しい薬をつけられ、挿入された。無理矢理媚薬や弛緩剤を飲まされて蹂躙されたこともあったが、
          マドカの躯のみが緩々と反応するだけで、上がる声は痛楚の嘆きだけ。
          見栄えが悪くなる、とその顔こそは傷つけられなかったが、快楽を拾わない彼女自身に業を煮やした男たちによって、彼女の繊細な肢体は生傷が絶えなくなった。
          愛撫とは程遠い行為から齎された歯形や噛み傷、切り傷、打撲・・・・新しいものは赤く、古いものは青く、マドカの華奢な躯を飾っていた。
          薬の副作用で食欲は減退し、もともと細かった身体はさらに痩せ、肌は不健康に白くなった。
          緑の黒髪は痛んでハリを失い、花のような笑顔はとうの昔に封印され、涙も、ほとんど枯れてしまった。
          ただ毎日、人形のように無表情にしていて、そして犯されるだけの――― ワタシハ・ソレダケノ・ソンザイ ――――


        「――ッこの!なめやがって!余所見をするんじゃねぇ!!」
        
        マドカの視線に気がつき激昂した男の一人が、彼女のその頬を思いっきり張り倒そうと手を振り上げたそのとき―――。

        「ローレライ号だ!!」

          室外から聞こえた船員の切羽詰った叫びに二人の男は動きを止め、急にマドカを床に放り出した後、慌ててデッキへと向かっていった。
          上からバタバタと男たちがいつになく忙しく動く音が聞こえる―――。
          しかし、マドカはそんなことにまるで感心がないかのようにただフラフラとベッドまで戻り、汚れた身体にシーツを巻きつけた。
          今日も、頭が痛い・・・・吐き気がする・・・・腹部がシクシクと痛む・・・・誰かと交わった後はいつもそう。
          マドカはベッドに身を横たえると、外から聞こえる音から逃れるように耳を塞ぎ、その痩せ細った身を胎児のように縮こまらせながら、瞼を閉じた。
          上の仕事が終るまで、また月が昇るまで、それまで―――誰にも―――
          
          
          お父様・・・・まだ私を探してくださっている?それとも、もう死んだものと諦めてしまわれた?
          コリーナ・・・・私が帰ったら・・・・もし、いつか帰ることができたのなら、また私の傍で笑って、私の話を聞いてくれるかしら?
          
          ――― 公爵様。    ごめんなさい・・・・こんな穢れた躯になっても、あなたへ想いは前にも増して日に日に募るばかりなのです。
          家族と・・・・あなたにお会いしたいという気持ちが、私の生命を、心を繋いでくれて―――。

          届かぬ想いを、ただただ心の中で紡ぐことだけが、船倉を改造した部屋に閉じ込められているマドカの唯一の心の慰めだった。
          そして、束の間の眠りに落ちる――― せめて夢の中で、彼の人に出会えることを祈りながら。
          現の悪夢から、逃れるように―――。

          
          船を沈める歌姫が青い空の下の蒼い海原で踊っていた。
          
          凪いだ煌く草原を軽やかに彼女は駆けている。

          そして、牙を向く瞬間を、その金の長い髪をたなびかせながら今か今かと待ち侘びていた。




 



          ローレライ号の名前は某潜水艦映画からとったのではありません。念の為;(管理人、まだ観ていないですし)
          海賊の船を沈める船の名−ということで伝説の妖女ローレライから。ハイネの詩も好きですので。
          陵辱シーンたるものを初めて書きました。書いていて痛かった・・・。